フリージア
ダークワイバーンに着装した私と、フェニックスボーンに着装したシュトルツとの特訓。私が左腕の武器が炎を纏い、シュトルツは時間属性の能力を使い、回避を行うも――幻獣種であるが為に私の方が時間を見破れる力がある。シュトルツは私が時間を看破すると気付き、拳を上げる。「中々やるな」とそう言い、私も攻撃を行う。
特訓が終わった後、シュトルツは私にこう語る。
「……なあ、クルード。明日は…初めての…惑星のボーンを回収する任務を担当する日だよな」
「…ああ」
「私が父から受け継いだフェニックスボーンを着想して、始まりの魔神の声を聞いたのは良いが――よりによって、評議会は期待のお前に託した訳か…」
確かにそうだ。実力が高い故に私に評議会はボーンを回収する事を託した。だが、何だ――この嫌な予感は。まるで、逃げろ!逃げろ!と言うように――。
「大丈夫だ、明日――やれる」
私はそう言い聞かせ、静かに目を閉じる。

私がダークワイバーンに着装し、他の星のボーンカードを回収する。だが、聞こえてくるのは――不安と焦燥感が襲う、悲鳴だった。

『何でこの星に来たの?』
『お願いだ、帰ってくれ…!死にたくない!』
『私には、まだ子供が居るの!』
『お母さん、おかあさーん!』
『死にたくない!始まりの魔神に忠誠を誓ったのに、どうして!』

「あ、あ…」
違う。違うんだ――私は、始まりの魔神の御意思に従っただけなのに。どうして、どうして――。拳が相手のボーンを貫く。だが、手加減をし――炎の剣で斬る。相手はボーンクラッシュをし、断末魔の悲鳴を上げた。ボーンカードは、自分の手にある。
「あ、あ、あ…」
私は、私は、私はこの星の住民を殺し、た―――?
「あああああああああああ!!!」


「…どうしたんだ、初めてのボーン回収任務は――星の民は嬉しそうだったぞ」
帰還した私に、シュトルツはそう言い…私の顔を見て、不安げに呟く。私は、取り返しのつかない失態をしてしまったのだから。
「――私は、星の民を――殺してしまった」
「何を、言っているんだ」
「私が、他の星の民を殺してしまったのだ…!私は、無駄な殺傷を好まない!だが、始まりの魔神の御意思と称して、星を滅ぼしてしまった…!」
泣きじゃくる私に、シュトルツはポンポン。と肩を叩いた。其れは、慰めだったのか、励ますつもりだったのか――分からない。だが、私の正義で、他の星の正義を殺してしまったのだから。
「あ、クルード様…クルード様?」
「どうしたんだ?」
ペルブランドとバーリッシュが、私の元に来た――が、私の顔を見て、悲しそうな表情をしていることに気付いた。何故だか分からない。
「ねぇ、シュトルツ様。クルード様――泣いているの?どうして、初めてのボーン回収の任務なのに――泣いているの?」
「…ペルブランド、バーリッシュ、クルード様はね――」
言うな、シュトルツ。それ以上言ったら――未来の種である彼女達を傷つけてしまうから――だから――。

「苦しんでいるんだよ」

「何で?」
「始まりの魔神のね、星のカードを回収したのにね…星を滅ぼしてしまった。クルード様は、それに苦しんでいるんだ。だから――」
「言うな、シュトルツ、言うな…!」
私が躊躇って言うも、シュトルツは躊躇わない。
「――ペルブランド達も、知っておいた方が良いんだ。エクェスとしての、誇りの葛藤を――」

私が、過去に苦しんでいるのは――始まりの魔神の御意思と称して、他の星の命を奪ってしまうから。だから、私は過去に苦しんでいる。どれだけボーンカードを回収しようとも、糾弾は訪れなかった。激しく非難する声は出なかった。始まりの魔神の御意思だから。と誰もが言っていた。

――一人の少年が、其れを否定するまでは。
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