死にたくなるほど愛おしい

 そのまま浴室に入り、シャワーを頭から浴びながら早速、チンポを握り扱き始める。自分でするこの感覚も久しぶりだ。久しぶり過ぎてヤり方すら忘れてるくらいだ。溜まる前に女抱いてたし、今は撫子がいるしな。
 はあー……侘しいぜ。かといって、龍宝にはさせたくない。なんだろうな、この感覚は。
 そのうちにだんだんと気持ちよくなってきたのでそのまま扱く手を速める。早くヤツのところへ帰らないと不審がられるからな。それに、あんまり独りにさせておきたくない。なんか、危なっかしいというか、傍に居ると構いたくなる。今はおんなじ部屋にいるから特に強くそう思うんだろうが、なんかな、優しくしてやりたい。
 暫くそのままチンポを扱いていると、ふと思い浮かんだのは龍宝の感じている顔で、慌てて撫子を思い出そうとするが上手くいかず、龍宝と撫子の顔が交互に浮かんできてはチンポは既に限界に来ていて、とうとう最後の絶頂の時、俺の頭の中は龍宝のあの色っぽいイキ顔だった。
 その顔でとうとうイってしまい、大量のザーメンが床に飛び、壁にも飛ぶ。
「あ、はあっはあっはあっはあっ、はっはあー……あー、気持ちイイ。つか、なんであいつなんだっ……!! フツーは撫子だろっ!!」
 俺の独り言は虚しくシャワーの音に掻き消されていったのだった。
 その後、ゆっくりと頭と身体を洗い、バスローブを着てヤツのところへ戻ると、どうやら待ちくたびれてしまっていたらしい、うとうとと船を漕いでいて、その寝顔がまたかわいい。なんか、ちっさなガキみてえな顔だ。いつものあの険のある表情は形を潜めて、なんともかわいらしく口が半開きだ。
 しかし、改めて見てみるとホントにキレーな顔してやがるな。睫毛なっが。肌もつやつやだし、鼻筋も通ってるし形もいい。唇も今は控えめな桃色で美味そうだ。
 思わず顔を寄せてほっぺたに手を当ててちゅっとキスしちまうと、どうやら起こしちまったらしい。
「あ、おやぶん……おやぶんっ!!」
 ベッドに腰掛けるとすぐにでも腰回りに抱きついてきて、頭を撫でてやると嬉しそうに笑うヤツがどうにもかわいく、誤魔化すようにベッドへ入ったその途端だった。
 がばっとバスローブの前がヤツの手によって割り開かれて胸に頭を乗っけてくる。
「……おやぶん……」
 鳴戸もこうやって甘やかしてたのかな。なんか、いつもの習慣ぽい感じがする。ヤツの頭はちょうど心臓の上にあり、当たっているほっぺたの部分が熱い。
 何となく頭を撫でたくなったのでゆっくりと撫でてやると、そのうちに細かく龍宝の身体が震え出し、何事かと思うと瞑っていた眼からぽろっと涙が零れ出して、それは頬を伝って俺の胸に零れてゆく。
「……おやぶんっ。鳴戸おやぶんに、逢いたい……何処にいるんです、おやぶん……俺の、おやぶん……どこ」
「龍宝……」
 本格的に泣き始めてしまい、ぐすぐすと鼻を啜るヤツの頭を撫で続ける。
 まあ、俺は所詮代理の鳴戸だからな。こうなるのも仕方ねえけど、なんかなあ。俺がいるじゃねえかって思っちまう。
「おやぶん、親分何処に……どこに……」
「俺がよお、いるじゃねえか龍宝、泣くなよ。泣くんじゃねえ」
 なんか、これ以上何か言っちまったら取り返しがつかない気がするが言葉が止まってくれねえ。ヤベエぞ俺。
「夜だけでも俺は鳴戸だぜ。恋しがるのは止めろ。なんだ、抱いて欲しいか?」
「えっ……」
 涙で濡れた顔をヤツが上げた。その泣き顔を見た途端、何かが心の中で弾けて止まらなくなった。
 がしっと両手でヤツの頬を包み、強引にキスして唇を塞ぐ。
「んっ……んんんっ、んやっ、やっ……あっ、おや、ぶっ……なると、おや、ぶっ」
「鳴戸の名前を呼ぶんじゃねえ!!」
 至近距離にいるヤツの顔が強張る。言っちまった。言ってはいけないことを、言っちまった。
「……じゃあ、あなたは誰なんです。斉藤さん? それとも、おやぶん……? 鳴戸、おやぶん……?」
「俺は……俺だ。誰でもねえよ、お前はそれでいいんだろうが」
 すると、目の前の顔が歪み大粒の涙が切れ長のキレーな眼から溢れ出して止まらなくなった。
 泣かせてしまった。泣いて欲しくないと心の底から思っているヤツを、とうとう自分の手で泣かせてしまった。
「鳴戸、おやぶん……どこ……」
 ぐしっとヤツが鼻を啜り、目元を押さえ肩を震わせる。抱き寄せてやりたいが、俺でいいのか? 鳴戸でもねえヤツに抱き寄せられたって嬉しくねえだろ。こいつが恋しがってるのは鳴戸竜次って男なんだからよ。
「泣くなよ……龍宝」
 しかしヤツは首を横に振るばかりでますます激しく泣き始めてしまい、肩が呼吸のたびに上下して、涙の粒がぽたぽたとシーツに零れて染みができる。
 思わず肩を抱き寄せると、抵抗されるかと思いきや大人しく身体を預けてきた。その肩を宥めるように擦ってやり、後ろの髪をさらさらと梳く。
「悪かった。俺が悪かったな、今のは。自分で鳴戸になるって言い出しておいて、今の言葉は本当に、悪かった。だから泣くな」
「おやぶん……」
 恐る恐るヤツの腕が俺の身体に絡みつき、ぽろりと涙を零してぎゅっと抱きついてきた。
 その身体を抱え、涙で濡れた頬を手の甲で擦ってやる。これ以上怯えさせるわけにはいかねえ。なるべく、慎重に、優しく……。

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