身体だけは私のもの

「……ん、隊長……ッ」

何時からこんな関係になったのだろう、遥か昔から繋がりを持っていたように感じる。
実際はごく最近の事なんだけどそれほどまでに彼との行為は濃密で、ここまで狂わされるのは、きっと前世は恋人同士だったのではないかと思ってしまう。



「身体を重ねるたびに敏感になってるぜ、お前の此処」

「……あっ、そんなこと、ない」

わざと耳元で卑猥な言葉を連打し、私の羞恥心を煽る日番谷隊長。
ふっ、と息を吹き掛けられ、私は身をよじって彼から離れようとするけど、そんな事を許すはずもなく、腰を掴んで私を離さない。

「ああ……ッ」



時々虚しさに襲われることがある。
彼、日番谷隊長とは身体を交じらす関係だが恋人ではない。

きっかけは些細なことで、二人きりの詰所で薄暗い部屋の中の沈黙からだった。
何となくイケナイ気分になってしまって、元々彼に淡い恋心を抱いていた私は彼を無理矢理押し倒した。

意外な事に彼も同様だったようで、息を荒くして貪り付く私の唇に応えてくれた。
彼は驚くほど多彩なテクニックを持ち合わせていて、私は何度も絶頂を迎え、そして彼はそんな私を見て毎度こう囁くのだ。



「エロい女」

口端を少し上げて私を見下すように見つめる彼の顔を見て、不覚にも私の一部がジュンと熱くなり否定出来ない自分に少なからず戸惑った。

「其の顔はまだ足りねえ感じだな」

そして再び狂喜の世界へと二人身を任せ、私は淫らな声を上げながら幾度となく達してしまう。

「なまえはこうされるのがいいんだろ」

「んあ……ッ」

毎回隊長は執拗に私の乳首を弄び、引っ張ったり、つねったり、舌先で弾いたり、軽く噛んだりして私の反応を楽しむ。
どうやら小さすぎず大きすぎない程度な按配の私のコレの愛撫を施す事が、何時までも飽きないらしい。

「あ……ッ、隊長、ソコばかりやだ……」

一種の焦らしプレイに私は耐え切れず、こうして自分から他の愛撫を懇願する。
淫乱だと思われても構わない、彼に愛されるならば、私は最高に厭らしい女になれる。

「何処触って欲しいんだ?」

その言葉を待ち構えていたかのように、日番谷隊長は更に激しく乳首を弄る。
舌の回転を早め、もう一方の乳房を掌ですっぽりと覆い指先で押し潰して不敵な笑みを見せた。

「……い、や。解ってるくせに。意地悪」

本当は卑猥な言葉を何べんだって言える。
だけど、こういうやり取りが楽しいからわざと誤魔化し恥らってみせるのも互いの欲を駆り立てる材料。

すると隊長はムッとした表情で私を見つめ、これでもかという程懇親の力で私の乳首をつねった。

「やあ……ッ、隊長、こっちを……ッ」

参ったと観念して触って欲しい場所を促すと、私の卑猥な言葉で彼は満足そうに下に手を伸ばす。

「もうこんなに濡れてンのかよ。ホント、ヤラシイ身体になったな」

嬉しそうに私に口付けを交わし、人差し指と中指を同時に挿入した。

「ああ……ッもっと、もっといっぱい……ッ」

狂ったように喘ぐ私に見下しながら見つめる隊長。
そんな表情ですら、私だけのものだと思うと嬉しくてもっと乱れてしまう。

「ほら!此処だろ?もっと善がれよ」

「あ、ああ……ッ、気持ちいい。隊長、隊長……ッ」

「そんな力入れんな……!出ちまう」

上り詰める絶頂に、私は彼の肉棒を力いっぱい握ると、身をよじって快楽から逃げようとする彼の潤んだ瞳が綺麗で。

「隊長、もう……」

肉棒を強く握って早く早くと乞うと、彼もまた絶頂寸前で素直に私の濡れた秘部に先端をあてる。

「善い声出せよ」

「あーッ」

十分に慣らされたソコはいとも簡単に彼のモノを呑み込む。
破裂しそうなほど膨張した自身で膣は満たされ、中から大量の蜜が溢れ出てくるのが分かった。

「ああ……ッ、隊長……ッ」

「……ッ」

正常位で獣のように付かれ、バックで互いの身体の打ちつける音が響き女性体位で狂ったように腰を振る。
虚ろな瞳で半開きになった口元から唾液が顎に伝い、いつもの私ならここまで積極的になれるなんて考えられないのに、隊長との身体の相性が抜群だと身体全体で感じ取っていた。

