8.悪夢
「おいセナ!わかってんだろうなぁ!?」
むさ苦しい匂い。
汚らわしい体。
じゃらじゃらとうるさいピアスとネックレス。
「わかってる」
「金だよ金!俺は金さえありゃお前なんてどうでもいいんだよ!」
「きゃっ…」
やめて。
その汚らわしい手で私を殴らないで。
私は、なんでこの男を愛し、信じたのだろうか。
「お前は俺の下僕だ」
私は、なんでーーーーーーーーーー
「っ!!!?」
ばっと飛び起きて気づく。
窓から入るのかすかな日の光。
心地のよい小鳥のさえずり。
窓から見える今起きたであろうグレイの姿。
それをみて私は確信する。
ーーあれは悪い夢だったんだと。
「セナ!ご飯よ!」
リビングからお母さんの声が聞こえる。
私は適当に返事をし、カーテンをしめ制服に着替える。
着替え終わり、カーテンを開けるとグレイがこっちを見ていた。
「おはよう。なに?こっちなんか見て。」
「おはよ。んー。なんかお前が、険しい顔をしてたから」
「……」
グレイに嘘が通じないのはわかっているのだが、言いたくは、なかったから、
「なんでもないし!じゃ私ご飯だから!」
と言い残して、その場から立ち去った。いや、逃げた。
「なんでもない、ねぇ……」
セナがいない部屋を眺めながら、グレイは呟く。
「ナツ…か…"あんなヤツ"じゃなきゃいいが…」