Memo
▼
「あ」
雑踏の中で、赤い瞳と目が合った。
厄介なのに見つかったなぁと心の中でため息を吐きながら私はどうにかして逃げられないものかと考え込む。
ここは墓守領。確かに彼が居ても可笑しくはないんだけれど、
よく行方不明(本人は旅だと言い張っているが)になる為にここに居ると逆に不自然だ。
「やあ、君か」
にこにこ。
私以上に胡散臭い笑みを浮かべて少年―エースは言う。
「こんにちは、エース」
にっこり。
負けじと胡散臭い笑みを浮かべる。
きっとこんな場面をあの双子に見られたらまた気持ち悪いなんて暴言を吐かれるんだろう。
慣れてるから別にいいんだけれど。
でもそれとこれとは話が別だ。
一応私だって傷付いたりする。
言うと嘘くさいって言われるから言わないけど。
「・・・エースが墓守領にいるなんて珍しいね」
「え?そうかな?」
胡散臭い。
「君が此処に居る方が珍しいじゃないか」
「仕事だよ。もう終わったけど」
今日もまた人を殺して私は生きている。
・・・ユリウスの仕事増えるとエースには色々言われるんだよなぁ。
でも、この国は直ぐに人が死ぬから私だけに言われるのも理不尽だと思うんだけれど。
まあ、理屈がこの少年に通じるなら私も面倒だとは思わない。
通じないから面倒くさい。
「ふうん」
品定めするようにじろじろと見られる。
「・・・用事無いならもう行っていい?」
なんかお腹空いちゃったんだよね。
出来るならこれ以上エースに構わずにご飯を食べに行きたい。
「ね、俺と旅に行かない?」
「遠慮するよ。私はご飯を食べたいの」
この人に付き合ってたら命がいくつあっても足りない。
旅が終わる前に魔女化しそうだ。
「そっか。ならいいんだ。じゃあね」
にっこりと笑う彼の目は【これ以上ユリウスの仕事を無駄に増やすな】と語っている。
「ええ、またね」
にっこりと笑いながら私は【依頼主に言ってちょうだい】と語り返した。
(魔法少女シリーズ(QR))
▼
少し離れた場所で、黒ウサギ・・・シドニー=ブラックの声がする。
彼の目的は、
「・・・」
「・・・」
多分、というか絶対にここに居るクリスタ。
子供姿のクリスタは私にがっつりと抱き付いてしまって離れない。
ああ、この場面を彼に見られたら、私は間違いなく射殺される。
「ねえ、クリスタ」
「戻りませんわよ」
物は試しと声をかけてみればばっさりと切り捨てられる。
このお子様女王はいつも部下の宰相に面倒をかけている。
本当はシドニーが大好きなくせに。
それはシドニーもか。クリスタが大好きなくせに。
ダイヤの城はちぐはぐだ。
「あんまりシドニーに心配かけちゃダメだよ」
ちりっと胸の奥が痛む。
私にも昔は、私を心配してくれる人が居たのにな。
「あら、心配なんてかけてませんわよ?」
子供のクリスタは無邪気に笑って私に言う。
残酷さとも言える無邪気さは、他を氷漬けにする事すら躊躇しないそれへと繋がっている。
私の今の立ち位置も危ないものだ。
クリスタの機嫌を損ねれば一気にダイヤの城を敵に回す。
そうなればこの国で生きづらくなってしまう。それは避けたい。
「貴女こそ心配かけるのを止めたらよろしいのに」
「ふふ、私には貴女と違って心配する人なんていないよ」
そんな人が居たのはもう昔の話だ。
今の私は生きる為に生きる、ただの抜け殻。
どくんどくんと心臓が鳴る。
クリスタが氷の微笑を浮かべたのを横目に見て、シドニーの声が遠ざかっていくのを確認する。
「ね、帰ろうよ」
それはきっと幸せなんだよ。
まあ、この国の人に伝わるかは分からないけれど。
「仕方ありませんわね」
渋々クリスタが立ち上がる。
「また今度来るからさ」
「ええ、是非とも。そうでないと貴女を氷漬けにしてしまいますわ」
まさに生きるか死ぬかの瀬戸際だ。
いつもの、曖昧な笑みを浮かべて幼い女王を連れたってダイヤの城へと向かった。
(魔法少女シリーズ(QR))
