振興




「ごちそうさまでした〜」
討伐対象のコアを回収し、神機を捕喰形態から通常の剣形態に戻す。
これで今回の任務は完了だ。
「ニヴは、何故"いただきます"、"ごちそうさま"と言うのですか?」
突然、リマリアが切り出した。
実際食べているのは神機であるので、ニヴが言うのは疑問が残ると、至極真面目な表情でリマリアが問う。
ニヴは瞬きを繰り返した。
「え〜、なんだろ。気分かなぁ」
オペレーターに任務完了の報告をし、指示されたヘリが停まる場所へと歩き始める。
リマリアもそれに沿って隣に並んだ。
「そりゃー、リマリーが食べてるかもだけどぉ、捕喰すると、バーストするでしょ?そうなると、おれも食べてるみたいだよねぇ」
アラガミを捕喰すると、神機から伝わって一時的に身体能力が強化される。
食べているのは神機というモノだが、それに連動して使い手にも影響が起こる。
別々の存在とは、思えないように。
得心がいったように、リマリアは小さく頷いた。
実に人間らしい仕草である。
「でもアラガミってぇ、味、しないーんだよね?」
リマリアが短く肯定すれば。
「じゃー、おいしくないのぉ?」
ニヴが何気なく、リマリアへ顔を向ける。
するとリマリアは視線を下げ、呟いた。
「美味しくない……、美味しく、ない…?」
同じ単語を繰り返す。
「ありゃ、なーんか、へんな事きーちゃった?」
「いえ、ウロヴォロスは美味…です。そう表現するのが、妥当です」
ハッキリとした口調が、途切れ途切れになる。
「ですが、他のアラガミが美味しくない、というわけではありません。いえ、こちらに関しては、美味しいという概念に当てはめるのは不適切です。では他に当てはまる言葉は……」
「んにゃ、考えちった…」
一人でぶつぶつと自問自答を始めだした。
それでも歩みは止めずに、ニヴのペースに沿って、隣に居る。
いつからこうして肩を並べるようになったのだろうか。
初めて見た時は、初めて声を聞いた時は、どうしていたのか。
自分も、力不足であったころ。
いや、今でもきっと、そうなのだろう。
変わらない無表情に、少しだけ眉を寄せるリマリア。
その顔に、小さく笑みをこぼした。




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