38 先生の元カノB

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夜になって、眠る前に我慢できずにLINEを開いてしまった。
先生からのメッセージには「夕方なら取りに来ても良い」と書いてあった。
そして夜には「寝てるのか?」「忘れ物はなんだ?」と連続で送られて来ている。
「寝てたから、明日の放課後に取りにいくね」と送って、布団にくるまって眠りについた。




久しぶりに訪れた社会科準備室。
あの時のようにカチリと鍵をかける。
先生はあの時のように驚いたり、嫌そうな顔をしない。

「どうした?」

さも当たり前のように私を迎え入れてくれる。
こうして見ると、やっぱり私たちは進展していたんだなと実感する。
それと同時に悲しくもなった。
昨日のことを聞かなければいけないからだ。


きょとんとして煉獄先生は自分のデスクから動かない。
「そろそろ教員室に戻りたいんだが」と困ったような顔をする。
そんな顔、前まであんまりしてくれなかったのにね。

これで関係が最後になりそうな気がして、色々と今までのことを思い出してしまう。
涙が出そうになるけれど、それは堪える事が出来ている。
今ここで泣くと、なんだかあの元カノに負けたような気がして屈辱的な感じがするからだ。


「なんだ、また悪戯か?帰ってからにしてくれ」
「日曜、に、忘れ物取りに戻ったんだけど」
「……来ていないと言ってたじゃないか」
「本当は行ったの」
「いつ」
「昼」
「…会ったのか、あいつに」
「…そうだよ」


先生の顔色がサッと変わった。
私の心臓は口から飛び出しそうなほどにドキドキしている。
今すぐこの場から逃げ出して、大声で泣いてしまいたかった。
ぐっと堪えて先生を睨む。
声が震えるのを気にせずに話した。


「もしかして、まだ、続いてるの?」
「違う」

ガタン!と大きな音を立てて先生が立ち上がり、私に近づいた。
先生が珍しく焦っている。
その焦っている様子が怪しすぎる。


「…じっくり話したいが、もう時間だ。今日、来てくれないか」
「…わかったよ」
「すまん」

先生から「来てくれ」と言うのは初めてなような気がした。
だから私は何も抵抗もせずに了解してしまった。
先生が好きすぎる私は、自分にとって都合が良ければ条件反射に先生の言うことを聞いてしまう。
初めて、そんな自分が嫌だなとさえ思えた。


その日1日はもちろん上の空のまま過ごした。
久しぶりに見に行った先生の元カノのSNSは鍵垢になっていて覗けない。
猗窩座が来てちょっかいを出されても今日だけは抵抗しなかった。
ついに付き合い出したのかと、周りが騒ぎ立てていたが気にする余裕もない。




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