「もう駄目……、イッちゃうー!」

「俺もだ」

「一緒に、イこ……」

腰を振り乱しながら、彼と手を絡ませあう。
指先が、掌が、熱くなって…愛していると改めて思った。

「ん、ああ……ッ、好き、好きぃーーー!」

「……ッ」



その後もう一度愛し合い、無意識で零れる言葉に更に感情と感覚は上り詰めていく。



「隊長、好き……」

この想いを抑えることなど出来なくて、私は何度も気が済むまで伝える。
身体だけの関係でも、私の一方通行の愛でも、彼とこうして交じ合う事が出来るのなら、私はきっとこのままの関係でいいのだと納得していた。

彼には他に想う人が居たとしても、身体だけはわたしのものなのだから。

「日番谷隊長……」

静かに眠る彼の髪に触れ、その髪一本一本に好きだと伝える。
これ以上のことなんて望んじゃいけない、だってきっと欲を出したらこの関係は終わってしまう。

「好きです、隊長」

少しだけ生まれる涙を抑えるように目を閉じ、彼の髪に口付けをする。
……溢れる気持ちを殺さなきゃ、私にはそんな資格など無いのだから。

彼女の変わりでもいい、私を彼女に見立ててあんなに感じてくれているなら。

「それでも、いいの」

だから居心地のよいこの居場所を壊さない、壊したくない。

「……なまえ」

仕切りに私の名を呼ぶ隊長の声が耳に木霊した、眉を下げて、切なそうに。

「隊、長……?」

何故……、どうしてそんな顔で私の名を呼ぶの。
そんな風に呼ばれたら期待してしまうじゃない、自分に都合良く解釈してしまうじゃない……。

「駄目だよ。だって貴方は」

あの子が好きなんでしょう。
昔から一緒に居た、可愛いあの子が。

「……やめてよ」

欲張ってはいけないって思ってたのに、自分の気持ちにブレーキをかけていたのに。
どうして寝言で私の名を呼ぶの。

「……身体だけの関係なんて嫌です。お願い、私を好きだと言って」

スースーと寝息を立てる彼の頬をそっと撫でながら、ポタリと一滴、キラリと光る涙が落ちて、それを引き金に絶え間なく涙が零れて行く。

「愛してるんです。私の気持ちを受け止めて下さいませんか、隊長……」

あの日、触れ合った時から私の心は貴方のことで一杯だった。
だけど報われない恋だと決め付けていたから、これ以上好きになってはいけないと。

行為をすることで満たすよう、そう言い聞かせてきていた。

「……隊長……ッ」



「……馬ー鹿」

「!」

突然彼の声がして勢いよく顔を上げると、横になったまま相変わらずの表情で私を見つめる隊長が目に映る。

「……起きていたのですか」

私の頬に流れ落ちる涙を見て大きくため息を付いて起き上がった隊長は、ジッと私を見つめた後フッと笑った。

「鈍感な奴だな」

そう言って私を引き寄せる腕はとても強く、息が出来ぬほどで。
直に感じる彼の肌の温もりで更に涙が出てしまう。

「俺が身体だけでお前を抱いていたと思うか?そこまで器用じゃねえよ」

隊長は私の髪に額に頬に耳に首筋に至る所にキスを落とし、その度に好きだと告げる。
最後に私の唇にそっと口づけて、真っ直ぐ見つめて言った。

「一度しか言わねえからな。俺も、……愛してる」

きっと、お前が俺を好きだと思う前からそう付け足して。



これからは、自分の気持ちを全部貴方に出してもいいかな。
”隊長”から”冬獅郎”に変えてもいいかな。

次からは身体を合わせる時だけじゃなくて、顔を合わせるたびに”好き”って言ってもいいんだよね、冬獅郎。

END

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