memo | ナノ

Oct 28th,2012(花京院)


「どうしたの?」
「いや何も」

画面から目を離して不思議そうにこちらを見つめる花京院に精一杯顔を顰めてみせる。そうすれば呆れたように彼はわたしに近づいてくる。あ、一機減った。

「そんな顔して何もないなんて言わせないよ」

優しく頬に指を這わせながら囁く彼は、きっとわたしにすごく甘いと思うんだ。その感触に口元を緩ませながら、何もないよ、と繰り返せばまた呆れたように笑った。だってだって、そんな髭の生えた赤いオジサンにばっかり目を向けて、わたしには構ってくれなかったんだもの。そりゃ、拗ねたくもなるよ!けれどあやすように私を優しく撫でる花京院にそんな言葉はすっかり鳴りを潜めてしまった。現金なもんだ。とうとう堪えきれなくなってクスクスと笑えば、花京院は面白そうに私を見た。

「さっきまで不機嫌だったと思えば、今度は急にご機嫌かい?」
「まあね」
「いったい何が君をそんなにさせてるのさ」

色っぽく細められた目が私を射抜く。分かってて聞くなんて、随分といい性格だこと。

「なんだろうね。花京院は心当たりある?」
「わからないなあ。なんだろうか」

二人そろっておどけて見せれば、いいようのない笑いが込み上げてくる。くすくす、あはは、とついに声を上げて二人で笑う。何が面白いのかわからないけど、暫らく収まりそうにない笑いに二人で興じることにしようと思う。



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