うたかた

 夢中になってしゃぶりつくしたところでとうとう鳴戸ストップが入る。
「よーし、もういいぞ。これ以上されたらイっちまう。お前ン中ブチ込む前にイったらつまんねえからな。イイコだから離しな」
「ん……もう少し、おやぶんの助平な汁ください。あとちょっと……」
「聞き分けのない子はきらわれるぜ。いいから離しな。怒られてえか」
「……ケチな人は、きらわれますよ」
 暫くそこで二人は黙り合い、じっと互いを見つめる。鳴戸の目には確かな欲情が宿っており、きっと龍宝も同じような眼をして鳴戸を見ていることだろうと思う。
 龍宝は自分が折れなければこのままだということが分かり、仕方なくしぶしぶとペニスから手を離すと徐に手招きされる。
 不思議に思い、身体を伸び上がらせて鳴戸の上に重ねるようにして身体を置くと、両頬を手で包み込まれ優しいキスが降ってくる。
「ん……んん、おや、ぶん……」
 ちゅっと音を立てて唇が離され、額と額がこつんとぶつかり合う。
「あのな、必要以上のことはしなくていいんだって。さっきも言ったが、俺はお前を金で買ったわけじゃねえし、商売女みてえなそんなことをさせたくて抱いてるわけでもねえ。いくらお前の希望でも、聞けねえ訳ってもんもある。分かるか? 俺の言っていること」
「なんとなく……で、でも、親分には思い切り気持ちよくなって欲しいんです。俺は男だから……女みたいに便利じゃないですし、親分がソノ気になってくれるだけで嬉しいから、だから」
「ちゃんと勃ってるだろ。お前がしゃぶってくれなくても俺は勃つ。それは、お前が欲しいから勃つんであって、お前を女と思ってはいねえよ。寧ろ、お前が俺でなくちゃいけないように、俺もお前でなくちゃ勃たねえっての。これくらい言えば分かるか?」
 その言葉に、またしても口元を震わせる龍宝だ。そのうちに涙が湧き上がってくるが、必死で我慢していると鳴戸の親指が目尻に当たり、ぎゅっと押して払われる。そしてまた降ってくる優しいキス。
 夢見心地で受け止める龍宝だ。
 鳴戸と交わすキスはいつだって、龍宝を温かな気分にしてくれる。そして、幸福にしてくれる。角度を変え、何度も唇に押し当たる鳴戸のソレは熱くそして柔らかくて湿っている。鳴戸が生きている確かな証拠だ。
 息をして、自分の意思で龍宝に施すそれは長い間、鳴戸に片想いしてきた龍宝をいわば救ってもくれている。誰かに言われてするのではなくて、鳴戸の意思でそういったことをしてくれているということが尊いのだ。
 思わずまた目尻を湿らせてしまうと、ちゅっと音を立てて唇が離れてゆき至近距離で見つめ合うと目の前の顔が緩み、苦笑いに変わって親指の腹で目尻を拭ってくれる。
「お前は、俺のことになると途端、涙もろくなっちまうんだな。そういうところもさ、かわいいんだけどよ」
「鳴戸おやぶん……」
 甘えた声を出し、鳴戸の頬へ自分の頬を押し当てて擦り寄る。後頭部に手が宛がわれると優しく撫でてくれ、髪を梳かれる。
「かわいいなあ、オマエは。本当、かわいい。男に対してもそうだが、女に対してもこんな感情持ったことなんてなかったのに、不思議なもんだ。さて、龍宝よ。落ち着いてるとこ悪いが、そろそろ先へ進むか。尻ゆるゆるにしてやらねえとブチ犯してやることもできねえ」
 その言葉に、龍宝は顔を真っ赤にするがすぐに立ち直り顔を横に向けるとすぐ傍にある耳を柔らかく食み、ちゅっと吸った後何度も赤くなった耳に口づけを落としながら言葉を紡ぐ。
「俺、あの買って来たんです。旅行の前に……」
「なに買ったんだ。酒かなんかか。シラフじゃできねえってそういう意味?」
「違います! 違いますよ……その、ローションを。ちゃんとした、そういう意味で使うためのローションが、鞄に入っていますから」
「お前ローションなんて買ったのか! そりゃまた……一体どんな顔で買ったんだか見てみてえもんだな。そのキレーな顔して買ったのか」
「俺にはこの顔しかありません! だって、いつも親分は無茶したものしか使ってくれないですからこれはもう、自分で調達かなと思いまして。……仕方なく」
「ふうん、分かった。鞄の中な。俺ちょっと取ってくるけどいいよな?」
 顔を赤らめ、こくんと頷き鳴戸の上から退くと徐に全裸のまま布団から離れてゆき、鞄の中を探り出す。
「ローションってこれか? これだよな」
 そちらを見ると、確かに鳴戸が持っているのは龍宝が買って鞄に忍ばせておいたものだ。しかし、そのボトルを見た途端、急に羞恥心が湧き、掛け布団の中へ潜ってしまう。
 するとがばっと布団が勢いよく捲られピタリと後ろに鳴戸が身体をくっ付けてくる。そして、うなじに顔を埋められ、片手が身体に回る。
「何だよ、急に照れやがって。今さらだっつうの。お前のカラダなんて隅から隅まで知ってるよ。そら、こっち向け」
「や……無理、です。なんか、すごく恥ずかしくて……無理」
 鳴戸から逃げるように布団の上を泳ぐと、身体に回っていた手があごを捉え、強引に後ろに向かされてしまい、少々乱暴に口づけされ唇を何度も舐めてくる。
 つい癖で口を開けてしまうと、するりと鳴戸の舌が咥内へと入り込みナカを探ってくる。その舌も熱く、口の中が火傷してしまいそうだ。
 後ろからさらにくっ付けてくる身体も同じように熱く、その熱が移ったように龍宝も思わず身体を熱くしてしまう。

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