確信犯
夢主≠玲ちゃん



「んぬぬぬぬぬぬ・・・!終わらないーー!」


定時を過ぎようかという時間、オフィスにはカタカタとキーボードを叩く音が響いてる。
この前の売人一斉摘発の報告書が書いても書いても終わらない・・・
関さんは上に呼ばれていないし、青山さんと今大路さんは捜査一課に合同捜査の打ち合わせで出てるし由井さんはラボ。


「こうなったら26歳組で頑張ろ!ハルくん!玲ちゃん!」

「あっ、ごめんね名前ちゃん!私、今日はちょっと瀬尾研に呼ばれてて・・・」

「え!?報告書終わったの!?」

「(こいつ絶対終わってないと思われてるのかな)お昼返上で終わらせたよ。」

「そ、それは偉い・・・。・・・ハルくんは・・・」

「もちろん定時過ぎたから帰るよ。」

「ですよねー・・・。」


玲ちゃんは失礼だけど終わってないと思ってたのに・・・
まあハルくんは帰るって分かってたけど、夜のオフィスにひとりで残業って寂しいんだよね・・・


「ごめんね名前ちゃん!また明日ね!」

「うん!玲ちゃんお疲れ様!」


いいなあ・・・。私も志音くんとお話したりひかるくんとお菓子食べて癒されたい・・・。


「じゃあ俺も行くね。」

「うん・・・ハルくん、お疲れ様・・・。」

「・・・。」


ふたりが去って、とうとうひとりになったオフィス。
うん、はやく私も終わらせて帰ろう!!



◆◆◆◆



「おわったーーー!!!」


ひとりになったらなったで集中できるもんで、あれから二時間ほどで仕上げなきゃいけない分は終わらせる事ができた。
帰ったふたり以外は戻ってきてないけど、帰っちゃお。



「ふう・・・」


エレベーターホールを出て、エントランスに入る。
ああ、疲れた。
最近、マークしてた売人の動きが活発になったりしてバタバタ過ごしてたからゆっくり美味しいものとか食べたいと思ってたんだけどなあ。
ひとりって気分じゃないし・・・夏樹くんはまだ仕事してるかな?
連絡したら付き合ってくれるかな?


「ちょっと、名前ちゃん、」

「え?」


グルグルと繰り返してた思考を遮ったのは帰ったはずの


「ハルくん?え、帰ったんじゃなかったの!?」

「どっかの誰かさんが寂しそうな顔してたから、コーヒー飲んで待ってたんだけど。」

「うそ・・・。」


だって二時間も経ってるのに、ずっと待ってたの?


「まあ、あの量で名前ちゃんなら大体二時間くらいかなって思ってすこしブラブラもしてたんだけどさ。」

「それでも、そんなに何で待って・・・」

「名前ちゃん、最近バタバタしてて疲れてたでしょ?ご飯もちゃんと食べてないよね?」

「知ってたの?」

「バレバレ。」


確かに忙しかったけど、私だけそんな疲れてる顔しちゃダメだって隠してたつもりなのに・・・


「そっか、なんかごめんね・・・。情けないね、皆忙しいのは同じなのに私ばっかりバテちゃったみたいでさ・・・」

「てゆーか、そんな顔させたい訳で待ってたんじゃないんだよね。」

「・・・」

「隣で好きな女の子が元気無かったら、普通気になんない?」

「・・・え?」


え、ハルくん、なんて言った・・・?



「ほら、俺のオススメのイタリアンのお店、今入れるみたいだから行くよ。」

「ちょっと、ちょっと待ってよハルくん!いま、言ったのって、」

「どうせ菅野くんあたりに連絡してみようかなーとか思ってたんでしょ?」

「っ、」

「だーめ。名前ちゃんには俺と行くって選択肢しかありません。」

「ねえ!ハルくん!!」


手を引かれて、庁舎を出る。
手が熱いのは、ハルくんの温度なのか、私の温度なのか・・・


「いい加減に、名前ちゃんが俺の気持ちに気付いてくれるの待つのも疲れちゃったからさ、これからどんどんアプローチしてくからね。」


さっきまでは仲の良い、同僚だったのに


「疲れて弱ってるとこに付け入るのだって、普通に手だよね。」


ドキドキしちゃってるのって、チョロいかな・・・?


「名前ちゃんが押しに弱いのだって承知の上でいくから覚悟しててね。」





「お手柔らかにお願いします・・・、」





とりあえずこの赤くなった顔だけでも、はやくお酒のせいって誤魔化したい。


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