貴方を飾る香水

※『ラズベリー少女と白線』内山夏さんより書いていただきましたので、許可をとって掲載させていただきます。ありがとうございました!
※Fleur et Papillon『女王に捧ぐ唯一の献身』後。


* * *


私にとって、リリス・スピネットという女性の恋心は、まるで大粒のダイヤモンドのような輝きを放っているようだった。
磨かれた美しさと揺るぎない光。しかし、それは手を加えなくても当然のようにあるし光ではないし、リリスさんが元々持っている資質に甘んじることなく、磨き続けるからこそだろう。

「ヴィルを一番に支えられるようになろうと、今回のジェイドくんの件で痛感して、それで……エミルちゃん?」
「……いえ、本当な似ているなと思って」
「えっと、誰と誰が?」
「ヴィルさんとリリスさんですよ」

似ている、という言葉に、リリスさんはそうかしらと瞬いていた。
惹かれる相手は、全く違う自分に持っていない物を持っている人の場合か、それか考え方や生き方が似ている人という傾向がある。
彼女達の場合は、私の目から見て似ているように感じられた。現状に甘んじることなく己を磨き、奮励の精神を絶やさずに高みを目指そうとするその姿勢。
ヴィル・シェーンハイトという人が誰かを愛することがあるのなら、きっとこの女性しかないのだろうと思わずにはいられない。
――しかし、ジェイド君がポムフィオーレに移ることはないだろうとは思っていたが、リリスさんの居場所を少し引っ掻き回したのは小言を言いたくなるが。

ミステリーショップの中で会話をしていた私たちの元に来店してきた一人の客人の姿を捉えて微笑む。

「あら、探したわよリリス。エミルのところに行ってたのね」
「ごめんなさいヴィルさん。私が引き留めてしまって」

元々妖艶な美しさを兼ね備えるリリスさんが可愛らしい女性としての魅力に溢れるのはヴィルさんの隣に居る時で。
そしてリリスさんが隣に居るときのヴィルさんは、どんな雑誌で見る時のヴィルさんよりも美しく――穏やかに映る。

「またのご来店をお待ちしております。ヴィルさん、リリスさん」

リリスさんがカウンターから離れる時のふわりと香った香水は華やかで、きっと彼女自身が選ぶ物よりも彼女に似合う香りだった。





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