他愛

「これにて任務終了。ナルト、一楽にでも行く?」
「えぇえ、いいの!」
「先輩、ナルトに甘いです。」
「ニシシっ、ヤマト隊長も行くってばよ!」
「…また奢らされる訳か、」
「お、ご馳走さんテンゾウ。」
「…………」

任務終了、これからいつもの一楽での光景。
テンゾウの腕を引きながら、一楽へ向かうナルトの後ろ姿を見つめる。なぁ、ナルト…お前は気付いてる?
お前のその笑顔が嘘だと俺にばれてるってこと。
テンゾウやサクラ、サイまでもそれには気付いていないみたいだけど、俺には分かるよ。

「カカシ先生ぇ?」
「…ん、あ、あぁ、何?」
「何か考え事?」
「いやぁ、ちょっとな。」
「ふーん、」

お前をずっと見てきたから。
これは恋心だと気付いたときには、もう後には退けないと確信した。それくらいにお前への思いは大きいんだよナルト。
教えてくんねーし、なんて言ってまたテンゾウに話掛けてる。
一楽に着いても、ナルトはいつものナルトで時折見せる表情が、違った。

「ご馳走さん!」
「…食べ過ぎだよ、ナルト。」
「ケチ臭いこと言うなってばよ、隊長!」
「あのなぁ…奢るのは僕なんだから…」

そう言いつつ勘定を済ませるテンゾウに一応感謝はしておく。
暖簾をくぐって振り返れば、またナルトとテンゾウは二人で会話の真っ最中。
最近、仲良さそうじゃないの。
ナルトに集られるテンゾウも万更でなさそうに、苦笑しながらもナルトの要求に応えている。

(…気分悪いね、)

はぁ、と溜め息をついた。
みっともない、俺の嫉妬。
それを隠すように二人には声も掛けず一楽を離れようとした。

「あれ、カカシ先生もう帰っちまうのかよ?」

けれどナルトに止められ、タイミングの悪さに思わず舌打ちしたくなった。
今、ナルトとテンゾウが一緒に楽しそうに会話しているのを見れば軽く殺気を飛ばしそうだ。

「んー、先生は忙しいの。じゃあね、」

ぼふん、と音を立てて消える。
ナルトが何か言いかけたが俺の瞬身でそれは叶わなかった。










(……重症だ、)

はぁ、今日何度目かの溜め息は誰もいない部屋に、ただ静かに消えていく。暗部召集命令。
それの身仕度をしながら、また静かに溜め息をつく。

ナルトが帰郷し、分かっていても否定し続けてきた恋心が一気に溢れてしまった。
ナルトの太陽の様な笑顔を向けられる度に、胸が疼いて仕方なかった。最初はそれだけで満足していた心も、今ではその笑顔が他に向けられると嫉妬に変わった。
そんな毎日を過ごしていくうちに気付いた。
ナルトはふとした瞬間、今まで見たことない様な表情をする。
確かな違和感、けれど俺はそれが何なのか分からず、それに触れられなかった。
年頃だし悩みの一つや二つくらいあるだろう、と簡単に片付けた。

「…あれ、もう時間?」

コツン、と窓を叩く伝言鳥に軽く悪態をつき、部屋を出た。





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