▼
「うわ」
帽子屋領土へ歩いて行く道。
見知った赤と青。
「あ、何だアンタか」
「こんな所で何してるの。暇人さん」
私より大人の姿をした、中身は子供。私とは反対。
「また貴方たちのボスに呼び出しを喰らったから行くところ」
また仕事か、と気が滅入るがグリーフシードを効率よく手に入れるには仕方ない。
これも生きて行く為の処世術。
黒い。真っ黒だ。
白銀色をしたグリーフシードは、私には似合わないな。
「ふぅん。そう言えばボスからいくらもらってるの?結構貰ってるんじゃないの?」
「たまにしか仕事しない癖にずるいよねえ」
この双子の好きなものは「休暇」と「お金」。
だったら働きなさいよ。
そう言うと双子が冗談じゃないと言い始める。
その発言が冗談じゃない、だよ。
どうしろって言うのよ。
「ちゃんと契約していつも働いてるよ。私は貴方たちと違って真面目な子供なの」
不真面目な大人と一緒にしないでほしい。
私の契約対象は帽子屋だけじゃない、ダイヤの城も墓守も入っている。
私は特定の領土だけの味方はしない、その代わり特定の領土の敵になる事もない。
余所者ではないけれど、ダイヤの国の住人でもない。
中途半端な存在。
「・・・ご飯、おごろうか?」
子供に奢られるなんてダメな大人だと思うけどね、と付け足して。
「子供?墓守の子供ぐらい胡散臭いよ」
それは酷くない?
「そうそう。アンタが子供っていうと何か胡散臭い」
ディーもダムも普通に酷い。
まあ、本当の事なんだろうけど。
「あっそ。それじゃ私はもう行くから。貴方たちもちゃんと仕事しなよ」
大きなお世話だよ、なんて双子が口を揃えた。
(魔法少女シリーズ(QR))
▼
「こんにちはナイトメア。相変わらず酷い顔色だね」
駅長室。
革張りの偉そうな椅子に座った子供に私は笑いかける。
まあ、私も見た目だけなら子供なんだけどね。
14歳で成長なんて止まってるし。
「君は相変わらず酷いな!」
「何でだろう、みんなそう言うんだよね」
世の中は不思議がいっぱいだよね。
「不思議・・・?君の場合は自分の胸に手を当てて考えてみたらどうなんだ?」
「うーん。そんなこと言われても無い胸に当ててもな」
驚くくらいの貧乳だ。まな板。
まあ中学生だしね。仕方ないよね。
ナイトメアがドン引きしている。
「あ、子供相手に変な話してごめんね」
「君も子供だろう!?」
肩をすくめる。
子供と言えば子供なんだろうけど・・・。
微妙だな。
「ナイトメアよりは大人だよ」
ある意味ではこの世界の大人よりも大人かもしれない。
何度も何度もやり直しているから、大人と言っていいのかも微妙。
どっちにしても中途半端なんだよね。
・・・あ、また事故だ。
「さて、事故が起きたら偉い駅長さんは仕事をしなくちゃいけないからね」
私は体を伸ばして踵を返す。
「君は次は何処に行くんだ?」
「行き先、決まってないの。暫く駅の領土で過ごそうかなって」
グリーフシードのストックはある程度溜まっているし、暫く働かなくても何の問題もない。
「死にたいんだな」
「そんなことはないよ?」
嘘。
死にたい。
でも自分で自分にかけた呪いは解けたりなんてしないから。
私は魔女になる絶望をいつも感じながら生きて行く。
「他の役持ち達が君を気持ち悪いと言うのが少し分かったんだが」
「あのさ、ナイトメア」
思っても口に出さない方が良いと思うよ。
「流石引き籠もり。女心が分からないはずだ」
「だ、誰が引き籠もりだ!」
「ナイトメアに決まってるでしょ」
流石に言っていい事と悪い事の区別くらいつけようよ。
死ぬよ?・・・まあ殺されかけたらグレイが助けるんだろうけど。
「ま、いいや。真面目に働きなよ?駅長さん」
事故の名残のような悲鳴を聞きながら私は駅を後にする。
次は何処に向かおうかな。
もう少しで始まる測量会を思うと少し気が重くなった。
(魔法少女シリーズ(QR))
