眠らない夜を演じて

 カウパー液のぬめりを利用して、人差し指と中指の間で亀頭を挟まれそのまま先端だけを扱かれるという何とも器用な責めが意外とクることを知り、半狂乱で善がる龍宝だ。
 絶頂はもうすぐそこに来ている。
「うあっ、あああううううっ! イック、イック、イックううううっ、ああっあっあっあー!! あああううう、イック、ああああ気持ちイイッ!! い、い、イクッ……!!」
「いいから、イっちまいな龍宝! なに我慢してんだ、らしくもねえ。イっちまえよ、こうすればイクか? んっ?」
 手のひらで亀頭を包み込まれ、大きく撫で回されたくると、とうとう限界がやってきてしまう。目の前がちかちかと光り出し、頭の中が真っ白に染まる。
「うあああああ!! あああっあああううううイック、イック、イックううううっ! ああああっあっあっあっ、ああああああー!! イクイクイクイク、イックううううっ!! あああっあっあっ……あああああー!!」
 下半身が爆発したような快感が一気に押し寄せてきて、ペニスがぶくぶくぶくっと膨れ上がり、揺れながらびゅびゅっと腹と鳴戸の手にザーメンを何度にも分けて吐き出してしまう。
 最高の射精に、どっぷりと龍宝は浸り切る。
「はあっ、はあっはっはっはっはっ……い、イった……んんっ、はあっ、きもちいっ……はあっ、おやぶん気持ちイイ」
 息も整わない間に唇が降ってきて、呼吸もままならぬまま深いキスを要求される。鳴戸の両手は龍宝の肩を捉えており、しきりに角度を変えて口づけてきては舌を絡め取られて舐められ、噛まれそして吸われる。
 ふっと唇が離れてゆくと、急に肺に酸素が入り思わず少し噎せてしまうと宥めるように耳を柔く食まれ、首元を舐めてくる。
「んっんっ、おやぶんっ……はあっ、きもち、きもちいっ。あ、はあっイイッ!」
 ふと目が合い、うっとりと笑んで見せると鳴戸も同じように笑んでくれ、下を見ると暗色の下着を押し上げた鳴戸自身が目に入る。
 重い身体を起こした龍宝は、鳴戸に凭れかかるようにして体重をかけて布団へと倒し、下着に手をかける。
「おやぶん……おやぶんの、しゃぶってもいい、ですか……? しゃぶりたい、親分の、おやぶん。今日は先っぽだけじゃいやです」
「だめだ。先っぽだけ。じゃなきゃ、このままねんねの時間になっちまうぞ」
「物足りないくせに」
「なに?」
「親分だって、足りないでしょう……? 俺、ちゃんとできます。や、やれる、はず。その、フェラチオ……。下手かもしれないけど、したいです」
 だが、鳴戸は頷かず龍宝の意気込みを宥めるように優しく頭を撫で髪を梳いてくる。
「ごめんな、龍宝。気持ちは嬉しいんだけどよ、やっぱさせたくねえ。これは、男としての俺の意地みたいなもんだ。お前には、そういうことをして欲しくねえって気持ち、分かってくれねえか」
「おやぶん……そう、ですか。分かりました。でも、先っぽならいいんですよね? 先っぽだけでもいいから、愛してあげたい。鳴戸親分の……」
 今までで分かった、鳴戸の弱い龍宝とっておきの上目遣いで鳴戸を見ると大きな溜息を吐いた後、苦笑しながらくしゃくしゃと髪を梳いては握ってくる。
「お前にそこまで言われちゃ、もうそりゃ仕方ねえわな。んじゃ、先っぽだけな。言っとくが、それ以上、口に入れたらアウトだぜ」
「分かりました、じゃ……先っぽだけ」
 下着に手をかけたところでふと、思い立ったことがあり身体を伸び上がらせて鳴戸の引き締まった身体を撫でる。そして、少し勃った乳首をぷちゅっと口に含んでみると、そこは鳴戸の濃い味がしてちゅっちゅと吸って尖らせた舌先で乳首を突いたところで思い切り顔を横に退かされてしまう。
「こらっ! 何してんだ、触るのは下だけだろうがっ! 俺はそこは感じねえの!」
 しかし、龍宝は意地になってまたしゃぶりつくと今度はぺんっと頭を軽く叩かれる。
「止さねえかっ! まったく……先っぽもだめって言われてえのか、お前は。このエロ小僧め!」
「んっ……だって、親分も気持ちイイこと好きでしょう? だったら、俺だって親分を気持ち良くしてあげたいと思うのは不思議なことでしょうか」
「あのなー、俺はお前にそういうことは望んでないんだって! 商売女がするような真似すんな! 俺は、お前がお前のままでいてくれてそいつを抱きたいんだって、そういうことを言ってんだ。媚びた真似なんて、する必要はねえよ」
「でも……」
「でももヘチマもねえ。俺が抱いてんのは金出して買った龍宝じゃねえんだ。ただの俺を慕ってくれる、お前でいて欲しい。それが、俺の願いだ。分かってくれるか? 分からねえんなら、もうここで止める。おねんねタイムだ」
 その言葉に、龍宝は口元を震わせる。
 こんなに大切にされていたとは、知らなかったというのが本音中の本音だ。好きな人にここまで言われて、悦ばない輩がどこに居ようか。
 思わず瞳に涙を溜めると、鳴戸の手が頬に伸び目尻を親指で拭ってくれる。
「泣くな。今は泣いてる時じゃねえだろ」
「おやぶんっ……! 俺はやっぱり、誰よりも何よりも親分が好きですっ……! 大好きなんです。もうずっと、ずっと前から、昔から俺はあなたをっ……!」
 鳴戸の胸板に顔を埋め、心からの告白をすると頭をこれ以上なく優しく撫で擦ってくれる。その手つきにも、感動し涙が溢れてくる。
「ありがとな、龍宝。嬉しいぜ、俺は」
 首を何度も横に振り、唇を噛み締めて幸福を実感する。
 好きになったのが鳴戸で良かったと、何故か思える。直接的な愛の言葉をもらったわけでもないのだが、この手つきでなにもかもが透けて見えるようだ。
 鳴戸の、心さえも。

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