これの続き
※ホモ要素あり(新荒)







学期が変わって、委員会が変わって、今その集まりで隣に座ってるのは件の荒北靖友だった。私の彼氏の新開の彼氏。うわー、すんごい字面だな。何はともあれ新開からの評価はかわいいの一点張りな荒北だけど、その横顔を見る限りかわいいところが見あたらない。目つき悪いし、背高いし、なんか口も悪そうだし。強いて言うなら下睫毛、なのかなあ。わっかんないな新開の趣味。

「お前さァ」

会議が終わると荒北靖友その人に話しかけられた。うひょー、怖。何俺のことジロジロ見てたんだよ、だって。元ヤンだって聞いてたけど、現役じゃん、コレ。背高いし、マジで口悪。新開はこんなのがかわいいと思ってんの。ていうかこんなヤンキーが新開に喘がされてんの。このヤンキーが新開にケツ掘られてるってことだよね?全然想像つかない。

「おい」
「えー、何って、あたしのこと知ってる癖に」
「たりめえだろ知ってるヨ」

うわやば。新開取るなってことかなあ。うーん、それは、困る。新開は私の彼氏なんだけど…ってそれは荒北もそうなわけ?

「怒んないでよ。あたしたちアレでしょ、アナキョウダイ、ってやつ?仲良くしようよ」
「は?それなんか、ちがくなァい?」

ああそっか、共有してるのは穴じゃなくて竿?いやそんなことはどうでもいいや。私は新開の彼氏である荒北にかなーり興味を持っていた。荒北も、私に興味があるようだ。そこで私は、荒北にある提案をした。

放課後私達は仲良く繁華街をぶらついていた。私が自転車部がないのをいいことに荒北と放課後の約束を取り付けたのだ。私がした提案というのが、荒北との放課後デート。デート、ではないけど。荒北は寮生なのにいいのかな、と思ったけどどうやら律儀に外出届を出しているらしい。存外真面目な奴だ。新開に荒北と遊んでくると話したら、快く送り出された。靖友と仲良くしてやってね、だそうだ。

「みょうじさァ」
「んー」
「俺のことどう思ってンの?」

そこだけ切り抜いたらまるで荒北が私のことを好きみたいなセリフだけど、そうじゃない。もちろん新開のことを踏まえて、だ。荒北は私が自分を目の敵にしていると思っているらしい。そう思っていたのは私の方だ。まあ荒北に妬いたことがないと言えば嘘になるが、べつに荒北を目の敵にしたことはないし、寧ろ同じ人間を好きになって同じ人間とセックスしたんだから親近感がある。多分これって少数派なんだろうけど。

「俺ンこと、責め立てるために呼んだのかと思ったわ」
「違うよ。仲良くしたいなあって」
「変なヤツ。俺アイツとヤってんだぜ。キモいとか死ねとかねえの」
「ないよ」

荒北は困ったように頭をかいた。本当に悪いヤツじゃないらしい。しばらく話して、新開がかわいいというのも分かる気がしてきた。どう見てもヤンキーだけど、根はわりかし素直な方らしい。私の方がよっぽどひねくれてるわ。あと荒北がヤられる方なのもなんとなく想像がつくようになった。それから私にわき起こってきた不埒な欲望がひとつ。荒北とセックスがしてみたい。

ちょうどラブホ街はすぐそこだった。お互い私服で、手持ちもある。私はちょいっと荒北の服を引っ張った。ホテル、入ろ。荒北は完全に面食らった顔をしていて、私はそれをかわいいと思う。荒北が寮がどうのと口ごもった。大丈夫、門限までには帰れるよ。私の言葉に荒北が唾を飲んだのがわかった。荒北べつに、女もイケるんだ。男しか無理なら諦めるつもりでいたけど。

「でもさお前、新開が」
「何言ってんの、今更アイツがどうこう言える立場じゃないでしょ」
「お前は、いいのかヨ」
「あたしが誘ったんだんだよ?」
「それは、」
「これくらいいいよ。新開がどう思うか知らないけど、新開はあたしとあんたの両方とヤってるんだからさ、隠しもしないで。つーか黙ってればいいじゃん?」

完全な御託だったけど、荒北は乗せられてくれた。やっぱり、いっつも女役だとたまにはツッコみたくなるもんなのかなあ。そうと決まった瞬間鋭い獣の目に変わった荒北を見てそう思った。

「お前が言い出したんだから、もう知らねェよ」
「うん」

シャワーを浴びて出てきた荒北が言った。すごい念押ししてくるなあ、ほんとは真面目なヤツなんだ。私の方がよっほど不真面目で、ふしだら。
にしても濡れた髪がよく似合う。ほんの少しどきりとした。なかなか、いい男じゃん。私はシャワーを浴びながらさっきの荒北の姿を思い出していた。一緒に過ごせば過ごすほど、荒北の几帳面さと律儀さを目の当たりにするのが新鮮で私はかなり楽しんでいた。

「オイ」

勢いよく蹴られたシャワールームの扉。ええっ、さっきまであんたの真面目さとか几帳面さに感動してたんですけど?ボクサーパンツを履いただけの姿で乱暴に濡れた髪をかく荒北を、私はマッパでシャワーを浴びながら呆然と眺めた。

「早くしろよ」

がん。鈍い音を立ててシャワーヘッドがタイルに落ちた。そのまま壁に体を押しつけられて乱暴なキス。お湯は出しっぱなし、せっかく拭いた荒北の身体もパンツごとびしょびしょじゃないか。私マッパだし。いやこれからどうせマッパになるからいいんだけどさ。にしても今日の几帳面さとか律儀さはどこいったんだ。やけに性急だ。満更でもないけど。

「せめてベッド行きたいんだけど」
「時間ねェからここでいいだろ」
「まあいいけど…こんなところでヤるのはじめてだし」

どうやら門限を気にしているらしい。やっぱり律儀だった。私はそんなことどうでもいいんだけど。門限破ったらなんかあんのかな。
荒北はそこそこ手際がよくて、新開ほどではないがうまかった。なにより同じ男とヤったものどうし、というのが新鮮で興奮を誘った。荒北に突かれながら私は思うのである。これであんたたちもホントに穴兄弟だね、今どんな気持ち?新開さん。