▼
地面に叩きつけられた体。
目の前を濁った白銀色のソウルジェムが転がった。
(ああ、ダメだ)
じわりじわりと沸き上がるこの気持ち。
また私は死ぬんだ。また魔女になるんだ。
何で私は願いなんて込めちゃったんだろう。何で、
(時間なんて、なくなっちゃえば)
最後の力を振り絞って、私はソウルジェムを拳銃で撃ち抜いた。
「何やってんだ」
「・・・グレイ」
駅の雑踏。声をかけてきたのはグレイだ。
何だろう、機嫌悪そう。
「またナイトメア?」
彼の機嫌が悪くなる原因なんてそれぐらいだろう。
尋ねれば不機嫌そうに頷く。ほら、やっぱりね。
「今のうちに殺しちゃえばいいのに」
「あんな病弱なガキ殺れるかよ」
この人本当に暗殺者なのかな。
ただのお母さんじゃない。
でも、殺さないのはナイトメアだからで、私だったら殺してると思う。
「ね、グレイ」
「何だよ」
今からナイトメアの所に戻るであろうグレイの後ろを着いて歩く。
「もし・・・もしもだよ」
ポケットの中のソウルジェムを握りしめる。
「・・・私が死にかけている場面に遭遇したら、容赦なく殺して」
魔女になるくらいならソウルジェムを砕かれて死んだ方がマシだもの。
「お前、可笑しいんじゃねえのか?」
「え?この世界自体が可笑しいじゃない」
命の価値は軽く、人の生き死になんてどうだっていい世界。
それなら、私の命だって軽いものだ。
「それに、もしもの話だよ」
出来る事なら誰にも覚えておいてほしくなんてないから、そんな事になったら私は自分で自分を殺すだろう。
「ま、覚えてたら殺してやるよ」
その物言いにくすりと笑う。
「有り難う、グレイ」
「・・・何なんだお前は」
呆れたような声。
「殺すように頼んだ相手に礼かよ」
「いいんだよ、それで」
自分で殺したい、けれど、たまには誰かに殺されてみるのもいいかもしれないじゃない。
(魔法少女シリーズ(QR))
▼
「こんにちは、ボリス」
駅の雑踏の中でも目立つショッキングピンク。
声をかけるとぴくぴくと彼の耳が動いた。
ああ、やっぱり猫なんだ。
「お、アンタか。ずいぶん久しぶりじゃない?」
「そうだね。ここしばらくはジェリコの所に居たから」
そして契約を果たしたからふらりと駅に立ち寄った。それだけ。
ボリスは、何も言わない。
彼は空気が読める賢い猫だから。
私が気持ち悪い事も、何もかも分かった上で何もなかったように私に接する。
「私、ボリスの事は結構好きよ」
「急にどうしたの。何かあった?」
ううん、何も。
曖昧に笑って言う。
何となくそう思っただけ。
好き、じゃなくて結構好きだけど。
ただ何となく、ピンク色を見てるとかつての友人を思い出す。
彼女はもっと淡いピンク色だったけど。
全てを包む、まるで女神のような女の子。
あの時は私たちは同い年だったけど、少し話しただけで私は彼女のようにはなれないと悟った。
「大丈夫?」
考え込んでいたらしい。ボリスが顔をのぞき込んでくる。
「大丈夫、ありがとう」
これが帽子屋屋敷の連中ならこうはいかない。
聞き出すまでちくちく言い続けるだろう。特にトップは。
別に言うのは構わないけれど、言ったところでもう関係のない場所だ。
どうにもできない。
それにあの世界ではみんな死んでしまった。あの魔女はどうしても倒せなかった。
「偶にボリスが羨ましくなるだけだよ」
だって猫は逞しい生き物だから。私みたいに迷ったりなんてしない。
「アンタは、」
「ん?」
「列車に乗りたい?」
わいわいがやがや。
人の声。
私は口の端を持ち上げて笑う。
「乗りたいよ。でも」
事故の音が響く。ああ、耳が痛い。
ボリスは辛くないのかな。
「私が列車に乗っても何処にも行けない」
私が帰るべき場所で、私はもう死んでいる。
それはもう諦めている。いいや、諦めるしかない。
どうしたってどうにもならないことがたくさんある。
