プロローグ



目の前に広がるのは真っ赤な景色。
見渡す限りの炎、耳を塞ぎたくなる様な悲鳴、泣き声。

安全な場所を探して必死に走った。
途中躓いたのは何なのか、石だろうか、木だろうか。はたまた――

いくらか走った所で振り返る。
追手は来ていない、おそらく逃げ切った。
そう思った途端に足の力が抜けて大きな木を背にずるずると座り込む。


「お母さんっ、お父さん…っ」


もうきっと会えないのだろうと分かってはいても願わずにはいられなかった。
無事でいて欲しい、またあの大好きな笑顔で名前を呼んで抱きしめてほしい。

少女の想いは、叶う事なく儚く散っていくのであろう。

小さく丸まったその少女は、その島のたった一人の生き残りとしてこの先の人生を歩むのであった。