情熱の鼓動

 何とか上に乗っている鳴戸の下から這い出ようともがくが、それは徒労に終わり頭をがっしりと抱えられ、その上で咥内に舌を入れてナカを舐めしゃぶってくる。
 熱い。気持ちもイイが、とにかく何故だかものすごく口のナカが熱いと思う。その正体は鳴戸の舌が咥内を這い回っている所為だが、その激しさにも熱を感じてしまう。
「んっ、ん、んむ、ふっ……ふ、うんっ、おや、おや、おや、ぶっ……」
 意識せず、勝手に手が動き鳴戸の首を引き寄せる形でますます口づけは激しさを増し、飲み下し切れなかった唾液が口から溢れ出て、それを鳴戸が舐め取る形で漸く唇が離れてゆく。
「はあっはあっ……はっはっ、はっ……おや、ぶん……? は、はあっ」
「龍宝……!」
「なにか、ありましたか……? あの、俺で良かったら話を」
「話なんかねえ。さっさと抱かせろ」
「待ってください。なにかありましたよね、さっきのバーですか? 一旦、俺の上から退いて……」
「退かねえよ。いいからその腰のバスタオル取れっ!」
「おやぶん……今日は止しましょう。少し、様子がおかしいです。なんか、熱もあるようですし……今日は」
「ばか言ってんじゃねえ。今日ヤらねえでいつヤんだ。いいからベッド行くぞ」
 初めに鳴戸が立ち上がり、腕を引かれて無理やりベッドへと引き摺られて行く。これは、いつもの鳴戸じゃない。
 龍宝は自分の心に正直になることを決め、抵抗を試みてみる。龍宝が好きなのは、優しいいつも通りの鳴戸であって、今の鳴戸に対しては正直、鳴戸と思えないところがあって身を任せるには少しの恐怖を感じる。
 龍宝の好きな鳴戸に戻って欲しいと、ベッドに乗せられた後も身を捩っていやがって見せるが、逆にそれが鳴戸に火をつけたらしい。
 腰に巻いていたバスタオルはさっさと剥ぎ取られ、一糸纏わぬ姿になった龍宝の肌に早速、手を這わせ始める。
「やっ……おやぶん! 親分いやです! 離してください、おやぶん!」
「うるせえっ! 黙って抱かれろ。気持ちよくしてやるからイイコだろ? オマエは」
「おやぶん……もう止しましょう。そんな気分でもなくなってきましたし、それより親分が……」
「俺がなんだって? 俺とヤるの、好きなんだろ? だったら大人しくしてな」
「鳴戸おやぶん!!」
 龍宝の大声に、ぴくりと鳴戸の手が動きそして止まる。
「俺……こんな親分に抱かれたくない。いやです。……いつもの、おやぶんがいい……」
「龍宝……」
「なにがあったかは知りませんが、今の親分は普通じゃないです。なにか、あったんですよね?」
「無いさ……何にもない。ただ……」
「ただ、なんです?」
 鳴戸は答えなかった。ただ、なにか言い淀んでいるような苦しそうな表情を浮かべ突然ぎゅっと身体をきつく抱かれてしまう。
 骨が軋みそうなほどに強く力を籠めて抱いてきて、息をするのも苦しいほどだ。
「おやっ、ぶんっ……!」
「龍宝……!!」
 なにかが鳴戸の中で荒れ狂っている。それがなにかは分からないが、自分のこと絡みだということは分かったので、抱擁に応えるつもりで龍宝からも腕を伸ばし鳴戸の背に回してしがみつく。
「俺は、ここにいますよ親分……ずっと親分の、ここにいます」
 ふと腕が緩み、離れてゆく鳴戸を見ると瞳には暗い色を宿し、不安げに揺れている。何とかその暗い表情を止めて欲しくて、そろっと腕を動かして鳴戸のネクタイを解きベッドに落とす。スーツも肩から落とし、カッターシャツのボタンも上から三つほど外し寛げると男らしく浮き出た喉仏が露わになる。
 ゆっくりと近づき、喉仏を小さく舐めて浮き出た部分を噛むとぴくっと鳴戸の身体が戦慄くように動いた。
 さらにシャツのボタンを全部外し、はだけた部分に手を入れて撫でる。
「熱い……」
 鳴戸の肌は汗をかいているのかしっとりしていて、いつもの鳴戸が持つかおりよりも濃いにおいが鼻に届く。洗練された大人の男のかおりだと思う。
 いつも鳴戸は龍宝のにおいを嗅ぐと甘いにおいだと言って茶化すように笑っていたが、龍宝にしてみると鳴戸も充分甘いにおいだと思う。
 もっと感じたくなり、首元に鼻を埋めすうっと鼻で息を吸うと一気に鳴戸のにおいで鼻腔がいっぱいになり、その優しいかおりにうっとりとしているとさらに先が欲しくなり、小さく舌を出して肌にキスを落としながら舐めてゆくと、肌も鳴戸の味がして心地がいい。美味しいと思う。どこか香ばしくて甘く、クセになりそうな味だ。
 思えば、こうして積極的に龍宝からこういったことを仕掛けたことは今日が初めてだ。鳴戸は成すがまま、黙ってされるままになっており、少し淋しく思ったが止めたくはなかったのでさらに範囲を広げて肌を愛撫する。
 手を肌に這わせ、撫で擦るとすぐに手のひらが熱持つようになりその熱さを感じながらさらに脇腹から胃の辺りを撫でるとぴくぴくっと鳴戸が僅かに動く。
「龍宝……」
「なんでしょう。あの、親分は熱があるのでは? 肌がすごく熱い……」
 すると撫で擦っていた手を手首を強く掴まれることで止められてしまい、思わず鳴戸を見るとやはり、瞳には欲情の火が宿っていたが、それよりももっと暗いなにかがちらちらと見えるような、そんな目をして龍宝を見てくる。
「おやぶん……? 大丈夫、ですか。もう寝ますか?」
「……酒が飲みてえ」
「もういけませんよ。酒は今晩は終わりです。さあ、もう今日は寝ましょう。俺も隣で寝ます。もういい時間ですし」
 鳴戸は黙ってしまい、目線はベッドの一点を見つめているだけだ。
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