2003/07/31
AM10:00



中学生、後の夏休みはどうやってすごそうかと考えていた。
夏の日差しが学生でもある自分達の体力を奪っていくのが
分る気がする。
みつきはゆっくりと深呼吸しながらも持っているミネラルウォーターの
飲み口に唇を乗せ一口飲むとキャップを閉め「よし!」と意気込みをかけながらも
白いビルに足を運んだ。
白いビルの中にある壁には「受験必勝!」や「夏に挑め受験生!」と
応援というよりも脅迫文に見えてくるのは気のせいではないはずだ。

目の前にいるメガネをかけている男の子がそのポスターをみて
胃が痛くなったのかお腹に手を置いてほぼ蹲っていた。
その間にも夏期講習に来ている受験生達が中へと進んでいく。
みつきもそうならないように、と心に決め一回目をつむると意を決して
中へと入っていった。






赤坂みつき、ただいま灰色の受験生である。









応援、そして始まり。







「お台場中学校で試合してるんだって!」
「うそっ!」
「あの有名中とお台場中ね・・・」
教室へと入っていくとみつきの耳に届いたのはこのニュースからだった。
机に座るとさっきその話題に触れていた少女達の席の近くに座ると
まだ話し声が聞こえる。
「あれでしょ?エースの八神くんが出てるんだよね?」
「うんうん!たしか・・・太一くん!」
「あの人か〜、」
お、太一の話題になってる。

みつきの興味が最も惹かれる部分でもある。
八神太一、みつきと同じ中学3年生で灰色の受験生なのにも関らず
サッカーダイスキな少年だ。
みつきも今もサッカーを続けている為かお台場中の練習相手の有名中学も
聞き捨てならない、たしか、中学生にしてはハイレベルなサッカーをする場所だ。
「(あっちにもかっこいいエースいたと想うんだけど・・・)」
そっちは触れないのか?とか想いつつもみつきは机にノートとテキストを
出すがまだ耳は少女達の話声に耳を澄ましている。




「・・・」
確か、誰か言ってたよね。
『時として勉強よりも大切な事がある!』って・・・
まぁそれは・・・言い訳にも聞こえるけど・・・
「(いいか、見に行こう。)」
出したノートとテキストをしまいみつきの妙なウキウキ感が出てしまっていた。








お台場中学校では接戦な試合が展開されていた。
暑い太陽の中、走って走って、ボールを追いかけて・・・
やっと一点取ったかと思ったらまた相手側が追加点を下す。
それの攻防戦を目の前に小学生の集団が一組がいた。
「いっけぇ!太一せんぱーい!!」
大声に乗せた応援にひときわ目立つ。
応援の声を上げた少年は手を上げて全力で応援している。


その応援に来ていたのはお台場小学校の6年生:本宮大輔を中心に
6年:高石タケル・太一の妹のヒカリ。
小学4年の火田伊織・今年からお台場中に入った井ノ上京。
そして違う学校だが一乗寺賢もやってきていた。
「大輔、色々な意味で迷惑だ。」
ちゃんと注意しなくちゃ、と賢が言うが熱血タイプの大輔には聞こえないのは
わかってはいる。だが、賢はちゃんという子なのであった。

「まっ大輔くんは太一さんの事になるとすごいからね。」
と笑ってヒカリや皆にいうのは帽子を被っているタケルだった。
「そうね。」と隣で笑っているのはヒカリで
「まったくね」というのは京、正直あきれて物もいえない様だ。
「大輔さんは疲れないのでしょうか・・・」とちょっと心配の声を
残した伊織。
「つーかな!あっちは有名中なんだよ!応援でも負けられねぇ!」
みんなの声につられて大輔の声があがる。








「タイム!」
休憩になると太一はゆっくりと歩き出していて自分の部活の後輩達に
声を掛けながらも大輔達の元へと足を歩かした。
汗がだくだく出てきてユニフォームの下に来ているシャツが汗で
びっしょりだと感じた。
足が重いのは久々に本気になったからだろうか。
そんな事を考えているとタオルが目の前に出された。
「先輩!タオルっすよ!」
「サンキュ大輔!」
大輔だった、なんでかタオルは誰かを連想させていたが声に出すことなく
タオルを受け取るとまた目の前にレモンウォーターが出された。
これはヒカリだろう。
妙な妹の気遣いに感謝しつつ太一はタオルで顔を拭きながら左手を出した。
「サンキュッヒカリ!」
「・・・」

あれ?

手を出しながらもヒカリからのレモンウォーターが手に乗っからない
ことに太一は不思議さを覚えた。
しかも、妙にタオル越しだがかすかに大輔が慌しい声をだしている。
・・・予感は的中した。
「ヒカリちゃんじゃなくてごめんね太一くん。」
「!」
その声に驚きを隠せなかった。
いつもは呼び捨てにするのにクン付け、妙に語尾に怒りを
感じたのが分った。
彼女だ。
タオルから顔を離して目の前にいるタンクトップでデニムパンツを
履いてキャップ帽を頭に乗せている・・・赤坂みつきを。

「・・・みつき。」
「いいよ、大輔くんに手作りのレモンウォーターあげちゃうから。」
「!ちょっちょっとまった!」

はい、とペットボトルを隣で笑っている大輔に渡そうとすると
太一の手が伸びて見事ペットボトルを太一はゲットできた。
かなり動揺した太一を見るのは久々なのか大輔の顔が驚きを隠せず
みつきはむすくれた顔をしつつ太一とすれ違う時とんっと太一の頭をこつんと叩いて
「負けるなよ、太一。」・・・小さな言葉が太一の笑みを深くした。
太一はごくごくっと勢いよくペットボトルに入っているレモンウォーターを
飲むと靴ひもをもう一度キュッと結びなおした。


「わかってるさ!大輔達、また応援よろしくな!」
みつきも!太一はまたグランドに戻る時にみつきがさっき太一にしたことを
真似られた。
頭をくちゃっと撫でて「勝ってやるから!」とガッツポーズを見せられたのだ。








「・・・・みつき先輩と太一さんって結構わかりやすいわね。」
ぽつりという京にびくりとみつきの肩が上がった。
このグループの中でも最年長でもある京はこれでもお台場中にいる訳ではない。
太一とみつきはいい友達と見えるが結構お熱い恋人同士なのだ。
するとみつきはみんなの前で笑うと目の前に人数分のポカリスエットを
差し出した。
「差し入れ。皆いると思ったし。」
・・・みつき、これ以上京の口を閉ざそうとする様子です。





「そういえば・・・」
サッカーの試合がそろそろまた再開する。
太一はFWで前で嬉しそうな、わくわくする顔を見せながらも相手を見ていた。
みつきの言葉をヒカリとタケルは特に静かに、聞いていた。
「また、巡ってくるんだね。」







8/1
それは長い長い・短い夏休みに奇跡を起こしだした冒険。
勇気・友情・愛情・純真・誠実・知識・光・希望・・・
そしてあたしの紋章。







ピー・・・








始まりのホイッスルが鳴った。


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