5

その後のことはよく覚えていない。ぼーっとしてたんだと思う。
テンゾウが森に入り術を解除して、それからナルトが行方不明の人たちを連れ戻した。
今日の任務も無事に終わった、任務を終えたっていう感覚は俺にはなかったけど。

阿吽の門を通る直前にナルトは俺が教えたように変化の術でナルト先生の姿になった。
里を出歩く時はナルト先生に変化する、っていうのが任務参加の絶対条件だった。

(忘れてたな…)

ナルトがいることに慣れ始めていたのか、俺は変化したナルトをまじまじと見る。
まだ幼さが残っていたナルトの顔は、よく見慣れたナルト先生顔だ。
俺はそんなナルトを見上げながら、少し前を行くナルトの無造作に揺れている手を少し後ろから握った。

「カカシ?」
「…なんでもない、」

最初ナルトはちっこい先生って呼んでた。でもいつからか俺をカカシと呼んでくれるようになっていた。
ナルトが俺をカカシと呼ぶから、傍から見れば俺達はいつものナルト先生と生徒のカカシだ。でも本当は俺の先生じゃなくて、同じ存在のナルトという人。
それでも俺がここまでナルトに心を許しているのは、この人が年齢や経験が違ってもナルト先生と同じだから。
ナルト先生と同じで、ただ俺と歳が近いだけ。歳が近いならもっと距離は縮まる、そう思ってたのに。
ナルト先生も、ナルトも、どちらも俺には遠い。

(寂しいのか…いや違うな、)

きっと俺はナルトに、ナルト先生に、俺を見て欲しいんだ。
遠いから尚更そう思うのかもしれない。
ナルト先生と恋人同士になれたからと言って、先生の人生の時間では俺と過ごした時間はあまりにも短いものだ。だから、そのナルト先生がどこでどう過ごした時間を知らない俺は、先生の目にちゃんと写っているのか不安になるんだ。
不安だから、歳の近いナルトでナルト先生に近づこうとしている。

(俺ってずるいよな。)

そこまで考えて思考が変わった。
ならナルトは?ナルトはどう思っているのか。

「一楽行きたいってばよ…」
「駄目。」
「えー!!」
「昨日も一昨日もラーメンだったでしょ!」

このやり取りも今では慣れてしまった。
そんな俺達を見て後ろを歩いていたテンゾウがくすりと笑った。何だよ腹立つな。
俺が睨みを効かして振り返ると、ナルトを優しい目で見ていた。

「ナルトも君のように、」

そこから先は聞こえなかった。
例え聞こえていたとしてもその言葉は恐らく俺の不安を大きくするだけだろう。
― ナルト先生もこのナルトのように明るい道だけを歩んで欲しかった。
テンゾウの呟きはそういう意味を含んでいるんだろう、また俺の知らないナルト先生をこいつに見せつけられているみたいで。
俺は無意識にナルトの手をきつく握ったみたいで、ナルトはどうかしたか?って心配そうに俺を見ていた。

(俺を見てる…)

ただそれだけなのに、俺は、

「な、なんでもない…!」

嬉しいなんて、そんなの





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