追想花
雨の中、よく覚えている。罪は何時しか消えるものだと信じていた。だけど、罪は永遠に消える事が無く――残されたのは罪の戒めの傷。紅蓮の翼竜のカードを持つ私は、どうしても拭えぬ罪の感触を覚えた。どうせなら、いっその事笑えば良い。誰かが私を裁く、その時まで。

「やぁ」
何時もの腹立つ顔をした盟友は、ニヤリと笑った顔で私の前に現れた。エクェスの訓練生であるが故にまだ若い私であるが、シュトルツは気楽な性格故に何時も叱られていた。宥める役が私である為に、ネポスを守る戦士がこんな事をするなんてあまり非常識であろう。かく言う私も、真面目なのであるがこの不真面目な青年をどうしたら真面目になるのかを考えてくれよう。答えは「NO」である。性格を変えて、根本的な心は覆せないのだから。私が溜息をつくと、シュトルツはニヤリと笑った。
「なあクルード、野良ドラゴンの卵が孵ったってさ!一緒に見に行かないか!?」
「断る。お前一人で行って来い。大体お前が問題を起こすと私もとばっちりを食らう」
「良いじゃないか別に?俺とお前は親友だし」
親友。私とシュトルツは親友であり、私達の仲が良い所は誰でも知っている。訓練生の先生、同僚、私達の両親も含めて。全く困った男だと思ったが、恐らくきっと、私もシュトルツも自覚しているだろう――全ては始まりの魔神の御意思なのだから。始まりの魔神は、この宇宙を作った――創造主とも言える。だから、私や彼が信仰しているのは、きっとそう言う事だろう。全ては始まりの魔神の為に。そう、あの日までは。



シュトルツ。と私が彼を呼ぶと、友は私の声を聞いたのか、駆け寄って来る。「何の用件だ?」と彼はそう言い、私に近づいて来た。
「その――お前が、恋人が出来たと言うから」
「恋人?ああ、綺麗な美人だったぞ。美しい顔立ちで、俺に――」
「――シュトルツ?」
「――お前は、お前は如何なんだ、クルード。この年頃だから、恋をしても良いのでは――」
私には恋等関係無かった。唯只管、剣を持って、武術や剣術に励んでいた。剣に励んで、戦いを続けている。だけど、戦いを続けていれば――私の中で何かが失われていた気がするのだから。だから、きっと、其れはとても辛く、悲しい事だ。だから、私は何かを見つけても良いのではないのか?恋?探求?
「…別に私は何を求めていない」
私はそう言い、静かに立ち去る。シュトルツは「待て!待つんだ!クルード!」と叫ぶ。とても、懐かしい記憶が響き渡る。

『大丈夫か?』
柄の悪いエクェスに絡まれ、私が一人で撃退した後にやって来た彼は――右腕に怪我を負って動けない私に包帯を巻いてくれた。彼は近くの先生を呼び出し、彼を医務室へ運ぶようにと指示をした。
『私は大丈夫だ、だから』
『大丈夫じゃないだろう。だから、腕が――使い物にならなくなったら如何するんだ』
『……分かった、好きにしろ』
それが、私とシュトルツとの出会いだった。その後、彼は私に何回か来る様になった。何時しか、私と彼は親友になった。戦いに只管没頭していた私の中で、何かが芽生えた気がした。何時しか親友になったのは、そのせいかもしれない。真面目な私と、不真面目な彼――相反している二つの性格は、何時しか引き寄せる運命がある事を。

(…何なのだ…………?)
私は思うも、廊下を一人歩くと二人の小さな少年少女が居た。
「あ、クルード様!」
青い髪の少女は、私に気付くと嬉しそうな顔をしていた。額に傷をした少年は少女をからかう。
「お前、クルード様を見ると嬉しそうな顔をするな!」
「やめてよバーリッシュ!私、クルード様に憧れているの!からかったら承知しないんだから!」
「ペルブランド、バーリッシュ」
二人が嬉しそうな顔をしている。彼女達は私に憧れてエクェス見習いとなった者であり、二人とも仲が悪いそうだが――実は仲が良いのだ。私に憧れているのか、私を見ると嬉しそうな表情になるのだ。だから、私にとっては教え子みたいなものだから。
「今日の戦いの成果、どうだったか?」
「あ!私、相手のエクェスを一人で初めて倒しちゃったの!」
「そんな訳が無いだろ。俺が相手の弱点を教えたからだろ。お前は弱点を突いただけだ」
「でも一人で倒したのに変わりは無いの!バーリッシュの馬鹿!脳筋!」
「の、脳筋だと!?ば、馬鹿にしやがって!」
争う二人を見て、私は落ち着け。と諭す。ペルブランドとバーリッシュの二人は、は、はーい…と言い、落ち着いた。
「確かに相手は強大だ。だが、一人じゃ勝てない時もある――そんな時は、仲間の力を借りて倒すんだ。仲間と協力する――エクェスには、仲間と一緒に戦う者も居る」
「…でも、私は一人じゃ戦わないと意味が無いの…」
そう落ち込んでいるペルブランドは、暗い顔をしていた。確かに彼女はプライドが高い故に一人で出来る!と何時も言い聞かせて一人で無茶をする時を何時も見る。
「安心しろ、一人で戦うのは意味が無いと誰が言った?お前は十分に戦っている」
「…!」
彼女は嬉しそうな顔をし、バーリッシュは「…嬉しそうな表情をしているやら」と貶したように言う。嬉しそうな顔をしている少女と不器用であるが優しい少年。二人が、私に憧れている。其れが、私にとって――。
*前表紙次#
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