memo | ナノ

Dec 10th,2017(仗助)


「ねえ、仗助」
「あ?」
「好き」
部屋に入るなり背中に抱きついたそいつは、顔を上げもせずに唐突にそう言い放った。
「どした、急に」
「どうもしないよ。大好きなの」
さらにぐりぐりと頭を押し付けつつ、またいけしゃあしゃあと言いやがる。いい加減、火照る顔を抑えられそうにもない。くるりと向きを反転して、素早く正面から腕の中にしまい込む。すっぽりと覆えるこのサイズは、人混みでは見つけづらいが如何ともしがたい愛らしさがある。こんなとこ億泰の野郎に見られたらどんだけドヤされるんだろうな。ぽんぽんと頭を撫でつつ、オレだって大好きだぜなんて呟いてみる。なんとも照れくさいが、へへふと気の抜けた笑い声が聞こえてきた。なんつー笑い方だ。
「このままずっと離さないでね」
そう言って、のそのそとオレを押して、後方のベッドまで誘導された。ぼふっとベッドに背中から倒れ込んだオレと一緒に、ぽすっと彼女が胸に倒れる。もぞもぞと擦り寄る彼女をあやしつつ、窓枠で切り抜かれた青空に愛しい午後を堪能した。


Mar 24th,2014(プロシュート)


黒地の上を流れていくスタッフロールをぼんやりと眺めていると耳元に生暖かい息遣いを感じた。

「ちょっと、やめてよくすぐったい」

「冷たいなバンビーナ。他人の恋愛は幸せそうに見るくせに、自分の恋人は放置か?」

「放置してないでしょ、ちゃんとくっつくのも許してあげてたんだから」

「それで放置じゃねェつーんなら、世の中の恋人同士の喧嘩は激減するんじゃねーか?」

ぶつぶつと文句を言い続けるプロシュートには聞こえないように小さくため息を吐くと、くるりと彼の腕の中で体を反転させる。そのまま厚い胸板に頬を寄せて、甘えるように腕を回せば頭上で上機嫌な声が揺れる。

「ベネ、それでいい」

嬉しそうに私の体を抱きすくめる彼は、本当単純な男だと思う。ただ、同じように抱きつく力を強める私も思いの外単純な女なのかもしれない。






兄貴は映画ネタが書きやすい気がする


Mar 21st,2014(リゾット)


「ねぇ」

「なんだ」

「そろそろ離してくれてもいいと思うの」

「それはできない相談だな」

「ひどい。もう足がしびれちゃったよ?感覚がないし、買い物に行かなきゃ」

「悪いな。まだお前の膝を借りてたいんだ」

「……じゃああと少しだけね」

「……」

「ちょっと、本当に立てなくなっちゃう」

「……立てなくなればいい」

「え?ごめん、聞こえなかった」

「いや、あと一時間って言ったんだ」

「だめだってば!」

「じゃああと十分」

「……それが限界だからね!もう!」

「グラッツェ」


オレの元から離れてしまう足なら、使い物にならなくなってしまえばいいのに、なんて。


May 19th,2013(リゾット)


ふふふん、ふふん、

途切れ途切れに聞こえる、音程もリズムもメチャクチャな鼻唄に誘われるようにしてリビングに入った。その音の出所を探るようにして首を回せば、すぐにそれは見つかる。ソファーに腰掛けて、上機嫌で洗濯物を畳んでいる彼女がいた。
その手元にはちょうどオレの頭巾があり、一度慈しむようにそれを撫でると、丁寧に畳んですぐに横へ置いた。仕事着は貴方の命を左右するときに身に付けているものだから、畳むときにおまじないをかけているの、と以前はにかみながら言っていたことを思い出す。
だからこそその場面に初めて遭遇した今、どうしようもなく彼女を愛しく感じて、そっと後ろに回り込んで抱き締めた。びくり、と肩を震わせたのを宥めるように抱き締める腕に力を籠める。そのまま耳元に口を寄せてそっと囁いた。


「愛してる」


今まで一度も言ったことがない言葉に、少し頬が熱くなった。けれどそれ以上に満足感があって動かずにいると、もぞもぞと動いた彼女がこちらを振り向いて口を動かした。


『わたしも』


空気を震わすことないその声は確かにオレの胸に届いて、同時に驚愕を連れてきた。
彼女は、耳が聞こえない。だからさっきの言葉も聞こえているはずがないのに、振り向いた彼女は確かにあの言葉に答えるように返事をした。
この奇跡みたいな出来事に、途方もない愛しさばかりが込み上げて、何も返せなくなったオレは彼女の唇を奪うしかできなかった。


Nov 11th,2012(露伴)


「露伴先生」

「なんだ、僕は忙しいんだ」

「今日はポッキーの日らしいですよ」

「へぇそうかい。企業の策略だね」

「捻くれてますね」

「褒め言葉だよ」

「……ポッキー美味しいですよ」

「………」

「……(仕方がない窓の外でも楽しむか。うわ、リア充発見。うらやましい)」

「おい、聞いてるのか」

「っすいません聞いてませんでしたっていうか近いです!」

「……そんなにあの恋人たちがうらやましいのか」

「へ?」

「ポッキー、食わないのか?」

「むぐ!押し込まないでください!先生にはあげないんだから!」

「ふん、君の許可なんかいらないさ」

「!?」

ぽりぽりぽりぽり、


ちゅ、
「…ご馳走様」



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