促進




「ふぅ…。」
アナグラのラウンジで、アリサはひっそりと息を吐き出した。
腰掛けた前のテーブルには、書類が散らばっている。
サテライト拠点のインフラ設備について、次の任務の作戦要項。
クレイドルとして、神機使いとして、こなさなければならないものだ。
ようやく第2建設予定地も軌道に乗ってきた。
これからが本番だ。
気を抜いていられない。
「先輩、お疲れ様です。」
ふと、かけられた声に顔を上げる。
「あ、お疲れ様です。」
声をかけたのは、最近アナグラにやってきたというブラッドの隊員、イーギスだった。
アリサの斜め前にあるソファーの背の上に頬杖をつく。
「お疲れっすねぇ…。」
「え、そう見えます…?」
「うぃっす。」
慌てて自分の頬を触ってみる。
けれども、自分の顔というのは分からないものだった。
「……いけませんね。つい…」
眉根を下げて笑う。
どうしても、早く拠点が完成してほしくて焦ってしまう。
焦って、無茶をしてしまう。
無茶をするなと、いつも注意していたのは自分なのに。
「…ここは一発、癒されますか?」
すると、イーギスが人差し指を立てた。
その顔ではニヤリと笑っている。
「どうやってですか?」
アリサが首を傾げれば、
「そりゃあもちろん、我等が癒し系男子!イーギスにお任せあれ!」
声高々に、イーギスが言い放った。
ばっちりウインクと目元にピースサインのダブルコンボ。
仕舞いにはぺろっと舌を出して見せる。
「…………」
ぽかんと、アリサの思考が真っ白に染めあがった。
たっぷり三秒もかけて、そのまま固まっていた。
「…って、あれ?」
ようやく異変に気付いたイーギスが苦笑いを浮かべ始めた頃、
「…ぷっ、あははは!貴方、いつのまに癒し系だったんですか?」
笑うアリサが居た。
それを受けて、イーギスも一瞬だけ目を細める。
それもすぐさま笑みに重ねた。
「生まれた時からっす。ほら、証拠に血の力、喚起能力!」
「それって、そんな力でしたっけ?」
「イエス!皆を癒して参ります!」
「…ありがとうございます。」
コロコロとポーズを変えて、意気揚々と語るイーギス。
アリサもつられて頬を緩めていた。
「俺の癒しパワー受け取ってください!」
両手を前に突き出して、念を送るように唸る。
笑いすぎたのか、アリサは目尻の涙を拭った。
「ふふ…受け取りました。」
「はい!コレで大丈夫っす。俺に手伝えることあったらすぐ言ってくださいね〜。他の人に押し付けますんで!」
「それ、貴方手伝ってないじゃないですか。」
「気のせいです!」
笑顔にあふれた、ラウンジのお昼過ぎ。





――――――


あとがき

主人公に癒し系男子って言わせたかったです。
いつもですが、タイトルどうしようか悩みます。




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