12話「夫婦と発覚」

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「他の理由、ですか?」

予想外の発言に名前は首を傾げた。

「ではまず、私の質問に答えてくださいね」
「はい、わかりました」
「症状を詳しく教えてください」

名前は最近いくら寝ても寝足りないこと、常に体がだるいこと、脂の乗った魚が苦手になってしまったことを伝えた。
胡蝶しのぶは終始ふむふむと頷き、メモをするでもなく名前の様子を伺っていた。

「今まで同じ症状になったことはありますか?」
「無いと思います」
「月のものは来てますか?」
「そういえば、きて、な………え」
「名前さんも冨岡さんと同じで鈍感ですね」


月のものが2ヶ月以上来ていない。
しかし友人の中でも不順でなかなか来ない女性も多く、名前もさほど気にしていなかった。

胡蝶の質問に答えていって、名前はやっと自分の身に起きていることに気がついた。

「妊娠してるんじゃないんですか?」
「にんしん…」
「心当たりないですか?」
「あります…」


頭の中が真っ白になる。
何も考えられない。
夫婦なのだからいつか妊娠するんだろうかとは思っていた。
まさかこんな早くその日が訪れるとは思っていなかったのだ。


「おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます」

胡蝶の言葉に名前はじわじわと喜びを感じる。
夫との子ども。
あの冨岡義勇と自分の子ども。


「私、どうしたら…」
「まずは民間の婦人科にしっかり見てもらってください。私は専門外ですから」
「本当に妊娠してるんでしょうか」
「絶対とは言えないですが、8割がたそうだと思います」

「義勇さんに知らせなくちゃ」と思うのになかなかその場から動かなかった。
心臓がドキドキとうるさい。


「ふふ、実は冨岡さんに私が余計なことを言ってしまって、そのせいで骨折してしまったんです」
「え?」
「任務に向かう途中、名前さんが最近具合が悪いからと言って冨岡さんから先に症状を聞いていたんです」
「そうだったんですか」
「それで私、妊娠じゃないのかって言ったんですよ。その話をしてから冨岡さん心ここにあらずな状態で、戦闘中に転んでしまったんです」
「それで骨折したんですか?」
「そうなんです。敵の攻撃を避けようとして、豪快にひっくり返ってましたよ」


まさかあの義勇が。
いつも何を考えているのか分からない彼も、動揺することがあると知って嬉しかった。




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