48時間だけのバカンス

 しかし、鳴戸はすぐに酒を飲まず隣に座る龍宝の手をぎゅっと恋人繋ぎで握ってくる。
「おやぶんっ! いけませんここでは、小島が怪しみますからっ……!」
「あー? べつにいいじゃねえか。それにこいつは口が硬くて有名でな。だから運転手に任命したわけだ。そういうわけで、こういうこともできる」
「こういう……?」
 繋いでいた手を引かれ、持ち上げられると鳴戸が覆いかぶさってきてあっという間に距離を詰められたと思ったら、口づけされてしまい慌てて手を振り解こうとするがさらにぎゅうっと握ってきて、思わず握り返してしまうとぺろりと唇を舐められる。
「んっ……ん、んっ……!」
 人前だということもあり、どうしても抵抗の心が強くなってしまい、空いている片手で何とか鳴戸を押しのけようとするが酒瓶を手放した鳴戸が、本格的に口づけてきて龍宝の足を跨ぎ覆いかぶさる形で角度を変え、キス責めにされてしまう。
 何度も唇に柔らかで湿った、温かな鳴戸の唇が押し当たることでだんだんとソノ気になってきてしまった龍宝はそっと、口を開いてしまう。
 すると、するっと唾液を纏った鳴戸の舌が咥内へと入り込んできてナカを大きく舐められる。
「んっ、ふぅっ……んっんっ、ん……」
 思わず漏れてしまう啼き声。突っぱねていた片手はいつの間にか鳴戸の首へと回してしまい、ぎゅっと目を瞑って入り込んできた舌と舌とを絡め合わせ、柔く噛み合う。
 今日の鳴戸の温度はさらに熱いと思う。咥内が焼け爛れそうだ。そんな思いを胸に、しきりに舌同士を擦り合わせては唾液を啜る。
「んっんっ、ふっ、はっ……は、はぁ、んっ……んん」
 ふっと唇が離れてゆき、濡れた目で鳴戸を見上げるとこくんと目の前に位置するのどが鳴ったのが分かった。
「エッロいツラしやがって。もっと欲しくなるだろうが」
 握られた手もそのままに、誘うように空いている片手で鳴戸の首を性的な意味を含め撫でると、徐にネクタイを緩められ、ボタンも三つほど手際よく外されたと思ったら吸い付いてくるそれに、目を細めて愛撫を受け止める。
 鳴戸の唇はやはり熱く、触れられた部分が熱持つのが感じられた。そしてぢゅっと音を立てて吸い付かれ、痕が残されたことを知るがもはや毎回のことなので気にしないようにしてそのまま、首を撫で続け握っている手に力を籠める。
 すると今度は喉仏が柔らかく食まれ、呼吸が少し難しくなるが微量の快感が伴うそれに思わず「はあっ……」と熱い溜息を吐いてしまう。
 流されて行っているのが分かる。だが、それは分かっただけに終わりさらにボタンが外され、ずぼっとシャツの中に手が差し入れられる。
「んあっ! あ、あ、おやぶんっ……そこ、そこはっ……」
 肌に、熱い手が這い回る。思わず身体を震わせてしまうと、首元を食まれ少し歯を立てられるがそれも、充分な愛撫だ。
「お前は、美味いな。肌が美味い。……甘ったるいにおいさせやがって、興奮してきちまった」
「だめ、ですよ、おやぶん……」
「声はそう言ってないぜ。甘い声だぜ、龍宝。誘ってやがんのか」
「んっ……ちがいますっ、運転手が、小島が……」
「そんなのはほっとけ。いいからお前は啼いてろ。楽しくなってきやがったところだぜ?」
「や……おやぶんっ……! はあっ」
 首を背けると、筋の立った部分へ歯が突き立てられ許さないとばかりに少しきつく食い込むそれに快感を覚え、熱い吐息をつくと丁寧に歯形がついたであろう部分を舐めてくる。
「んっ、はあっ……おやぶん、は、んっ……」
「声が甘いな。いつもよりも数段は甘いんじゃねえの? この状況に感じてるとかそういうことか」
「ちがっ……おや、ぶんが、普段よりも熱いから……」
「熱いから、興奮しちまった?」
 ゆっくりとこっくり頷くと、首元に笑い声の息が吹きかかる。
「かーわいいなあ、オマエは。舐め回したくなるな」
 そう言って、またしても首元に顔を埋めてくるのに身を捩る龍宝だ。いい加減離れないと、そうは思いつつも、抵抗の色が薄くなってしまう。
 何しろ、気持ちイイ。
 こうやって愛されることに対してとてつもない愛情を感じるのだ。運転手の下っ端がいたとしても、今この快感には何物も勝てないだろう。
 そのまま熱い吐息をつきつつ、さらに深みを増す愛撫を受け止める龍宝だ。
 服は半分形を崩し、上半身にいたってはほぼ半裸にされてしまい、剥き出しの肌に熱い手が這い回り、舌は首を中心に所々にキスマークを落としては小さく舐めてくる。
 股間は半勃ち。
 一体この始末をどうつければいいのか。
 膝の上には鳴戸が乗っているし、どうすればいいのか分からず戸惑いの目で首を上に向けると、存外優し気な表情を浮かべた鳴戸と目が合い、頬を赤くしてしまうと柔らかな仕草で頭を撫でられた。
「どしたー? その不安そうなツラは」
「いえ、その……下、したが……」
 言葉を濁して伝えると、得心がいったように額に一つ、口づけが降ってくる。
「それは、ホテルに着いてからな。散々煽って悪いんだけどよ、さすがにここで出してやるのは無理があるな。これ以上下っ端にお前の啼き声聞かれたくねえんだ。ごめんな」
「……優しく、キスして宥めてくれたら……ホテルまで我慢します。……おやぶん、キス……」
「おーおー。おねだりが上手いねえ、鳴戸組の宝、龍宝くん?」
「ちゃ、茶化さないでください! 煽ったのは親分あなたでしょう! ホテルでは……しっかりと焦らされた分、取り返してもらいますから」
「へいへい、分かりました。まったく、かわいいヤツだぜ、お前はよ。キスだな? よし、目ぇ瞑んな」
「瞑ると、おやぶんが見えなくなってしまう……」
「だったら見てな。飽きるまで、ずっと見てろ」
 そう言うと、片手で頬を包まれ柔らかで温かな口づけが降ってくる。
 それを夢見心地で受け止める龍宝だった。

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