red moon
最初にこのカードを受け取ったのは、幼い時の話であった。手に残った暖かな感触。それは、生命の焔と言われる幻獣種のボーン。ダークワイバーンと呼ばれるボーンカードを受け取った時には、立派なエクェスになろうと思った。けれど、頑な者達は私を認めようとはしなかった。幼いお前がそのカードを選んだと言う事は、辛い道を選んだと言うことを。後悔しなくて良いのか。と言われた。けれど、何故か後悔などしていなかった。だから、このカードを受け取った。
幼いペルブランドやバーリッシュ、盟友のシュトルツに囲まれながら私は幸せだと感じられたのだ。だが、星を滅ぼす事は本当に始まりの魔神のご意志だと言うのか?自問自答を繰り返す中、数十年が経った。だが、不意に私に訪れたのはダークケルベロスの適合者であり、エクェスでもあるレボルト。若くしてダークウロボロスのソキウスと共に評議会に上り詰めた男。慈悲など無い。遅かれ早かれ彼等は滅ぶのならば――いっそ殺した方が楽でしょう。と語る彼は、まさに暴君だった。私は彼のやり方を咎めた、だが、私は間違っていたのだ。と思っていた――何故なら、レボルトは道を間違えたもう一つの私だと悟ったのだ。眼で分かる。始まりの魔神に逆らうその鋭い眼を、口元を。だから私は、レボルトを咎めた。現実逃避でしかない、その可哀相なやり方で。可哀相なのは、もしかしたら自分なのかもしれない。其れを忘れずに居る。過去の幻影に悩まされ、未来の虚栄に怯え――私は、どうしようもないと感じたのだ。不意に、不本意に。

『ねぇ、クルードは将来は何になりたい?』
母はそう言い、幼い私にそう言った。私は、んーと、分からない。と言っても、思い付いた未来を考える事など出来なかった。すると、私は咄嗟に叫んだ。
『えいゆうになりたい!』
英雄――だが、今思えば、信じる事が出来ない言葉だった。始まりの魔神に逆らい、同じ同胞を殺す事で――英雄になれるのなら、どうしてこの星の民は私を崇めるのだろう。星の民には、友が他の星に居るのなら――私を恨むだろう。だが、何故か私を咎めない。其れなら、英雄は偶像でしかない?気付いた私は、怯える事しか出来なかったのだ。過去を咎める私と、未来を切り開くレボルト、どちらかが間違っているのだろうか。いや、最初からどっちも間違っているのだとしたら――考える事すら出来やしなかった。其れでも、一人の少年がどちらも否定した。
竜神翔悟。ドラゴンボーンの適合者。地球の核を持つ適合者であり、若い少年であった。敵である私のやり方に疑問を抱きながら、レボルトの非道な行為に怒りを覚える。それは、若い少年が歪な希望の形をしているのだと気付いた。
彼は、私やリーベルトのこれまでのやり方を否定し、日常を守ると言って――ダークウロボロスに立ち向かう。彼は、傷付いた人を守る為に。と言って、怒りを覚え、拳を構える。
だが、彼は攻撃に倒れ、生命の焔が消えようとしている。竜の生命が。
私は必死で火の魔神に叫ぶ。最後の願いに答えよ。と――ワイバーンボーンの生命を引き換えに、全ての願いが叶えられた。願いに答えられたのか、火の魔神が現れ――私の願いは、魂は、思いは――彼に引き継がれようとしていた。
*前表紙次#
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