正十字学園の最上階はメフィストさまのお部屋だ。正確にはメフィストさまの表向きの名、ヨハンなんとかさん邸だったはず。あたしにもメフィストさまが用意してくれた学園内に自分の部屋はあるけれど基本いるのはこのお部屋。寝泊まりもさせて貰っちゃったりもしている。自分の部屋には全く帰ることはない。だってお腹が減ったときはすぐにでもメフィストさまを頂きたいんだもの。そんなこんなで、今日はどうしてもお腹が減ってしまい、寝ているところを押し入り首筋を噛み付いたらメフィストさまに思いっきり怒られてしまったのです。メフィストさまの血はちょっとだけでもお腹いっぱいになるから我慢できなかった……。「コップ一杯も飲めたら1日は持たせる自信がありますよ!」そう力説したら「今後私の寝室への入手は禁止とさせて頂きます」と頬を引き攣らせたメフィストさまに言われてしまった。

「まったくーちょっとぐらいいいじゃないですかあ。メフィストさまはケチです。ケチケチしてるからセンスが悪いんだあ!」
「ネイガウス。千花を外へ」
「え、えっ!」

 調度書類を渡しにきていたネイガウスさんに首ねっこを掴まれた。ちょっと、やめてくださいよ!服がっ!メフィストさまに貰った割とセンスのいい服がっ!なんでネイガウスさん素直に従うんですかあ!上司だからですかあ!メフィストさまのばかあ!
 抵抗も虚しくあたしはヨハン邸から追い出されてしまった。開かない扉とネイガウスさんの視線が冷たい。こんな空気あたしは耐えられない。項垂れながらネイガウスさんから逃げるようにヨハン邸を後にした。あの人は悪魔恨んでるっぽいし一緒にいたら殺られそうだ。いざとなったら食べちゃえばいいけどネイガウスさんおいしくなさそうだし。ああ食べ物の話してたらまたお腹が鳴ってしまった。そういえば、この近くにはメフィストさまおすすめのもんじゃ?のあるお店があったはず。じゅるり。ぐー。思いたったらすぐにあたしは行き先をもんじゃのお店へと決定した。





「あっれー?」

 やっぱりちゃんと場所を確認してから来るべきだったかもしれない。あたしは絶賛迷子になってしまっていた。この学園広すぎじゃないですかねメフィストさま。学園内はこっそり探検したことがあるからなんとか外にでることはできたけど、外は今まで1度もでたことがない。困ってしまった。お腹は鳴るし気分は下がるしもうだめかもしれない。適当にお食事してしまえばいいかと、辺りを見回せばおいしそうな男の子を発見。ラッキーあたし!そう笑うとばちりと男の子のメガネ越しの目とあたしの目があった。ばちばち。

「どうかしましたか?って、悪魔……!?」
「!ばれた!」
「何故悪魔こんなところに…!しかも認めるなんてバカ…!」

 キラリとメガネを光らせた彼は銃を構えた。な、な、なんでバレてしまったのだろう。尻尾はちゃんとスカートの中で小さくまとめたし長い髪の毛に隠れて耳も見えないはず。歯だってちょっと笑ったくらいじゃ見えないだろうに。もしかして彼はメフィストさまと同じ祓魔師なのだろうか?若すぎな気がするけど。ああそういえばメフィストさまが最年少の祓魔師は男の子でサタンさまがどうたらって…!全然興味なかったから聞いてなかったけれど!

「待って!あたし、悪い悪魔じゃないよ!いい悪魔だよう」
「はあ……?」

 ヤメテと両手を胸の前で×印に構えると意味がわからないと呆れた顔をされてしまった。この少年、ドラクエネタが通じないなんてどんな少年時代を過ごしてきたんだ!あたしとDS通信する仲なメフィストさまなら分かってくれるのに。
 ちくしょー!こうなったらやられる前にお食事だあ。ばっと全速力で少年の懐に入り銃を手にした両手を掴み上げる。驚き目を丸くする少年は抵抗するけど、こんなに非力じゃ悪魔のあたしに敵うはずがない。にふふ。ニヤリと目を細め笑ったあたしを少年は嫌そうに睨んだ。おいしそうな瞳にぞくぞくしちゃう。

「ッ離せ!」
「大丈夫ですよー、ちょっとちゅーするだけだからあ!」
「ちゅーって、うわ…っ!」

 少年の顎をぐいっと掴み薄い唇へと口づける。やめろとばかりに強く抵抗されるが、もちろんそのまま離すわけがなく舌を少年へと入れ口の中を犯す。歯列をぐるりとなめ回すと少年の抵抗は弱まった。

「はっ……ぁ…やめ、」
「……んふぅ」

 一度離し息を吸いちゅっとわざと音を立てながらもう一度キスをした。味わうように優しく、しかし本能のままに舌を動かす。空腹感が収まったところでキスをやめると銀色の糸があたしと少年を繋いでぷつりと放れた。

「……なかなか、おいしいねえ君」
「っ……」
「って、ええっ!ちょっとー!?」

 用事も済んだ事だし腕を離してあげると少年は膝をかくんと曲げ座り込んでしまった。頬を赤らめ息も乱れそれでも力なくあたしを睨む少年。うむ、何か悪いことをしたような背徳感で胸がいっぱいだ。もしかして、腰を抜かしたとかそんな……ヤバイ。メフィストさまに言われたことが頭を過ぎる。

「いいですか?千花、人間に危害を加えるようなことをしたら、とーても酷いお仕置きですからね」

 その時のメフィストさまの笑顔は全然目が笑っていなくて思わず震えてしまったのを思い出した。ヤバイ。背筋が冷えてぞくりとする。お仕置きなんて、絶対に嫌。急に怖くなったあたしは一つの選択肢を見つけた。

「食い逃げごめんっ!」
「え…?あっ、待てっ!!」

 そう、怖くなったあたしは逃げることにしたのだった。少年の制止の声より、頭の中で響くメフィストさまの高笑いのほうが大きく聞こえた。




「僕の、ファーストキス……!」









間食控えましょう













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