※捏造鉄道員がでます。



部屋の中にいたポケモン達をモンスターボールに戻し服も、
前の体の時にはしっかりとしていた服を着てみるが少しだけゆるい。

「随分と広いですね…」
「ポケモン達がノビノビと暮らせる環境は当たり前ですので」
リビング、まるで4人くらいの人間が軽く
快適に過ごせるようなスペースだ。
あんまり客人が来ないのと
元々が整理整頓を軽くこなしていた優太郎だからかキレイである。
とりあえずというようにもって来た紅茶をテーブルにだした。
ノボリは座り、優太郎も対面に座った。

「で、わたしはどうすればいいですか?」
「クダリとも考えたのですが、貴方の名前でもう一度
入社していただきます。つまりは前は男装して入社していた、と」
「…無茶ありありじゃないですか」
真顔な上司(といっても年下なのだが)に言葉が乱暴になりつつある。

ってか何だって?男装してました、っていうライトノベルみたいな
ご都合のいいファンタシーなことを言えというのか…
20代も終りそうな男にそういうか。
「(そんな腐った設定なんて絶対ごめんだ)」

でも立派に20年以上も男性をやっていた男が
何でかしらず、女になっているのだ。
夢でないことも事実、科学的に証明をしてもらうしかない。
ブルブルと考える故奮えている優太郎に気が付いたのか
ノボリもいつもの表情…だがティーカップを手にし言葉をいったのだ。


「大丈夫です。貴方のことは全力でサポートします」
「…」
「勿論、優太郎…貴方の嫌ではなかったらの話です」


嫌、だなんて言えるわけがない。
おじとおばにも迷惑なんてかけたくない。
かといってトレーナーカードさえも使えなければ
じゃあ自分は一体ダレ?という存在自体が否定されていることになる。
それだけはごめんだ。
優太郎の頭には、もうこれしか方法がない、そう思って立ち上がった。



「行きましょうボス。その提案でお願いします」
「…わかりました。」

ああ、なぜか初めて女性になってからのイチニチが
突然始まろうとしていた。










バトルサブウェイでは不思議な光景を見た気がしたと
鉄道員、それにポイント交換受付所の女性たちも
驚きを隠せなかった。
黒い制服を着ていて笑う顔なんて見せないノボリと
隣に居るのは黒い制服に反して白い制服の笑顔の男ではなかった。
ターコイズブルーの、まっすぐな髪の毛に黒い瞳の女性。
なんかそわそわしつつも恥ずかしいのか
下をうつむきながらも一緒に歩いているではないか。

「(きっと迷子のお嬢さんじゃない?)」
「(そっかな?意外にどこかのご令嬢?)」
ひそひそと囁かれる噂は、どこまでいってしまうのだろう。
しかし、関係者以外立ち入り禁止の場所へと、二人は消えてしまった。




「サイズはぴったり!急遽作って貰ったけど
なんとなかった!」
「…これは」
「制服ですが女性用はなかったので、知り合いに
見繕っていただきました」
「!」

じゃじゃーんと白いほうの制服を着ている男が見せて
くれたのは自分がいつも出勤できている制服。
着て見て!といわれ、とりあえず着てみて彼らの前にたってみた。
男性だった優太郎には少し違和感があったみたいで、でも
ノボリの言った言葉に納得をした。少しだけ変わっているらしい。
自分の部屋の部屋着よりも、しっくりと来易く
少しだけほっとする。
そう、ほっとしていると目の前に影ができた。
…ノボリが何かをもって目の前にたっているのだ。

「頭のサイズは変わっておられないと思いますので…どうぞ。」


そっと頭に乗っけられたのはここの鉄道員を証明する帽子。
それに、白い方の車掌でもあるクダリはにーっと笑って
何かを渡してきた。
「ノボリから言われたもの。今日来たばっかりのトレーナーカード」

はい、と渡されたのは生きていくのに必要なカード。
写真は後日提出すればいいのだろうか、写真の欄には
なにも写っていない。


「後で事務にいって提出してね!全部ノボリがやってくれた!」
「…お、お手数おかけします」
「大丈夫です。お気になさらず」
笑っていないが、この男は、意外にも面倒身がいいらしい。









それから、他の人への説明が大変かとおもったらそうでもなかった。
なにせ…前から優太郎は静かに、ただ職務をこなしていただけだからだ。
「(同期もいないし、仲間と御飯とか付き合いなかったから…)」
普通に生きて行けば、トラブルなんて巻き込まれないし
そういう選択肢を突き進んでいた結果がこれだ。
間違いなんてない…そう、あの日から思っていたことじゃないか…

一応一通り自分が「あの時の優太郎」というのを説明し終えた後
鉄道員達が集まってくる。
やはり、不思議な感覚だ、ほぼ皆自分をあまり気に留めて居なかった
のだとわかる、ほんとに?という好奇心の視線も見えてくる。
そんな中、ざわっと声が上がった。
何かと思うと、ノボリから声がかかっていた。

「…貴方には今回シングルトレインの20両目に配置をお願いします」
「…それって」
「それでは解散です。」
「うん!本日も安全運転でね!」
クダリが笑ってそういうと散らばる駅員たち。

しかし、シングルトレイン、しかも丁度20両目の前
ということは珍しい配置だ。
「今日はお客さんが多いからな、でもアンタすごいわ」
「…え」
「だって優太郎って車両履歴みたら結構前やんか?あ、自分は
クラウドな」
改めて言われた緑色の鉄道員の着ている男はにかりと笑った。
年齢は優太郎が男だった時と同じ位か、少し下だろうか…
関西弁の男がいたようないなかったような…優太郎の意識もはっきりとは
していなかったようだ。

「しっかし、可愛い嬢ちゃんやったんな!あんまり気がつきも
せんかったけど」
「…そうですね。」
「…さ、初20番代の車両や。ポケモン厳選しいや!」
ぺこり、とりあえず頭を下げて優太郎は言葉もままならないまま走り去って行った。




「(でも、ターコイズブルーの髪の毛に黒い瞳…)」
特徴のある髪と瞳、黒い方のサブウェイマスターの女バージョンみたいな
顔をしていたな、なんてクラウドは思いながらも
自分の持ち場へと戻っていったのである。





2012.09.09

クラウドさんの関西弁に当時の私には衝撃がはしった。


prev next
bookmark back


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -