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ヤマト視点

本当はただの気まぐれだったんだ。
ナルトに会いに行ったのは ―

その日は任務も早く終わり、帰路についていた。
ふと、ナルトの顔が浮かんだ。だから、カカシ先輩ではないけれどナルトの様子を見に行ってみようと思った。
最近気づいたこの想いに、多少頭を悩ますことも、ある。けれど、どこか心地いいんだ。ナルトの隣にいることが。


「ナルト?」

僕は今、任務で様子を見に行けないと嘆いていたカカシ先輩から預かった団子を片手に、ナルトのアパートの前にいる。
返事がない代わりに、鍵があけっぱなしだった。

(無用心だよ、全く…)

僕だから良かったものの、ナルトの無用心さに半ば心配になり半ば呆れた。
ナルトの了解を得ずに部屋に上がるのは少し気が引けるけれど、電気一つ着いてない所を見るとナルトはまだ寝ているようだ。お邪魔させてもらうことにした。
狭い部屋にの窓際には観葉植物が多数置かれていて、思わず目を細めた。ガサツなナルトにも繊細な一面があるのだと、今まで自分が知らないナルトの一面を見たことに、嬉しくなる。
奥の部屋へ行くと、思った通りナルトはうつ伏せになって、静かに眠っていた。
眠っているナルトは普段の行動からは考えられない程静かで、太陽の光に照らされて金糸が綺麗な光を放っていた。
青空を写した様な目は閉じられているけれど、代わりに長い睫毛に目を惹きつけられた。髪の毛と同じく金糸で、男にしては長いし、綺麗だ。
浅く呼吸をしている薄く形のいい唇は薄く開かれている。

(まいったな…)

出来ることなら、このまま。
僕も大概末期らしい。カカシ先輩に文句を言えた立場じゃないのかもしれない。
そっとナルトの前髪を梳いた。あのツンツンと尖った見た目によらず、細い綺麗な髪だ。何度も髪を梳いてみたけれど、全く起きる気配がない。
これはこれで忍として問題だ。

「ナルト、」
「…………」

声を掛けてみた。それでもナルトは起きる気配がない。
少し肩を揺すってみた。

「……?………っ!?」
「そんなに驚かないでくれよ…」

すると、ナルトの閉じられていた目が大きく見開かれた。
螺旋手裏剣の修行のときはいくら揺すっても起きなかったナルトがこれだけで起きるなんて実は警戒心が強いのかもしれない。
ナルトならそこで大声を上げて驚いてもいいのに、ナルトは黙ったまま僕を見上げていた。そこでふと違和感を感じた。

「ナルト?」
「………、」

いくら呼んでも返事をしない。
驚いて起き上がったまま、気まずそうに僕を見ている。
もう一度ナルトの名前を呼んだとき、ナルトの口が「ヤマト隊長」と動いただけで、ナルトの声は聞こえなかった。

「ナルト、もしかして君、」
「…………っ、」

僕の言いたいことが分かったナルトは、俯いてしまった。
ぎゅっとシーツを握り締めて、僕の言葉を待っていた。
どうして声が出ないのか、どうしてそんなことになったのか、聞きたいことは色々あるのに、目の前のナルトを見ると、できなかった。
何かに耐えるように唇を噛み締めているナルトに、僕はどうしてあげればいいのか。
こういうとき、いつもナルトの傍にいるのはカカシ先輩だったはずだ。

「何も聞かないよ。」
「……」

そう言った僕にナルトは顔を上げた。
ナルトは僕の手を取って手の平に指で文字らしきものを書き始めた。
一応僕も暗部で読心術はできるんだけど。喋って大丈夫だよ、そう言うとナルトは気まずそうにまた俯いてしまった。

それからナルトはどうしてそうなったのかを話そうとはしなかった。
ここに来たのがカカシ先輩だったのなら、違ったのかもしれない。
思考がそう向いたときに抱いた嫉妬心に苦笑した。
出来ることなら、してやりたい。





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