「私は、生きる為に生きてるだけだもの」
猫の目が私を捕らえる。
彼は猫。
私は、人間?いいや、化け物だ。
魔法少女は魔女から人を救うはずだったのにな。
今の私は、人を殺して、自分が生きる為だけに生きていて。
でも、この世界のルールとしてはこれは正しくて。
何が正しいのかな。
私は、間違っているのかな。
大人になりきれない私には答えなんて一生出せないのかもしれない。
「あ、そうだ。墓守さんとの契約が終わったなら暇でしょ?俺も丁度メンテナンスが終わった所なんだ。何か食べに行こう。いいでしょ?」
気まぐれな猫の興味はもう別の物。
もしくは、私が気にしているのを察したのかもしれない。まぁ、後者はなさそうだけど。
「うん、いいよ。お腹ぺこぺこなんだ」
ボリスと話していると、何だか子供の頃を・・・一番最初の人生を思い出せそうになってくる。
思い出せそう、であって思い出せたわけじゃないけどね。
(駅でよかった)
もしかしたら無意識に、チェシャ猫に会いたかったのかもしれない。
(魔法少女シリーズ(QR))
▼
「 」
嫌な夢を見た。
私があの害獣と契約したときの夢。
舌打ちをしながら体を起こすと視界に入る美術館の部屋。
今はここの館長であるジェリコと契約を交わしているから、契約中はここに住まわせてもらっている。
ベッドから起き上がり服を整える。白銀色のソウルジェムを手に持つ。
前の世界で死んだ私は死ぬ間際に時間を呪った。
そのせいか私は今時間の国に生まれ変わる事になった。
最初はこの世界の人間だったのに、徐々に覚醒し、目覚めた今ではきちんと心臓を持っている。
不思議だ。
「おはよう、ジェリコ」
時間が狂っているからそれで正しいかは分からないけれど。
「ああ、アンタか」
人の良い笑顔を浮かべる墓守頭はマフィアのボスには見えない。
まぁ帽子屋もマフィアには見えないんだけどね。
「今回の契約は、分かってるな?」
「分かってるよ」
出来るだけ愛想良く笑ってみた。
ジェリコが微妙そうな顔をしている所を見ると失敗したみたいだ。残念。
「じゃあいつも通りグリーフシードは貰っていくから」
「ああ、それはアンタが持っていってくれて構わない」
ジェリコに別れを告げて美術館の中を歩く。
ジェリコ=バミューダ。
死人の男。
ああ、羨ましいなぁ。
(魔法少女シリーズ(QR))
▼
乾いた銃声がして腕に穴が開いた。
その衝撃に息が詰まって、その一瞬が仇になったらしい。
体が吹っ飛ぶ。
それでも私は冷静だ。
面倒くさい事になる前に受け身を取ってロスタイムを短くして立ち上がる。
(腕に2発、足に受けた1発はかすっただけ)
冷静に怪我を分析する。
このくらいなら直ぐ治せる。
私の最初の願いなんてもうとっくに忘れてしまった。
でも私は、いつでも誰かを模している。
この能力もかつての友人が持っていたものだ。
私はそれを模している。
痛覚を遮断し、血を止めるだけの応急処置を施し、魔力を使って機関銃を召喚する。
「さて、お掃除の時間かな?」
敵を見据えて私は嗤う。
ガガガガガガガ。
連射の音。
本来なら体に来るであろう衝撃も、全て吸収できる。
何処までも私は化け物に成りはてたらしい。
「相変わらずお嬢さんは過激だね」
「帽子屋か」
もう敵は全て掃射した。
本来なら拘束の為に使うリボンをひゅっと振るい落ちたグリーフシードを回収する。
壊れてない。よかった。
とんとん。
爪先を叩いて戦闘服を解除する。
今は彼らと契約を交わしているけれど・・・正直帽子屋屋敷の人は苦手だ。
それならまだ墓守の方がマシだ。人語が通じる。
「彼らはブラッドたちの敵だからね。これで契約完了だよ」
にこりと、年相応に見えるように笑おうと努力する。無駄に終わったみたいだが。
「君は本当に気持ち悪い子供だな」
「そう?貴方に言われたくないんだけどな?」
子供らしく首を傾げてみる。
子供らしいってなんだっけ?
