君の隣に

ヤマ→ナル

朝起きて顔を洗って、鏡に写った寝癖でぼさぼさの頭をうんざりしながら見た。
それから台所に向かって冷蔵庫を覗いた。適当に牛乳を手に取って、消費期限はまだ切れてないことを眠たい頭で確認して、コップに注いだ。
ふぁ…と欠伸をして今日は任務がないことを思い出して、何をしようかと考えた。
― 修行でもするってばよ。
そう言ったと自分では思った。でも、耳に聞こえてきた音は何一つなかった。
言葉を発そうとすればカラカラに乾いた音が鳴るだけだった。

(…声が出ない、)

咄嗟に喉に手を当てた。
でも何度声を出そうとしても乾いた音だけが耳に届いた。
はぁ、と溜息を付いて背もたれに寄り掛かった。

別にこんな事初めてじゃない。昔は何度もあった。
その度にじいちゃんに心配されて、医者に行っても難しいことを言われて俺には分からなかった。ストレスがなんとかかんとかって。
最近は徐々に減って俺も、もう声が出なくなる、なんてことは無くなったと思っていた。
でも ―
「っ、何するんだってばよ!」
不意に階段から突き飛ばされた。咄嗟に振り返ったら、せせら笑う数人の男がいた。
「………………。」
反抗したくても出来なくて、俺はただ黙って俯くことしか出来なかった。
二年半振りに里に帰って来て、成長して、ようやく俺も受け入れられたと思った。
でも、やっぱりそれは俺が一方的に思い込んでいただけだった。

ぽりぽりと頭を掻いた。
今日の任務が休みで良かった、そう思った。
それから少し曲がったカレンダーを見た。次の任務は明後日。
それまでに何とかしないと…。

(どうしようもねぇってばよ…)

今日は誰にも会いたくない。
こんな姿見られたくない、俺の弱い部分を見せているみたいで。
溜息をついてベットにダイブした。もうこうなったら時間を潰すしかない。

それからただ時間を過ぎるのを待った。
いくら時間が過ぎるのを待っても、声は出せなかった。出るのは溜息だけだ。
こんな時にカカシ先生が来たら、俺はどうすればいい?
いつもカカシ先生は勝手に窓から入ってくるし、予定もないのに勝手に俺の家を訪ねてくる。そうなれば、どうこの状況を説明しよう。サクラちゃんやシカマルが来たらどうしよう。
やっぱり溜息しか、出なかった。

(もっかい寝るってばよ…)

ベットに俯せになったまま、俺は目を閉じて意識が離れるのを待った。

 * * *

次に目を覚ますと、それは最悪な状況だった。

「ナルト、」
「……?………っ!?」
「そんなに驚かないでくれよ…」

俺を揺さぶり起こしたのは、ヤマト隊長だった。





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