幸福を撫でた指先

 この植え込みの中は程よく暗く、先ほどのラブホテルなど眼ではないほどにそういった雰囲気を作り上げてくれるのに、龍宝は鳴戸の施すキスとこの雰囲気にすっかりと飲まれてしまい思わず下半身を反応させてしまう。
 もじっと腰を動かすと、口づけの合間からふふっと鳴戸が笑ったのが分かった。
 悔しくなり、首に回していた手でガリガリと責めるように引っ掻くと唇が離れてゆき、ゆっくりと弧を描く。
「お、親分、おれ……」
「分かってるって。勃っちまったか。ははは、お前若いもんなあ。仕方ねえよな」
「親分が、あんまり優しいからつい、その……」
 真っ赤に染まった顔をぷいと背けるとぷちゅっと頬に唇が当たる。
「ま、この場所は所謂そういう場所だしな。いっちょ、一発出してくか」
 そう言った鳴戸の手は、龍宝の下半身へと伸び遠慮も無く揉みしだいてくる。慌ててその手を止めようとする龍宝だが、鳴戸はさらに強く揉んできてつい、反応を示してしまうがこの場所はさすがに気が咎めるというより、ラブホテルよりも抵抗がある。
「やっ! やめっ、親分止めてください! ここはっ、この場所はっ……! は、んんっ!!」
「大丈夫だって。お前が少し黙ってりゃ気持ちよくしてやるから、大人しくしてな。なに、他人のことなんか誰も見てやしねえよ」
「だとしてもっ……あっ、やっちょっ……! 待っ……!! ああ!!」
 こうして会話している間にも、スラックスを持ち上げて完全に勃起したものを掴み、服の上から扱かれ悶絶してしまう龍宝だ。
「お、おやぶんっ……おね、がっ……止めっ、ああっあっあっ、あ!」
 抵抗する龍宝の手を掻い潜り、鳴戸の手は迷うことなく龍宝のスラックスのベルトを手際よく外していってしまう。素早くベルトを抜かれ、その手はボタンへと伸びあっという間に下着ごと下穿きを膝下くらいまで擦り下げられてしまい、反応したペニスをまじまじと見つめられ、つい顔を真っ赤に染めてしまう。
「やっ……そんなに、見ないでくださいっ……!」
「ほっほー、ガッチガチに勃ってるじゃないの、お前のチンポ。すっげえな」
「み、見ないでくださいっ!」
「見ないでどうやって扱くんだよ。いいから、大人しくしてな。気持ちよくしてやる」
「しごっ……? ここでっ!?」
 もはや会話は不要とばかりに、ぎゅっと亀頭を握られて思い切り上下に手を動かされ、扱き上げられる。
「あっあっ! あっあっあっ!! そ、んな、こんな、とこでっ……あぁ!!」
 根元をぎゅっと握られ、先端部分を中心にかなり力を入れてガシガシと擦られ、痛みがイイスパイスになり、快感が倍増しになる。
 ペニスは正直で、あっという間に鈴口からカウパー液がこぷこぷと溢れ出してきてすぐに扱いているタイミングに合わせくちゃくちゃと粘着質な音が立つ。それがいい潤滑液になっているのか、鳴戸の手はさらに大胆に動き始める。
 両手を使い、撫でるように上から下へまたは下から上へといった動きを何度も行われることでペニスの感度を高めているのか、時折悪戯にタマを優しく両手で包み込むように揉んだり、さらに龍宝を悶絶させたのが根元をがっしりと手で固定し、先端含む亀頭を重点的に扱くように揉まれる手つきだ。それをされると、出したくもないのにあっという間にイってしまいそうになる。
「あっあっ、おやぶんっ、ああっあっあっ! やっきもち、きもちいっ! ああっ、イイッ!」
 思わず鳴戸の両腕をそれぞれの手で握ってしまい、ぎゅっと掴む。それでも手の動きは止まず、どころか激しさを増すばかりだ。
 鈴口からは興奮を後押しするよう止めどなくカウパー液が溢れ出て、鳴戸の手を汚している。大切な人の手を、穢しているという背徳感と快感が綯い交ぜになり、頭の中がめちゃくちゃになってしまう。そして、何も分からなくなってしまいそうだ。
 相変わらず、手は亀頭を中心に動いており、先端を潰すようにしてきつく揉まれる。この、ギリギリ痛いところと気持ちイイの中間をいく力加減がまた絶妙で、思わず龍宝も啼いてしまう。
「ああああっ……! ああっあっあっあっあっ、き、きもちいっ、イイッ、い、イイッイイッ! あっ、おやぶんっ!」
 たまらないといった喘ぎをなんと思ったのか、今度は人差し指と中指の間に亀頭を滑らせるように握り込んできて、また新たな快感が龍宝を襲う。これが、絶妙に気持ちがイイのだ。暫くそうやって責められていると、捻るように亀頭を握ってきてこれがまた気持ちイイ。
 あっという間にやってきた射精感に追い込まれてしまう。
「ああああっ! おや、おや、おやぶんイクッ……い、い、い、イクッ……!」
「未だだろー? まだまだいくぞ」
 すると、初心に帰るように根元に手を置き亀頭を中心に手による激しい扱きが始まる。またしても悶絶の龍宝だ。
 扱かれるたび、くちゃくちゃくちゃくちゃと粘着質な音が立ち龍宝の羞恥心を掻き立て、そして快楽をも掻き立ててくるのに、必死になって鳴戸のスーツを引っ掴む。
「おや、おやっ、おやぶんっ! ああああイクッ! イキますっ、イっちま、うううっ、ああああ!!」
「よーし! お前もだいぶ限界みたいだし、ここらで追い上げといくか!」
 途端だった、言葉通りまるで親指と人差し指で亀頭を挟み抓むようにびちびちと音を立てて扱く、というよりは抓るといった言葉が正しい勢いで亀頭をいじくられ、半泣きの龍宝が啼く。
「んあああっ! あああっ、あああううううイック、イックううううっ!! おや、おやぶ、おやぶんっイクッ! イっちまいます、ああああイックううううう!!」
「おー、イっちまえイっちまえ! イけ龍宝!」
 仕上げとばかりに、ぎゅうううっと亀頭を指で潰されたその瞬間、快感と痛みがスパークし目の前がチカチカするような感覚の後、鳴戸の大きな手のひらに何度にも分けてザーメンを吐き出してしまう。
「うああっ! あああううっ、イってる、イってる、ああああ気持ちい、気持ちいっ! 気持ちイイ、イってる、あああああ!!」
「出るねえ、出るねえ。若いなあやっぱ」
 鳴戸の手を汚している罪悪感と、最高の射精を味わった満足感にだんだんと龍宝は自分の意識が遠いところへ向かっているのを感じた。
「あ、れ……? おや、ぶん……?」
「龍宝? おい、どうした龍宝! 龍宝ー?」
 自身を呼ぶ、鳴戸の声がだんだんと小さくなってゆく。そしてそのまま、幸福を抱えながら龍宝は暗闇へと落っこちるように眠り込んでしまったのだった。

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