もう長い事生きているから子供らしさなんて忘れてしまった。
私はもう子供じゃない、でも大人になんて一生なれない。
それだったら魔女になって死なないと。
「まぁ、気持ち悪いのは本当の事だから受け取っておくよ」
それじゃあこれで契約終了だ。
ようやく居心地の悪さも解消されるだろう。
「じゃあね、また機会があれば契約してよ」
「ああ、もちろんだとも。君と組むと掃除が直ぐに済むからね」
胡散臭い笑顔を浮かべてブラッドが言う。やっぱり苦手だ。
(魔法少女シリーズ(QR))
▼
「ああ、居た」
あの役無しはもう既に汚れている。
殺せばグリーフシードを落とすだろう。
とんとんっと爪先を鳴らせば私の服は瞬時に魔法少女の戦闘服へと変化する。
スカートの裾を持ち上げるとフリルで溢れたその中からはマスケット銃。
かつて私の友人だった魔法少女が使っていた武器。
それを持ちビル3階分くらいには相当するであろう屋根から飛び降りて、役無しを打ち抜く。
的確に頭を打ち抜かれた役無しはそのまま時計とグリーフシードを残して消え去る。
こつこつとヒールを鳴らしてグリーフシードを拾い上げようとして、聞こえた銃声に跳ね上がる。
(グリーフシードは無事)
手の中のグリーフシードを見ながら私は建物の壁を垂直に走る。
魔法で身体能力を強化すればこのくらい容易い。
(・・・またか)
ため息を吐きながら屋根の上に立つとマスケット銃を魔力へと戻し次に剣を取り出す。
これもまたかつての友人が使っていた武器だ。
登ってきた壁を今度は垂直に駆け下りる。
そのままの勢いで今銃弾を撃ち込んできた男・・・否、ウサギの首に細い剣先を突き付ける。
「こんにちは、エリオット」
そして私は友人に話すようなフランクさで彼に声をかける。
「うちのモンに何の恨みがあんだよお前は」
「ん?ああ、彼の事?」
そう言えば彼は帽子屋屋敷の使用人の服だった。
よく確認しておけばよかった。
「時計は盗ってないよ」
「そういうことじゃねぇ!」
ガキンと音がして細い剣が折れた。
どんだけ馬鹿力なんだろう。
エリオットが拳銃を振るったら当たったらしい。
私は盾から普通の拳銃を取り出してエリオットに突き付ける。
私の武器はかつての友人達を模したものだ、弓も、銃も、剣も、槍も、盾も。
私にはもう関わる事は出来ないけれど、私は彼女たちが大好きだった。
みんな、居なくなってしまったけれど。
「彼、汚れてたから」
きっともう少しで狂ってしまうくらいに。
この世界ではグリーフシードは人を狂わせる。
「大丈夫だよ。今は帽子屋と契約してるから。利害が一致する間は貴方たちは傷つけない」
まぁ、利害が一致しなくなったら契約は切れるんだけどね。
それは言わない。
チッとエリオットは舌打ちする。
「じゃあこれはもらっていくね」
グリーフシードを盾に仕舞い、私は跳び上がる。
ああ、また死ねなかったなぁ。
きっと、願いのせいで死ねないんだろうけれど。
(魔法少女シリーズ(QR))
▼
「は?結婚?くにさんが?え?佐伯の間違いじゃなくてですか?」
「いや、佐伯はそもそも結婚できねぇだろ」
「ああ、それもそうですね」
「そこで認めないでよ」
「事実でしょう。誰ですかくにさんを婿にもらおうなんていう聖人君子のようなお嬢さんは。あ、くにさんまさか騙してなんてないでしょうね」
「お前そんな毒舌だったか・・・?騙すとか人聞き悪い事言うなよ」
「いや、だって・・・くにさんと結婚て思い切った決断したなぁと。このメンバーで最初に結婚しそうなのは崇生だと思いましたが外れました」
(VOLTAGE)
prev /
next