第十話

.


名前と共に任務を行う事になった。
そんな日々をもうひと月くらい続けている。

これほどまで彼女と同じ時を過ごしたことはない。共に歩き、共に食べ、そして共に寝る。
不思議な感覚だった。

任務が終われば二人で煉獄家に戻る。
そして千寿郎が一生懸命に作った料理を三人で食べた。父は相変わらず寝てばかりだし、最近また酒を飲むようになってしまった。
家のことは千寿郎と、お手伝いのおばあさんに任せきりな日々が続いている。
名前も暇さえあれば煉獄家の手伝いをしてくれるようになった。
家族のような日々に俺は少々浮き足立っている。



「杏寿郎くん!ちょっとあそこ、寄っても良いですか?前から気になってて…!」
「もちろん!ちょうど腹が減りました!」

共に過ごすようになり、新たに彼女の意外な一面を知ることもある。

名前は団子に目がなかった。
行く先々で団子屋を見つけては寄り道する。普段の食事は一般の女性と変わらない量に対して、甘味になると俺とさほど変わらぬ量を平らげるのだ。
「甘いものは別腹って知りませんか?」なんて名前は言っていたが、その域を超えている気がする。

普段は丁寧に食べるくせに、団子になると特に。大きな口を開けて頬をいっぱいにする。まるで栗鼠のようだ。
それを以前本人に言ったらムッとされたので、いくらそっくりな姿になっていてももう言わないようにしている。

「ここのお店、お団子がとっっても甘くて美味しい!」
「確かに!だからこそ、この味噌ダレのしょっぱさが丁度いい塩梅です!」
「本当にそう!ここは当たりですね!また来ましょう。次にこちらへ任務に来る日はありますかね…」

任務があると言うことは鬼の被害が出たということ。それは悲しいことだ。しかし任務がなければこうして色々な団子屋を練り歩く機会もない。
名前はいつも複雑そうだ。


「それより名前さん、そろそろ出発しないと予定の時刻に間に合わないのではないですか?」
「は!そうでしたそうでした!
えっと、お土産に団子を30個買っていきましょうか」
「それは名案だ!」
「よし、おじさーん!これと同じお団子、至急30個いただけますか?お持ち帰りで」


これから向かうは任務ではない。
刀鍛冶の里だ。

つい昨日の戦闘で名前の刀はぽっきりと折れてしまった。なんとかその場はしのげたが、このままでは鬼と戦えない。
刀鍛冶の里はまだ一度しか行ったことがない。
ついでに俺の刀も調整してもらおうと名前はワクワクした様子で言っていた。

「怒られるのは慣れてるからー」
なんて名前はへらへらしているが、本当に大丈夫なのだろうか。


.


prev / back / next
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -