海よりも深い深い愛情

 ふわりとした柔らかなキスが何度も唇に落とされ、嵐のように激しいキスではなく慈愛の篭ったような優しい触れ合いに、身体からどんどんと力が抜けてゆく。
 角度を変えて何度も触れ合っているうち、下半身に力が漲ってくるのを感じた。半勃ちしている。すぐにフルに勃起するだろうそこを気にしながら柔らかなキスに溺れていると、徐に唇が離れてゆき、その顔は首元に埋められる。
「あー……すっげ、いいにおい。女みてえに香水のにおいじゃなくって、あったかい肌のにおいだな。甘くって、アッチに響くにおいがしやがる」
 くちゅっと音を立ててうなじに唇が乗り、大きくそこを舐められる。その直接的な快感に、思わず身体を震わせてしまうと、次々に舌が首元を這い回るようになり官能という官能が引きずり出されてゆく感覚に背を仰け反らせ、熱くなった身体を持て余しながら身を捩る。
 久方ぶりの感覚に、身体はついていくことができても心は羞恥に溢れ何処かへ逃げ込みたい気持ちでいっぱいだ。
「お……おやぶんっ!!」
 両腕で思い切り突っぱねると、離れてはくれたが鳴戸も自身のスーツに手をかけて服を脱ごうとしている。
「あの、もうちょっと何かありませんか。もっとこう……」
「なにが言いてえんだっつーの。お前はここに抱かれに来たんだろって。じゃ、一体なにしに来たんだって俺は聞きたいね。いい加減観念したらどうだ? 逃げ場はねえぜ。俺が作らせねえ。さて、どうする?」
 にやにやと鳴戸が笑いながら、カッターシャツを脱ぎ捨てて上半身裸になったその屈強な身体にはたくさんの傷が見え、今までの鳴戸の戦いぶりがいかに激しかったかを思わせるような、そんな身体が目の前に迫り、顔を背けるとすぐさまあごに手がかかり真正面を向かされる。
「こっちを向いて、俺を見ろ。……ちゃんと見とかねえと、後悔するのはお前だぜ」
「どういう……っん! あっ……おやぶんっ」
 いきなり喉仏を柔らかく食まれ、驚きもあるが官能の方が先に立ち大きく食まれたところを舐められているうち、緩やかな官能の波がやってきて思わず熱い吐息をついてしまう。
「は、はああっ……はっ、んっ……んん、う、んっ……は、おやぶん」
「気持ちイイだろ? 思い出してきたか? 長い間、抱いてやれなかったもんな。そりゃ、少しは恥じらいもあるだろうが、そっちの方がコッチとしてもなんとなくソノ気になっちまうのはなんでだろうな」
「知らないっ……知りません、そんなの……」
「なんだお前、俺がいない間、女抱かなかったのか?」
 顔にかっと血が上り、恐る恐る頷くと鳴戸は申し訳なさそうに人差し指で頬を掻いた。
「すまん、俺は結構……抱いちまった。お前が恋しくてよー」
「知ってます。親分が女好きなことも、俺が居なくなれば女を抱くこともすべて知ってます。……けど、それを咎めるほど俺もガキじゃないんで」
 といいつつも、どこか拗ねてしまう自分もいてぷいっと顔を横に向けるとぷちゅっと頬にキスされ、そのままの勢いでカッターシャツをすべて脱がされてしまい、剥き出しになった肌にたくさんの触れるだけのキスが落とされる。
「だってお前、ムショに入っちまったし。組のためとはいえ、淋しくてよお……けど、やっぱお前みてえな美人にお目にかかったことは無かったな。ホント、キレーになって帰ってきちまって。アソコが勃っちまう」
「俺の顔と勃起するのとでは話が違うでしょう! まったく……調子がいい人です。俺は……やっぱり、親分とだけしか寝たくありません。不自由を感じていないなら、女を抱く必要はないでしょう? 俺は、おやぶんがいい。親分しかいやです」
「……かっわいいなあ、お前。ホント、かわいくてまいるぜ。こんちくしょう、バッキバキに勃ってきやがった。先、進めるぞ」
「あ、待っ……んんっ、んっ! あっ……! や、おや、おやぶんっ!」
 うなじに顔が寄せられ、ふんふんとにおいを嗅がれる。そしてそこを舐め上げられ、手は肌が露出している上半身を中心に性的な意味合いを含めた触れ方で撫でてきて、特に脇腹を撫でられると勝手に下腹が蛇腹のように動いてしまう。
 龍宝は胃から下がとにかく弱い。そのことを覚えているのだろうか。やたらと手がそこばかりを這う気がするのだ。それと、首。首も同じく弱い。舐められると、ぞくぞくするほどの快感がやってきて意識が飛びそうになる。
 ある意味、乳首や乳輪よりも弱い箇所なのかもしれない。
 そんなことを思っていると、へその窪みに鳴戸の指が入りまるで抉るようにくりくりと窪みを引っ掻いてくる。
 思わず快感により身体がビグビグビグッと跳ねてしまう。
「あっうあっ! んっあっあっあっ! やっ、おやぶんソコっ、ソコ、やっだっ……あァッ!!」
「いやじゃねえよな、イイんだろ? お前はへそが弱いもんなー。昔からそうだったよな、覚えてるぜ。へそいじってやると悦んでたお前、かわいかったなあ。今もかわいいけどよ」
 窪みをいじられながら、上機嫌な鳴戸の声が遠くで聞こえる。羞恥と快感の板挟みで、なにがなんだかよく分からなくなってきている。
 鳴戸とするこういった色事はいつもそうだ。誘い誘われ、いざベッドに乗ると恥ずかしさと快楽が同時に襲ってきては龍宝を訳の分からない快感地獄に引き摺り下ろしてくるのが常で、龍宝はいつもその鳴戸の激しさに翻弄され、その夜は啼きながら何度もいやというほどにイかされる。
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