第二十五話

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杏寿郎くんは十二鬼月との戦闘でかなり重傷を負い、最近まで包帯だらけだったらしい。しかしある程度回復したため、こっそり屋敷を抜け出して私の家に来たと言う。
ちなみに場所は要に案内してもらったとのこと。


「千寿郎くんが心配してますよ!帰りましょう!送りますから」
「いや、わざわざ送っていただく必要はありません。一人で帰ります」
「でももう夜になっちゃいましたよ?今鬼が出たら…。そんな身体で戦うのは危険です」
「大丈夫です!」
「杏寿郎くんなら大丈夫かもしれないけど、さらに怪我をしたり、今の怪我を悪化させる可能性もあるでしょう?そう考えると心配です…」

あーだこーだと言い合っているうち、二人ほぼ同時にぐぅぅとだらしなく腹の音が鳴った。
二人顔を合わせる。

「……とりあえず、夕ご飯、どうしましょうか」
「名前さんはどうするつもりだったんですか」
「すぐ近くの定食屋さんに食べに行こうと思います…、わたし、料理苦手で」
「それは知らなかった!!」

杏寿郎くんは大きな声を上げて驚いた。
あぁ、料理が苦手なんて女性としてありえないだろうか。もしかしたら今の発言で杏寿郎くんに幻滅されたんじゃないか。

そんな私の心配を他所に、彼は目を輝かせた。

「なら食べに行きましょう!」
「あ、はい…そうですね」

結局、杏寿郎くんが帰る話はひとまず有耶無耶になってしまった。二人とも本当にお腹が減っていたのだ。



定食屋に着くと、杏寿郎くんは店内に掲げてある品書きを一通り頼んだ。少し一緒にいないうちに更に食欲が増している気がする。

「名前さん、甘味もあります!団子が」

そう言って杏寿郎くんは私の背後を指さした。
振り返るとたしかにそこには「みたらし団子」と書かれた札が掛けてあり、口内でじわじわと唾液が溢れてくる。

「お団子、食べます。あとは…お蕎麦にします」
「名前さんは相変わらず団子に目がないんですね」
「…好きですから」
「なんだか変わらない名前さんを見ていると安心します」
「…なんですか、それ」


久しぶりにこうして杏寿郎くんと食事する。あの頃よりも、今の方が緊張してしまう。ひとくち食べるのにも、口を大きく開きすぎだろうか?なんて考えてしまうし。

「杏寿郎くん、これ食べたら送りますね」
「結構です!」
「ええ…もう、」
「なら名前さんの家に泊まらせてほしい」
「………え」


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