珍しくグレイと二人で仕事に出かけた。 洞窟の中の魔物を討伐してくれという依 頼で、魔物は楽に倒したんだけど。 魔物は闇ギルドが操ってたらしく、闇ギ ルドが現れて。 戦ったけど、相手の魔法で薄い壁を作ら れて、あたしとグレイは離ればなれ。
「…ねぇグレイ」
「…あ?」
かろうじて声は聞こえるものの、触れる ことはできないし壊すこともできない。
闇ギルドの連中はまだ洞窟の奥のほうで 実験をしているらしい。
「これからどうするの?」
「闇ギルドの連中をぶっ飛ばす」
「はっ!?」
洞窟の出口に通じる道にはあたしがいて 、壁をはさんで闇ギルドがいるところに 続く道にはグレイがいる。
ということは、つまり。
「あんた一人でぶっ飛ばす気!?」
「あたりまえだろ」
「無理に決まってんでしょ!?相手は闇 ギルド一つよ!」
「大丈夫だって」
大丈夫なわけない。 相手はざっと50人くらいで、しかもグレ イは魔物との戦いで負傷している。 そんなの、一人でいったら、
「やめてグレイ…!かなうわけないよ… 」
「…じゃあさ、ルーシィ」
薄い壁が少し軋む。 トン、とグレイは壁に背中を預けると、 ぼそり、と呟いた。
「…俺が戻ってくるまで、ずっとここに いてくんねぇかな?」
「…え」
それは、どういう意味だろうか。 あたしとグレイは付き合っていない。 あたしは、グレイのことは、気になって は、いるけど。
「俺、やっぱお前がいないとだめ、だし 」 「な、」
「…だから、待っててくれないか?」
あまりにもグレイが切なくいうから、 あたしの瞳から、涙があふれでた。
「あた、りまえ、で、しょっ」
「泣くなよ…」
「その、かわり、帰ってこな、かったら 、責任、とりなさいよねっ」
「…なんの?」
「あんたを、好きにな、った、ことよっ 」
その時、くくっと、壁越しに笑い声が聞 こえた。
「なんだルーシィ、俺のこと好きになの か?」
「あっ、ちがっ」
「ちがうのか?」
「ちがっ、わない、けど、」
「…俺も好きだぜ」
え、と、言おうとしたら、グレイはすで に走り出していて、
「すぐ戻る」
そう叫んで、洞窟の奥に消えていく。 あたしは、色んな感情を抱きながら、大 好きな彼の背中を、見送った。
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セリフ「責任、取りなさいよ」
薄い壁を隔てて
グレル祭提出作品
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