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知ってたって?
ナルトが暗部にいること、あんなに笑う子が面をすることで全てを偽って似合わない赤色に染まること。
それを、俺ではなくてテンゾウが知っている。途端に嫉妬と焦燥に駆られた。
「ナルトは…いつから?」
俺がそう聞くと、テンゾウは分からないと首を横に振った。
「僕がナルトとペアを組んだのは少し前です。それ以前のことは…」
おそらく相手がテンゾウなのは、綱手様が気を利かして下さったのだろう。
(はぁ…だからあんなにテンゾウにべったりだった訳ね…)
見っとも無く、大人気ない自分に自嘲した。
なんでもナルトのことを分かっていたつもりでいたのは、大きな間違い。
テンゾウの方がよっぽどナルトを見ていた、だから俺ではなく、こいつにペアを組むよう言った、そういう訳か。
「カカシ先輩は…今のナルトをどう思われます?」
「どうって…」
どう思うか、なんて今は分からない。
ただ、はっきりしているのはナルトを想う気持ちは変わらない、それだけだ。
仲間でない、そう自分に言い聞かせているようだった。
信頼すれば敗北だとでも思っているようだった。
それとも、信頼することが怖いのか。
「とりあえず、また明日ナルトに会ってみるかな…」
「先輩、あの…あまりナルトを刺激しないでくださいよ。」
「何よそれ。」
こいつも本当にナルトのことになると心配性だ。ナルトにべったりだし。
テンゾウは放っておいて、任務報告もある為帰還しようと背を向けた。
「カカシ先輩、」
「…何。」
「……いえ、何もありません。」
何か言い掛けたテンゾウに、苛立ちを覚えながらも俺はその場を離れた。
つづく