第二十二話

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あっという間に季節は過ぎて行く。
この前まで秋の香りがしていたと思ったら、今度は春の香りが鼻を掠める。
大人になると、なぜこんなにも時間が早く感じるのか分からない。

今年は杏寿郎くんの誕生日を祝うことができなかった。
最近めっきり煉獄家の屋敷へ行くことはない。千寿郎くんにはもう一年は会えていないだろう。
やはり蜜璃ちゃんの修行の邪魔をしたくないという気持ちが強かった。
というのは建前で、杏寿郎くんと蜜璃ちゃんが仲良さそうにしているのを見たくなった。こちらの方が私の本心だと思う。

2人は年が近いし、いっぱい食べるところも元気なところも熱いところも似ている。私はこんな性格なのに何故炎の呼吸が使えるのか謎だ。
水や風などの呼吸はびっくりするほど合わなかった。


「なーにのんびりしてんだァ」
「あ、風柱様」
「様はいらねぇよ」
「風柱。珍しいですね、蝶屋敷に来るなんて」
「……胡蝶が体調悪そうだったからなァ。様子見に来てやった」
「へえ…」

前に少し耳にした噂。
風柱の不死川さんは胡蝶カナエさんのことを慕っていたと。それで残されてしまったカナエさんの妹であるしのぶさんを気にかけているらしい。
どうやら噂は本当の事のようだ。

私はちなみに今まで同様に怪我を治すために来ている。今回は入院を免れたが、7時間の点滴を余儀なくされた。


「わざわざ私の病室まで来て、何かあったんですか?」

入り口で寄りかかっていた体を起こし、不死川さんは私のベッド脇にどっかりと座った。

「てめぇんところのクソガキが柱合会議に来てなァ」
「え?……杏寿郎くんのことですか?」
「他にいねぇだろ」

そういえば今回の柱合会議に、父である槇寿郎さんの報告も兼ねて杏寿郎くんが行くことになったと要から聞いた。
なぜか要はごく稀に私のところへ遊びに来て、杏寿郎くんの事について話して、私の最近の様子も聞いてくる。可愛いけれど小さな謎だ。


「気に食わねぇが、悪い奴じゃねぇな」
「…そ、そうですか」
「いいのかよ。あいつ死ぬかもしれねえ」
「…え?」
「一二鬼月と戦うらしいぜ」

知らなかったが、そろそろだとは予感していた。きっと彼は近々炎柱になる。なんとなく、そう感じていた。
とうとうその機会が来たらしい。

「心配しねぇのかよ、そんな惚けた顔して」
「私はいつもこの顔ですけど」
「そうかよ」
「……心配です。でも彼は確実に炎柱になる人です。私は彼が炎柱にならずに死ぬことはないと思っているので、きっと彼は生きて帰ると信じています。
死にません」


不死川さんは大きな目を更に大きくして、膝に手をついて大きなため息をついた。

「てめえら似てるところもあんだなァ」
「ええ!?どこがですか、全然ですよ!」
「自分で考えてみろ。せっかく教えに来てやったのによォ」

呆れた様子で不死川さんは部屋から出て、しのぶさんへ会いに行ってしまった。
似てるなんてことは絶対ない。
それは断固否定する。


私は杏寿郎くんのことを信じている。
そこは決して揺るがない。



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