臆病者はどちら

ナルト視点

「はぁ…」
「何よ溜息なんてついちゃって、気持ち悪い。」
「…サクラちゃん、それ酷くね?」

俺だって溜息くらいつきたくなる時もあるんだってばよ。
ちらりと少し離れた所にいるカカシ先生を盗み見た。相変わらず師匠のエロ小説ばっか読んでるけど、実はちゃんと俺たちのことを見てる。

「ナルトが溜息?こりゃ明日は雨、かなぁ〜」
「カカシ先生まで言うなってばよ!」

ほら、ちゃんと見てる。
でもそれは俺だけを見てくれてる訳じゃない。任務だから。

(はぁ…こんな気持ちは俺だけで、カカシ先生はきっと…)

カカシ先生はきっと、そこから先を考えると悲しくなって止めた。
俺は腹に九尾を抱えてて、カカシ先生はその監視役だ。頭では分かってる。
頭では分かっていても、俺は単純だから勘違いしていまう。

「ま、悩みがあるなら相談しなさい。」

カカシ先生の優しさが、怖い。
カカシ先生をもっともっと、好きになりそうで怖い。

「でも、ナルトのことだからこんな任務早く終わらせて一楽に行きたい、とかでしょ。」
「一言余計だあぁあ!俺の感動を返せ!」

 * * *

「ごちそうさん!」

ぱん!と両手を合わせて今日もこんなにうまいラーメンを作ってくれた一楽のおっちゃんとアヤメさんに感謝する。

「…食べ過ぎだよ、君は…」
「そんなことねぇの!」

俺を挟むようにカカシ先生とヤマト隊長が座っていて、(一楽に行く途中カカシ先生に半ば脅される形で連行されてヤマト隊長も一緒だったんだってばよ)サクラちゃんが遠いのがちょっと悲しい。サクラちゃんはなぜか俺を憐れむように見ていた。
それはどうでもいいとして、問題はここからだ。

「ナルト、この後暇でしょ?」
「…う、うん。」
「ちょっとさ、その…」

ほら、今日もだ。
カカシ先生が唾が悪そうに頬を掻いた。
いつの間にかヤマト隊長とサクラちゃんは店の外へ出ていて、俺とカカシ先生しか店内には残っていなかった。ヤマト隊長とサクラちゃんの妙な気遣いって奴だ。
溜息も付きたくなるってばよ。毎日とは言わない。
でも頻繁にカカシ先生は、

「この後、付き合ってくれない?」
「また彼女さんに買うもの困ってんのかよ、それとも晩飯のお使い?本当に先生ってば、仕方ないってばよ。」
「うん、ごめんね。」

どうして俺に毎回買い物に付き合ってくれなんて頼むのか、分からない。
彼女さんへのプレゼントだって、女の子のサクラちゃんじゃなくて俺に言う。
でもその理由を聞けない、聞きたくない。
俺は今の距離感が好きだ、この先生と生徒、上司と部下、それ以上でも以下にもなりたくない。満足してる。
そう言い聞かせた嘘でいつまで自分を誤魔化せられるのか、俺にも分からなかった ―





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