愛と弾丸と、君の横顔

 鼻呼吸をしていたが、それすらも苦しくなるくらいのキスを施され漸く、ちゅっ……と音を立てて唇が離れてゆくが手はそのまま頬に当てられており、額と額がこつんとぶつかり合う。
「だから、泣くなって。お前に泣かれるとどうしていいか分からなくなっちまう。笑いな、龍宝。こういう時だからこそ、笑えよ。じゃねえと、抱くこともできやしねえ」
 だがしかし、龍宝の瞳からは絶え間なく涙が溢れ鳴戸の手を濡らしてゆく。
「泣くな、龍宝。今は泣いてる時じゃねえだろ」
「もう、独りはいやですっ……! おやぶん、あなたとずっと居たい。あなたの傍に居たい」
「だからな、龍宝」
「いいんです、ただの戯言として片づけてください。それが叶わないことくらい、分かっています。ただ、伝えておきたくて。俺の気持ちは変わっていないことを……あなたに」
 そっと、頬から手が離れていったと思ったら息ができないほど強く抱き寄せられ、その力強さにも涙してしまう。
「おやぶんっ……! 今でも、好きです。愛して、います。あなたをずっと、想ってます」
「……黙りな、龍宝。抱くのに躊躇いが出るだろうが」
「本当のことに、誰が嘘など吐けましょうか。すべて、俺の本心です。ムショ行きになってからもずっと、その前からずっとずっと、想っています」
「黙れ、龍宝。黙らねえか」
「好きなんです……親分が、好き……。これほど告白してもきっと、あなたは行ってしまうのでしょうね。分かってます、言葉で縛るのが無理なことくらい。何もかも、分かっているのに……言葉が止まらない。涙が止まらない。傍に親分が居てくれるのに、なにも止まってくれない」
 龍宝からも鳴戸の背に手を回し、ぎゅっと抱きつく。すると、鳴戸の体温が移ってきて触れ合っている部分が熱く、温かなかおりも感じる。
 すんっと鼻を啜り、それらを愉しんでいると突然鳴戸が歩き出し、必然的に龍宝は後ろ歩きになって、覚束ない足取りで後ろへと押されてゆくと何かが足に引っかかり転ぶと思った瞬間、身体がふわっとしたものに包まれ、そこがベッドだと知る。
「お前みてえなヤツは、しこたま抱いてやらねえと分からねえみてえだから抱く。いいな」
 目の前にある真剣な鳴戸の男くさい表情に、思わずのどが鳴る。
 なにも言えずにいると徐にネクタイに鳴戸の手がかかり、するっと解かれ床に落とされる。そして服の上から胸を撫でられたところで急に羞恥が湧いてきて、顔を背けて手で制してしまう。
「や……ちょっと、待ってください。未だ……その、気持ち、気持ちが」
「なんの気持ちだよ。抱かれたかったんだろ? 俺に。それを期待してここに来たんだろうが、お前は」
「そ、そうですけどっ……は、恥ずかしいです。服くらい、自分で……」
「服を脱がすのも愉しみのうちなんだからその愉しみを奪っちゃいけねえな。剥かせろよ、剥きてえ。剥いて、お前の裸が見てえ」
「剥く、見るって……何故にそんな直接的な言葉を」
 思わず顔に朱を走らせると、背けた顔に手がかかり正面を向かされ頬に口づけられる。
「そう言わなきゃお前にゃ伝わらねえだろ。意固地になりやがって。ほら、キスしてやっから」
「おやぶ、んっ……んんっ、んっ!」
 咄嗟に逃げようとした龍宝だったが、一足先に口づけられてしまいあごをしっかりと手で固定され、その上で深いキスを強いてくる。
 ナカを舌で深く探られ、舌を柔く食まれるとじんっと身体に火がついたような快感が灯り、思わず腕に縋ってしまうと両手で頬を引き寄せられ、ぐっと強く唇に鳴戸のモノが押し当たる。
「ん、んっ……んん、んうっ、ふっふっ、は、あっ……」
 息苦しくもあるそれに、つい啼いてしまうとさらに舌が大胆に動き出し、ひたすらに咥内を舐めしゃぶってきて龍宝をたまらない気持ちにさせる。
 口のナカが熱い。まるで焼き鏝を当てられているような気分だ。それほどまでに鳴戸の舌は熱く、その熱さにも感じ入ってしまい、溢れ出る唾液を必死になって飲み下しつつ鳴戸の施すキスという名の愛撫に溺れる。
 余すところなく咥内を散々貪られ、息が上がる頃に漸く唇が離れてゆきぼーっと鳴戸を見上げると、とんっと肩を押され膝下以外、すべてがベッドに沈むと鳴戸がそれを追ってベッドに乗り上げてきて早速、カッターシャツのボタンが次々と外されてゆく。
「ちょっ……や、止めてください。親分、ちょっと、待っ……」
 何故だか、とてつもなく恥ずかしい。顔に血が上ってきて、きっと顔色は真っ赤だろう。手を振って鳴戸の手を退かそうとするがままならず、ボタンはすべて外され前をはだけられた龍宝は腕で顔を覆ってしまう。
「退かしな、その腕。顔が見えねえじゃねえか。キレーなツラ、こっちに見せな」
「おやぶんっ……! や、恥ずかしいです。このまま、このままでコトを進めてください。顔は、無理ですっ……!」
「無理なことがあるか。だったら、強制的に外すまでだな。ツラ、見せなって」
 ガシッと両腕が強い力で掴まれてしまい、何とか抵抗を示すがままならず鳴戸と目が合った時点でさらに顔を赤くしてしまう。
「……キレーだなあ、お前。ホント、キレーなツラしてるよ。いつの間にこんなに美人になった? ん?」
「し、知らない! 知りませんよそんなの……。俺に美人なんて言葉使うの、親分だけですから」
 何とか顔を背けようとするが、吸い込まれそうな鳴戸の瞳に見つめられるとそれもままならず、ついじっと見つめてしまうとその顔が優し気に笑み、口づけが降ってくる。
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