15話「夫婦と祝福」
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義勇が自宅で療養中、ある1人の柱が現れた。
「入るぞ!冨岡!!」
朝から大音量の声が玄関から響き渡る。
名前と義勇は驚きはしたが、誰が来たのかは瞬時にわかった。
「炎柱様、お久しぶりですね」
「うむ!名前殿、元気そうで何よりだ!」
「…何しに来た」
炎柱、煉獄杏寿郎が両手にたくさんの土産を持って現れたのだった。
「名前殿が懐妊されたと聞いてな!これは祝いの品だ!こっちは甘露寺からだ!」
「ありがとうございます、こんなにたくさん」
「なに!近くに来たものでな!冨岡も療養中だったな!どうだ調子は!」
「…問題ない」
「そうか!ならもう俺は行く。失礼したな!」
「ええ!?もう行ってしまうんですか?中でお茶でも…」
「いや!貴重な2人だけの時間を楽しんでくれ!」
「あ、ありがとうございます…」
一通りの会話が終わると煉獄は颯爽と立ち去ってしまった。
玄関で2人はポカンとその背中を見送る。
「あ、嵐のような人でしたね」
「そうだな…」
そしてその翌日。
今度は早朝から玄関で怒鳴り声が響き渡った。
「おい!冨岡ァ!表に出やがれェ!」
「はい、あ、おはようございます。風柱様」
「っ、あ、いや、すまん、あんたに言ったわけじゃな…」
「なんだ不死川」
「おまえだよォ!早く来やがれ!」
不死川は懐から少しよれたご祝儀袋を取り出した。
「お館様からだァ。俺はただの使いだが…」
そう言ってもう1枚、ご祝儀袋を取り出す。
「こんなに!ありがとうございます。産屋敷様にもよろしくお伝えください」
「おォ」
「義勇さんも今度産屋敷様にお礼を言ってくださいね」
「わかった」
「不死川さんも、わざわざありがとうございます」
「いや…身体に気を付けろよォ」
少し照れた様子の不死川は屋敷に入ることを断固として拒否し、煉獄同様にすぐに帰ってしまった。
「義勇さんは素敵な仲間をお持ちですね」
「ああ」
いつも何を考えているのか分からない義勇だが、この時ばかりは少し嬉しそうな顔をしていた。
名前もつられて微笑んだ。
「子どもが生まれたら皆さんに早くお見せしたいです」
「まだまだ先だ。それまでは不死川が言ったように身体を大切にしろ」
「義勇さんは心配しすぎですよ」
そして数週間に渡り、柱たちが祝福に訪れることになったのだった。