一等輝く君に誓う


 年が近いからと、初めてヒース坊っちゃんに紹介されたのは、まだ10にも満たない年頃だった。父と母が旦那様と奥様に仕えているように私も将来彼に仕えるのだと思ったら、胸が高鳴った。両親は、将来もし別の仕事がしたくなったらそれでもいいのだと言ってくれたけれど、他の選択肢なんて、選ぶつもりもなかった。
 
 
「両親がうちの使用人だからって、サラもそうならないといけないわけじゃないだろ」
「嫌ですか?」
「そんなことないけど……」
「私は、ヒース坊っちゃんがいいんです」
 旦那様と奥様も勿論とても素敵な人達で、あの方達の役にも立ちたいと思うけれど、最初に私の心を捕えたのは目の前の彼だった。
「俺はそんな風に思ってもらえるような……」
「あ! そろそろ師匠さんのところへ行く時間では?」
「え。あ……そうだね……行ってくるよ」
「いってらっしゃいませ」
 微かに陰った瞳に気付いて話題を変える。にこりと笑顔を作って背中を見送る。旦那様と奥様が連れてきたあのひとは正直少し苦手だけれど、ただの一使用人である私が口を出すことでもないし、私は魔法使いのことは分からないから……。魔法使いとして生まれたことに引け目を感じているようなヒース坊っちゃんを見ると、どうにかしてあげたい気持ちに駆られるけれど、私に出来ることなんか高が知れている。
 ため息を吐いて仕事へと戻ると、ヒース坊っちゃんとシノさんが話ながら歩いているのが窓越しに見えた。これから、あのひとのところへ行くのだろう。
「……ヒース坊っちゃんはとっても素敵なひとなんですよ」
 さっき言おうとして、言えなかったことば。伝えたら、美しい青い瞳がもっと陰ってしまいそうだったから。……本当は、声を大にして叫びたかった。
 
 もしかしたら……初めて会ったときに感じた感情は、一目惚れのようなものだったかもしれない。会うたびに決意は確かなものになって、城で働くようになってからは、ドジな私を心配してくれるヒース坊っちゃんが安心出来るような、頼もしいメイドになることが目標となった。
 
 賢くて、優しくて、美しい私の主に一生仕えていこうと、心に誓っているの。
 
 (20220726)



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