青山樹
「クローズっと、」


本日の営業も終わり、看板を下げる。
明日は定休日だから、仕込みをする必要も無い。

つまり、今からは私の時間!


「あ、やばっ、準備しないと!」


実は今日はこの後オフ会があるのだ。
早くシャワー浴びて化粧して着替えなきゃ!


「へへ、楽しみだなぁ。」



今日お会いするのは人気ブロガーの青ぴょんさん。
いつも食べブログのランキングトップを走り続けるカリスマ!
私も色々と参考にさせてもらってるんだよねぇ。

青ぴょんさんほどじゃないけど、私もちょこっとブログをやってて。
お店の宣伝ってよりは、趣味の域で。
そしたらあの青ぴょんさんからメッセージが来てて、それで何度かやり取りしてるうちに本日のオフ会に至ったと!

楽しみだなぁ。
沢山料理の話ができると良いなー!




急いで準備をして待ち合わせ場所に。

青ぴょんさんも仕事終わりでいらっしゃるみたいで、偶然にも私のお店兼自宅がある最寄りと青ぴょんさんの職場の最寄りが同じらしいのでそこに向かう。
いや、しかしこの辺って省庁多いよ・・・??
青ぴょんさんって、もしかしてめちゃくちゃエリート・・・?


そわそわと考えを巡らせていると、もうすぐ待ち合わせ時間。
その時だった、


「あの、ティーカップさん、ですか・・・?」

「!は、はい!」


あ、ティーカップって私のハンネです。
そこにいたのは黒のシャツと紺のベストをビシッと着こなしたとんでもないイケメン。

え、ちょっ、あ、青ぴょんさん!?


「え、あ、青ぴょんさん・・・ですか?」

「はい。お待たせして申し訳ありません。」

「い、いえ!!私もさっき着いたところなので!」


ちょっとー!
食べブログの帝王、青ぴょんさんめちゃくちゃイケメンじゃんかよー!
この人があの繊細な料理の数々を・・・すごい・・・。


「ここじゃ何ですし、移動しましょう。」

「あっ、はい!」

「俺のオススメの店があるんですが、もう予約してあります。良いですか?」

「も、もちろん!」


イケメン、料理上手、スマート、完璧かよお!!

青ぴょんさんのまさかのハイスペックに戸惑いながら、導かれるがままお店へと向かう。



連れていってもらったのは、同じ駅近くだけれどもちょっと奥に入った隠れ家的な創作イタリアンのお店。
しかも中は半個室になってて気兼ねなくお話しができる。

へえ・・・。
近くにこんな素敵なお店があったなんて知らなかったなぁ。

とりあえず青ぴょんさんオススメのオードブルとワインを注文してオフ会は始まった。


「じゃあ、乾杯。」

「か、乾杯!」


チン、とワイングラスを軽く合わせてワインを一口煽る。


「ん、美味しい・・・!」

「ふっ、良かった。」

「っ、」


あの、ほんといちいち顔面が良すぎて照れちゃいますから!!
大分常連さんたちでイケメン耐性ついてると思ってたけど、やっぱり正統派イケメンには弱いんだよお!!



「あ、青ぴょんさん今月も食べブログ一位でしたね!おめでとうございます!」

「ありがとうございます。ティーカップさんも先月より順位上げてましたね。」

「いやいや、私なんて・・・。そういえば、一昨日アップされてたペンネを使ったレシピなんですけど、」

「あぁ、あれは、」



顔面に緊張はしちゃったけど、同じ趣味を持った私たちはお酒と美味しい料理も進み、どんどん会話が弾んだ。
やっぱり青ぴょんさんのレシピは勉強になるなぁ。
でも料理が本職じゃないんだよね?


「あの、青ぴょんさんってお料理をお仕事でやってるわけでは・・・、」

「違いますよ。俺は、公務員をやってます。」

「!へぇ、公務員さん・・・!」


ちょ、やっぱこの近辺で公務員て・・・!
すごいなあ!
もしかしてうちの常連さんたちと顔見知りだったりしてね。


「ティーカップさんは、」

「あ、私は飲食業ですよ。個人で、小さいですけどカフェやってます。」

「知ってますよ。」

「え!?」


私、ブログにはお店のこと書いてないよ!?
あれ、言ったっけ!?


「実は、ティーカップさんのお店のお菓子を何度か差し入れで貰った事があって。」

「そ、そうなんですか!?」

「はい。ケーキとか、マフィンとか色々。それがティーカップさんのブログのレシピと同じ味がしたので、もしかしてって。」

「や、なんかお恥ずかしい・・・。」


でも、差し入れにする位の数を持ち帰られてるのって・・・


「あの、もしかして渡部さんからの差し入れ、とかですか?」

「そうです。」


やっぱり!!
じゃ、じゃあ青ぴょんさんって、


「青ぴょんさんも、外交官さんなんですか・・・?」

「いえ。俺は・・・、マトリです。」

「!!!」


め、めちゃくちゃエリートじゃん!!
すごっ!!


