触れたい

ヤマ→ナル


任務当日になって体調を崩した、なんて忍としては頂けない。
それどころか頭を抱える問題でもあると思うけど。
僕は今日で何回目かの溜め息をつき、第七班隊長はカカシ先輩に、そしてナルトがいない分は他の忍に埋めてもらい任務はなんとか遂行できた。

足取り重くナルトの住むアパートに向かう。
普段から風邪なんてひかないし、まさか本当に体調を崩したなんてことであればカカシ先輩の八つ当たりは勿論僕に向けられる。
なんとかしてくれよ…もう。

そんな最近はナルトの世話ばかり焼いていて休まる暇が無い。
かと言って、それが嫌な訳でもなく、ナルトの方も何かと僕を頼ってくれる。
なんと言うか、振り回されても世話ばかり焼かせるナルトに世話を焼くことがまんざらでもない、寧ろそっちの方が僕としても嬉しいらしい。

カカシ先輩から持たされた野菜が入った袋を持ち、リズムよく二回扉を叩いて、ナルトが顔を出すのを待つ。

「………?」

返事がない。
それから少しの間が空いたけれども、返事は無かった。
留守かと思い、扉の把手に手を掛けた。
鍵は掛かっていない。
把手を回した、その時、見慣れた色を視界が捕えた。

「ナル ― ト…?」
「…っ…!?」

が、しかし僕の顔を見るなりナルトは肩をびくつかせて、少しだけ開いていた扉を閉めようとした。
それには驚いたが、僕の頭はナルトの怯えた表情と、片目に巻かれたまだ真新しい包帯で頭が一杯だった。

「ナルっ、ト!待っ ― 」
「帰れってば!」

拒絶の叫びにぐっ、と心臓を握られた感覚に襲われる。
それでも、訳を聞きたかった。
どうしてそんな怪我を、なんでナルトが、そればかりが頭を巡り、気付けば無理に押し入ったようでナルトが睨んでいた。
その、残った片目だけで。





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