43 先生の知らない私A
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この頭の中のもやもやは、先生とこういう関係になったばかりの頃からあった。
なぜこんな関係になってしまったんだろう。
私が求めていたものは、狛治と恋雪のように誰が聞いても微笑むような素敵な恋物語。
でも今の私は違った。
誰にも言えない。
誰かに知られたら終わる。
それは私が望んでいたことじゃなかった。
けれど煉獄先生のことはずっとずっと変わらずに好き。
胸が引き裂かれそうになるのも、胸が躍るのも、胸がぎゅぅっと締め付けられるのも、先生だけ。
このままで良いのだろうか。
と、ずっと考えて来た。
大好きな人の側にいられるならそれで良いじゃないかと、本当の気持ちを誤魔化し続けた。
それでも現実を突きつけられたのは、先生の元カノと出会ってしまった時。
私は先生の好みじゃない。
分かってたつもりだったけど、いざ本物の元カノに会ったら完全に実感してしまった気がする。
私は一生、先生の彼女にはなれそうにない。
いつか先生に彼女ができるかもしれない。
その時私は?
その時になってもセフレのまま?
いや、きっと「もう来るな」と言われて突き放されるんだろう。
だったら自分から離れた方がいい。
卒業。
それはとても良いタイミングだと思った。
本当は地元の大学に通って、先生の元へ通い続けたらいつか彼女になれるかも。
なんて思っていたけれど。
県外の大学に通うことになれば、そちらでアパートを借りて住むことになるだろう。
アルバイトもするだろう。
そうすれば、忙しい日々に先生への恋心は消えて無くなる。
そうであって欲しい。
だから私は進路を変更した。
県外の大学へ。
レベルは今の私が少し頑張れば入れるくらいの。
私は煉獄先生がその事を知った時「やっと本気を出す気になったのか!」と喜んでくれると思ったのに。
予想は大きく裏切られた。
先生の綺麗で恐ろしい瞳は揺れている。
悲しそうな顔をして、私を見下ろしている。
そんなの知らない。
そんな先生、私の予想にはいなかった。
だから動揺する。
私はどこで選択を間違えたんだろう。
「だって、私はいつまで経っても、先生の彼女にはなれないでしょ?そんなの悲しいもん。だから、良いタイミングだと思って、先生から離れることにした」
「…なぜ君は俺の彼女になれない」
「…え?……私は先生の好みじゃないから。きっといつまで経っても好きになってもらえないもん」
「…俺の好み?」
「弱くて、可愛くて、守りたくなるような女の子らしい女の子」
「君もそうだろう」
「………え?」