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静止した部屋。
聞こえるのは二つの静かな呼吸音。
並んだベッドに横たわるシエルとナナ。
瞳は硬く閉ざされたままだ。
数時間前、シエルとナナの二人で任務に出た矢先でのことだった。
討伐対象との交戦中、突如現れた感応種スパルタカス。
乱入したスパルタカスは、すでにオラクルを吸収していたのだろう。
凄まじい破壊力を誇っていたそうだ。
二人は怪我を負いながらも、なんとか撤退した。
そうして、アナグラに戻ってきた。
イーギスがその知らせを聞いたのは、つい先程。
ベッドの隣にある椅子で、二人を見つめる。
所々包帯が覗いている。
アナグラに帰還し、処置を受けてからも目覚める気配が無い。
不意に椅子が揺れた。
イーギスが立ち上がったのだ。
踵を返し、出口へ向かう。
扉に近づく前に、それは開かれた。
「ッイーギス!二人は?」
開かれた先に居たのはギルバートだった。
鉢合わせたイーギスに少し面食らいながらも、声を投げる。
走ったのか、呼吸が浅い。
「だいぶ疲弊してますけど、命に別状はないみたいです。」
イーギスは一歩遠退き、ギルバートに道をあける。
「そうか……。」
安堵したように息を吐き出し、ベッドの脇へ歩み寄っていく。
二人はまだ目覚めない。
「じゃ、二人をお願いしますね。」
イーギスはにっこりと笑ってそう告げた。
それを受けて、ギルバートも振り返る。
「どこに行くんだ?」
「いや〜、任務入っちゃってて。すぐ終わらせますわ。」
肩を竦めて、両手を広げて見せる。
その様子にギルバートは少しだけ違和感を覚えた。
けれども、それも一瞬で消える。
「…あぁ。分かった。」
言い終わると同時に、閉まる扉。
静寂だけが蓄積されていく。
眠る二人を見つめる。
少しだけだった違和感は、静かに膨張していった。
「…あいつ、今日任務なんて入ってたか…?」





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