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ナルトの見せる表情に、俺は胸が痛かった。
ねぇナルト、もう戻れないの?
俺は咄嗟に手を伸ばした。

「ナルト…っ、」
「俺のことは、ほっといてくれよ!もう…話は終わり、」

力強く叩き落とされた手。
痛んだのは手かはたまた心か。
ナルトはまた狐の面を被ろうとしたが、俺は咄嗟にその手首を掴んだ。
またその面をしたら、何だかナルトがナルトじゃなくなってしまう様で、恐かった。
面をすることで心にも仮面を被って何も望まず希望も持たない、持たせてもらい事に諦めて。
そんなのナルトじゃない。

「…離せよ、先生…」
「離さないよ。」

きっ、と俺を睨むナルトの目は深紅。九尾のチャクラの影響だろうか。いつもの空色が見えないだけで、少し哀しくなった。
がむしゃらに突っ走って、それでも真っ直ぐに前を見つめる。
周りを虜にしていく、ナルト。
打って変わって、今日俺が目にしたナルト…

「どっちが本当のお前なの…?」
「……………っ、」

深紅の瞳が揺れた。
明らかな動揺。
その隙を見て、逃げようとしていたナルトを木を背に向けさせ押さえつけた。
びくりと体を震わすナルト。
自分でももうどちらか本心か分からないのかもしれない。

「……こっちだよ、…本当は」

ぎゅっと唇を結んで、俺から視線を逸らした。
ナルトの声が少し震えていた。
逸らされていた視線が戻される。

「…だから、俺はカカシ先生が好きな、俺じゃない……」
「…………っ!」

ナルトの口からしっかりと、発せられた言葉の拒絶。
それ以上に驚愕したのは、俺のナルトに抱く想いを知ってること。
俺の動揺は明らかにナルトに伝わった。

「…どうして、そう思うの?」
「皆が好きなのは、俺じゃない…先生もそうだろ?」

こんな俺、そう言って手に着いた血を頬に擦り付けた。
ナルトに似付かわしくない紅。
俺の動揺はナルトの思い違いで、恋心が知られた訳ではなかったけれど、それでもナルトの表情、言葉に寂しさを抱かずにはいられなかった。
太陽のように笑うナルト、人懐っこいナルト、ドジで一人で突っ走って、でも本当は独りが怖くてそれでも独りで泣いている、そんなお前を見てきたはずなのに。
俺の知るお前は、全部嘘だったって言う訳?

「ねぇ、ナルト…」

「ナルト!」

突然した他者の声に、驚いて振り向いた。
不覚にもナルトのことで一杯一杯で気配に気付かなかった。
その気配にナルトは安心したように肩の力を抜いた。

「…テンゾウさん、」
「……!」
「ナルト、に先輩?」

ナルトがヤマトとは呼ばずにテンゾウの名前を呼んだこと、ナルトが安心した表情をしたのはテンゾウを見たから、そのことに苛立ちが募る。
テンゾウに気をとられているうちに、ナルトは俺の腕を振り払ってすり抜けた。

「帰る、」
「……ナルト?」

ナルトは俺を振り向くことなく、また狐の面被り姿を消した。
残されたのは、俺と状況を理解出来ないテンゾウ。

「何でお前がここにいる訳?」
「どこか様子が変だと思ったら…任務の相手ってカカシ先輩だったんですね。」

俺の質問に答えず、まるでナルトが暗部にいることを当たり前だと言うように一人納得するテンゾウにまた苛立つ。

「ちょっとテンゾウ…お前は知ってた訳?」
「先輩、殺気を向けないで下さいよ…」

いつものように、ヤマトですと訂正しない。
面の下でどんな表情をしているのか、分からない。
一呼吸、置いてからテンゾウが口を開いた。

「知ってましたよ。」





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