第十一話

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杏寿郎くんと任務を共にするようになってから、もうひと月以上経っている。
相変わらず彼は鈍臭い私を笑って助けてくれる。


はじめて会った時はまだとても小さくて可愛らしい男の子だったのに、ふと横を見ると男らしい顔付きになった杏寿郎くんが居る。
いつの間に、こんなに大きくなったんだろう。

私がぼんやりとしている間にも彼は心も身体も成長している。鍛錬を積んだ手のひらは豆がたくさん出来ていた。そして私の手よりもひとまわりかふたまわりか大きい。
その成長にたまにドキドキする。


炎柱の槇寿郎さんにそっくりなのに、全然似てない。
優しくて、逞しくて、明るくて…
彼の良いところを上げたらキリがない。きっと女性にモテるんだろうな、なんて考えたり。


私なんかより、杏寿郎くんの方がずっと炎柱代理っぽいし。
それなのに彼は、どうやら私を尊敬しているようだ。いつも目を輝かせて鍛錬をせがんでくるし、戦闘が終わると私の戦いぶりを絶賛する。
「買い被りすぎですよ」なんて言っても彼は眉をグッと上げて「そんなことはありません!」と大きな声で言う。
そんな姿も可愛い。


お団子を口いっぱいに頬張っている私に対して、彼は上品にひとくちひとくち無理しない量を口に入れて食べる。さすが、煉獄家の長男。きっと瑠火さんがしっかりと育てたのだろう。

前に杏寿郎くんに「栗鼠みたいだ」と言われた。
年上なのに恥ずかしい。失態だ。
どうしてそんな私を慕ってくれるのか、よくわからない。


いつの間に、本当にいつの間に?
杏寿郎くんは大きくなった。
話す時、目線を合わせようとすると少しだけ首を上に向ける。
ああ、彼の身長がこんなに高くなるなんて。あんなに小さかった杏寿郎くんが。

ぼーっと見ていたら「なんですか?」と首を傾げる杏寿郎くん。
でもやっぱり、少しだけ子どもらしい表情をする。
きらきらと輝く瞳は常に純粋だ。



「少し肌寒い日で良かった。きっと温泉が気持ちいいですよ」
「ははは!名前さんの目的は温泉ですか」
「刀と温泉、同じくらい大切です。温泉なんて滅多に行けませんし、杏寿郎くんもせっかくなんだからゆっくり休んでくださいね。
くれぐれも鍛錬ばかりしないように」
「むぅ。名前さんがそう言うのなら、そうしよう!」

本当に分かってる?


私たちはこれから数日、刀鍛冶の里にお世話になる予定だ。
いつも鬼狩りに明け暮れる日々なのだから、こんな時こそ息抜きしなくてはいけない。
修行や鍛錬よりも食べたり休んだりすることばかり考えている私は、やっぱり鬼殺隊として失格だろうか。



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