「仕事が趣味みたいなもんなんですけど、仕事以外では料理をしてる時が落ち着くんですよ。」

「へえ・・・!でも凄いです!お忙しいでしょうに、それでも青ぴょんさんのレシピはほんとに丁寧に作られてて、でもお料理がそんなに得意じゃない人でも簡単にチャレンジできるように工夫されてて!私、ほんとにいつも青ぴょんさんのブログ見て刺激されてるんです!!」

「っ、そ、そうですか・・・。」


はっ!
ついつい喋りすぎた・・・!!
青ぴょんさん目反らしちゃってるじゃん、ネトストだと思われるじゃん・・・!!

ちょ、は、話変えよう!!


「そ、そういえば!青ぴょんさんっておいくつなんですか!?」

「28です。ティーカップさんは、」

「あ、私は27歳です!私、年下ですねー!」

「もっと下に見えますね。」

「えー!それ誉めてるんですか、貶してるんですか!?」

「ははっ。」

「もう・・・。でもせっかくですし、私に敬語使わなくて良いですよ?」

「折角の意味が分からないけどな。」

「!こ、細かいことは良いんですー!」


な、なんかどSだな・・・!!
仲良くなれて嬉しいけど、これが本当の青ぴょんさんか・・・!!


その後も料理の話だったり仕事の話だったり、楽しい時間はあっという間に過ぎていって。
時間も時間なのでお開きにする事になった。


「今日は本当に楽しかったです!」

「あぁ。俺も楽しかった。ずっとお前とは直に話してみたかったからな。」

「っ、もう、青ぴょんさん!照れますから!!」

「ふっ。」


っくー!!これだからイケメンは!!


「今度、お前の店にも行ってみて良いか?」

「もちろんですよ!サービスするのでぜひいらして下さい!!」

「あぁ。必ず行く。」


私の自慢のメニューたちをぜひ青ぴょんさんにも食べて貰いたいなあ。
あ、あと!


「もしよろしければ、今度一緒にお料理しません?」

「え、」

「うちのお店の定休日とかお仕事終わった後とか!店のキッチンなら広いので!」

「それは俺を誘ってるのか?」

「・・・さ、そって・・・っ!!!!」


ち、ちがっ!


「違いますよ!!!私はただ、青ぴょんさんからお勉強したいと思って、その、えと、」

「くくっ、分かってる。そう必死になるなよ。」

「っ!!!」


やっぱり!!ドSだ!!!


「ははっ、悪い悪い。でも、俺もお前となら一緒に料理してみたいな。」

「・・・。」

「本当だ。な、怒るなって。」

「・・・怒ってません。」

「ふっ。」

「っ・・・!」


そうやって!!苛めた後に優しく微笑まないで下さい!!!


「ほら、帰るぞ。」

「え、ここで解散じゃ、」

「何言ってんだ。こんな時間に女を一人で帰す訳無いだろ。」

「や、でも!」

「良いから。黙って俺に送らせろ。」

「は、はいっ、」


ど、どこまで完璧なんだよこの人は・・・!!
結局あと少しでお店ってところの明るい路地まで送ってもらった。
なんでも青ぴょんさんも駅近くに住んでるだって。
なんかすごいとこに住んでそうだなあ・・・。


「じゃあここで。ありがとうございました!」

「・・・
なあ、連絡先交換しないか。」

「え、連絡先ですか?」

「あぁ。ブログのメッセージだと面倒臭いだろ。一緒に料理したりするなら、タイムラグ無い方が良いだろ。」

「あぁ。はい、良いですよ。」


スマホを取り出して、IDを交換する。
新しい友達のリストに青ぴょんさんの名前が表示される。


「へえ、青ぴょんさんって、青山樹さんっていうんですね。」

「あぁ。これこらは青ぴょんじゃなくて、こっちで呼んでくれ。」

「はい!」

「じゃあ、俺は帰るな。」

「あの、本当にありがとうございました!青山さんもお気を付けて帰って下さい。」

「あぁ。またな、名前。」

「っ!!」


青山さんは笑って、私の頭を一撫ですると颯爽と闇に溶けて行った。
というか!!名前呼び!!
や、頭撫でられるのも!!


「くぅ、狡いぞお、青山樹・・・!!」


これじゃ、青ぴょんのブログを見るたびに思い出してドキドキしちゃうじゃん・・・。


「・・・ん?あれ、マトリの、青山さん・・・。」


どっかで聞いたような・・・。




『名前ーー!聞いてよ!!青山ったら!』




「っあーーー!!!!!」



成瀬さんの言ってた【青山】さん!!??
うっそ、え、ほんとに??


「ごめんなさい、成瀬さん・・・。」


こりゃ、ときめくのも分かりますわ・・・。




ぜひ、お店にお越し下さいね。







prev next

bkm
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -