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「あ、またライター切れた。」
「そろそろ替え時かな…」と呟きながら二、三度音を鳴らす。
しかし、それは無情にも空に消えていった。
アラガミも無事討伐し終え、帰投ヘリが来るまでの間タバコを吸おうと思ったのだが、これでは意味がない。
「俺が火つけてやろうか。」
にっこりと目だけは譲らない笑顔で、響鬼が銃形態の神機を向ける。
明らかに狙いが違う位置だったが。
「やめろ。」
ラエが呆れながら制止すると、やむなく響鬼は神機を下した。
それらを全く気にせず、リュウはタバコを咥えたまま乱暴に頭を掻いた。
「ライターは……、持ってないよな。」
アイリーンとラエ、二人の顔を交互に見る。
「どっちか撃ってくれないか?」
二人が疑問の声を上げようとした瞬間、
弾けた音と一緒に、素早く何かが駆け抜けた。
同時に、加えたままのタバコに火が付く。
皆が一斉にその元へ振り向いた。
そこに、
「これでいいか?」
「あぁ、さんきゅ。」
「良くねぇよ!どっから現れてんだよテメェは!そしてお前も何かツッコめ!」
ラエが怒涛のツッコミを入れた先。
小さな高台の上にはノジアが居た。
「結果的についたからいいだろう。」
リュウはようやく火のついたタバコを吸い始め、響鬼は興味なさげに視線を戻した。
アイリーンはというと、
「あ、ノジアくんだ、やっほ!」
嬉しそうにノジアに手を振っている。
「やっほー。」
全く抑揚のない声で返しつつ、高台から飛び降りた。
「呑気に返すな、そしてその言い方やめろ。」
ラエは腕を組み、こちらに歩いてくるノジアを見やる。
彼の手には神機があった。
「そう言われてもな。」
相変わらずな声で、目を背けた。
「…で、なんでこんなところに居るんだ?」
一服して少し満足したのか、ようやくリュウは向き直った。
ノジアはあぁ、と思い出したように、
「帰投ヘリが来た、呼びに行くところだったんだ。」
帰投ヘリが来た、までならわかる。
しかし、何故神機使いである彼がやってきたのだろうか。
「何でお前が。」
嘆息しつつ、今一つ要領を得ない答えにラエはもう一度問う。
「そのヘリに乗ってた。」
これでようやく合点がいった。
ヘリの数も無限ではないため、帰投時が重なるなんて珍しいことではない。
一言だけ答えて、さっさと後ろを向いて歩き出した。
皆もそれについていく。
「腹減ったな…」
リュウが小さく息を吐き出した。
もうとっくに正午は過ぎている。
「アイリーンちゃん、今からランチでも行こうか。」
響鬼が手を差し伸べると、アイリーンは一瞬目を丸くする。
そして、
「うん、行こう!」
明るい声でその手を取った。
響鬼が笑みを深めたと同時に、
「皆で!」
「チッ。」
「おい。」
アイリーンには見えないように小さく舌打ちした。
瞬時に変わる声も表情も、ラエには丸聞こえだったが。
「ね、皆これから大丈夫?」
キョロキョロと皆を見渡す。
視線を向けていけば、リュウは無言で肯定し、ラエは遠慮がちに頷いた。
最後の一人、ノジアは振り返らず歩いたままだ。
「ノジアくんは?」
小走りで向かっていく。
後ろで、響鬼が残念そうな顔をしていたのを彼女は知らない。
「どう?大丈夫?」
追いついた彼女が隣に並ぶ。
覗き込むように屈めば、彼は頭に疑問符を浮かべていた。
その後ろで小さく「話聞いとけよ」とラエがツッコんでいた。
「あれ、もしかして、もうお昼食べちゃった…?」
おずおずと尋ねる。
「…いや。」
「やったっ。じゃあ、皆で行こう!」
パッと表情を変え、元気よく跳ねる。
同時に神機が音を鳴らした。
「じゃ、響鬼の奢りな。」
リュウが声と共に静かに煙を吐き出だせば、
「何で俺なんだよ。」
すっと響鬼の目つきが鋭くなった。
「言い出しっぺだからな。」
タバコを咥えながら口角を釣り上げて笑う。
「てめえは誘ってねぇよ。」
すぐさま返した言葉。
それがまた返される前に、
「はいはい。そこまでにしろ。」
呆れ顔でラエが遮った。
溜息をつこうとしたその時、
「じゃ、お前な。」
「決まりだな。」
「は?」
さっきまでの衝突が嘘のように、ぴったりと息を合わせてきた。
リュウと響鬼に続いて、
「頼んだ。」
「ちょっ?」
「本当!?ありがとう!」
「ちょっと待てぇ!!」



→あとがき

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