新一 1歳10ヶ月
「じゃあ、名前、行ってくる。」

「うん、零さんいってらっしゃい!」

「名前、忘れ物。」

「もう、目、瞑ってください・・・。」

「ん、」


ちゅっ


「ふっ、これで今日も頑張れそうだ。」

「っ〜〜〜!いってらっしゃい!」


結婚して3年経つけど、零さんは毎日行ってきますのキスとただいまのキスを欲しがる。
嫌じゃないし、私も零さんが仕事に行くときは寂しいから触れたいけど、私からして欲しいっていう零さんのお願いと、新ちゃんが見てても要求してくるのが恥ずかしいんだよ・・・。

あと、


「あ、だめだ。可愛い。名前、もう一回。」

「!!」


一回で終わらない・・・。


「だ、だめ!零さん朝イチで捜査会議だって言ってたじゃないですか!遅れちゃう!」

「いや、ここで名前にキスして貰えない方が問題だ。ほら、遅れるのがダメなら早く。」

「ちょ、零さ「パパ、ばいばい。」

「新ちゃん!」
「新一・・・。」


そこで助けてくれるのが新ちゃん。

零さんは『新一は俺が名前に触ろうとすると意図して邪魔してる!!』って言ってるけど、新ちゃんはまだちっちゃいんだよ?
きっとママとパパが一緒にいるからボクもー、くらいの気持ちだって。


「・・・新一、パパはママに用事があるからバイバイしないよ。」

「バイバイ。」

「新一。」

「バイバイ。」

「・・・。」


なんだろう・・・
可愛い息子とパパの微笑ましいお見送りの風景のはずなのに・・・


「ママ、まんま。」

「あ、そうだね!新ちゃんご飯食べなきゃね!」

「!名前、」

「零さん、今日も頑張ってね。いってらっしゃい!」

「バイバイ。」

「・・・行ってきます・・・。」



零さんが出ていくと、新ちゃんはピタッと私の足に抱き付いて甘えてくる。
ふふっ、可愛いなあ。

「新ちゃん、朝ごはん食べようね。」

「はーい!」

最近つたい歩きから卒業した新ちゃん。
テコテコと効果音が聞こえそうな歩きで、一緒にダイニングに行く。




◆◆◆◆



ご飯を食べて、片付けて、止まってた洗濯機から洗濯物を出して干して、掃除をして。

零さんが安心して帰ってこれるように、新ちゃんがすくすく育ってくれるように。

そんな家を作るのが私の仕事!


私がせかせかと家事に勤しんでる時、新ちゃんは大人しくひとりで本を読んだりパズルをしたり・・・
なんかこう、ちょっと新ちゃんには難しいような本とかを零さんは買ってくるんだけど、それを新ちゃんは黙々と読んでるんだよね・・・
文字読めてないよね?え、読めてないよね??

「(難しいとはおもうけど)読んであげる?」

って聞いても

「だいじょうぶ!ママ、やしゅんでて!」

っ!良い子!!
ん?でも結局読めてるの・・・?
でもまあ、夢中になって良い子で遊んでるし・・・。

もちろん、一緒に沢山遊ぶときは遊んでるしね!
その時でも幼児とは思えない気遣いと紳士っぷりを発揮して私を悶えされるんだけどね・・・

零さんはってゆうより、安室さんの血統を感じるよ。



あ、そろそろお買い物に行かなきゃ。


「新ちゃーん、お買い物行こー。」

「はーい!」

「お天気良いし、車じゃなくて歩いて行こうね。あ、新ちゃんはバギー乗ろうね。」

「しんちゃん、あるく・・・。」

「んー。今日はママ、お荷物持つから新ちゃんがバギー乗ってくれると助かるなあ。」

「・・・しんちゃん、ばぎーのる。」

「ありがとー!」


新ちゃんも大分歩けるけど、やっぱお買い物とかになるとねえ。
でも適度にお日様の光を浴びるのも成長に必要だし、車ばっかりもダメだからなあ。
もうちょっと長く歩けるようになったらバギーも卒業しようね。




「あれ?」


買い物も済ませて帰路についてると、人だかりができていた。


「何かあったのかな?」

「パパ、」

「え?」

あ、ほんだ!零さんがいる!!
てことは、事件・・・?

「パパー!」

「あ、新ちゃん、邪魔になっちゃうからだめだよ!」

「名前、新一!」

あ、気付かれちゃった・・・
こっちに駆け寄ってきてくれる。

「ごめんなさい、零さん・・・。邪魔しちゃって・・・。」

「いや、大丈夫だ。買い物か?」

「うん。そしたら人だかりあるし・・・新ちゃんが、パパがいるって気付いて。」

「パパ、おしごと?」

「そうだぞ。といっても、もう解決するけどな。」

「え、そうなの?」

「ああ。あとは容疑者にトリックと証拠を突き付けて、解決さ。」


すごおい!
やっぱり零さんはすごいなあ。


「じゃあ私達はお邪魔になっちゃうから帰るね。」

「ああ、気を付けてな。今日は事後処理で遅くなる。」

「うん、身体に気を付けて。」


そう言って立ち去ろうとしたら、


「パパ!」

「「?」」

「パパのおしごと、みたい。」

「え、新ちゃん?」

「パパ、だめ?しんちゃん、ぱぱのおしごとみたい。」

「(やっと新一にも父親を尊敬する気持ちが・・・!!)」

「新ちゃんだめよ、パパのお仕事の邪魔になっちゃうよ。」

「いや、名前いいんだ。」

「えっ、」

「新一、パパが犯人捕まえるところ、しっかり見るんだぞ。」

「うん。」

「でも、」

「大丈夫。もう容疑者は逃げられない。お前たちを危ない目には合わせないさ。」

「うん・・・、零さんがいいなら良いけど・・・。」



さすがに規制線のなかには入れないから、さっきよりも近くで零さんの推理ショーを見学する。

はあ、あんなこと言ったけどやっぱり事件を解決してるときの零さんは格好いいなあ・・・
安室さんのときの柔らかいけど少しミステリアスな語り口も好きだけど、零さんの堂々とした強い口調も好き。

ぽーっと見とれている間に、犯人は罪を認めて連行されていった。
零さんもこっちに少しだけ手を振って行ってしまった。


「パパ、カッコ良かったね、新ちゃん。」

「・・・。」

「新ちゃん?どうしたの?」

反応がないから、屈んで新ちゃんの様子を見ると、

「・・・新ちゃん・・・。」

1歳児とは思えないほど、真剣な顔をして、何かを考えている様子だった。
零さんそっくりの目。

「ママ!」

「あ、うん、新ちゃんなに?」

でもすぐに、いつもの可愛い新ちゃん。

「かえろ、ママ!」

「・・・そうだね、帰ってご飯作ろうね!」

「うん!」






まさかこれから、新ちゃんと出かけると事件に度々遭遇するようになるとは思いもしなかった。

新ちゃんの意図せぬ英才教育は始まっていたのです。





prev next

bkm
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -