28 先生とはじめての喧嘩E
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先生からしたら、どんな理由があろうときっと結果が全てなんだろう。どうしよう、これが原因でこの関係が無くなってしまったら。
どうしたらいいか分からず足元を見ていると、先生の大きな、わざとらしいため息が聞こえて少しだけ顔を上げた。
「とりあえず風呂に入ってきなさい。まだ入ってないんだろう」
「あ、うん…」
良かった。
追い出されたりはしないようだ。
それにさっきほど怖い顔はしていない。
いつもの呆れ顔に戻っている。
ひとまずは安心して、立ち上がった。
先生のアパートではリビングで服を脱いで、下着姿になってからバスルームに向かう。
脱衣所が狭いからだ。
だから今日もいつも通り、その場で服を脱いでいた時。
「?名前、何か落ちたぞ」
「え?」
先生が拾ったもの。
2人で顔を覗き込んだ。
「…ピアス」
猗窩座のだ。
先生がつぶやきながら、ゆっくり私の耳を見た。
私はピアスの穴を開けていない。
まさか、こうなることを予想して私のポケットに入れていたのか?
先生の顔がさっきのようにみるみる怖い顔になる。
「…名前、猗窩座と何をしてたんだ」
「えっ、何をって、な、なにもしてない、です」
「ならなぜおまえが服を脱いだ拍子に落ちてきたんだ。これが。猗窩座のピアスだろう。見覚えがある」
ひええ…
内心叫んで逃げたかった。
でももう私に「逃げる」という選択肢はない。
「ほ、本当に何もしてないです」
「本当か?そういえばコンビニでも抱き合ってなかったか?」
「は!?抱き合ってはないよ!あいつが杏寿郎の匂いがするとか言ってくっついて離れなくて!」
「…」
言い合っているうちにいつの間にか先生が私を抱き寄せていた。
すすす、と先生が指で私の背中をなぞる。
ぞわっとして身動きを取ろうとしても、腰をがっちりと抑えられていて全く動けない。
「…一緒に風呂に入ろうか」
「えっ」
「さあ行くぞ」
「えっ?!」
ひょいっと持ち上げられて体が宙に浮く。
先生は私を担いでバスルームへと一直線。
慌てて下ろしてくれと抵抗しても先生に力で敵うはずもない。
未だに先生とお風呂に入ったことはない。
それは私が明るいところで自分の裸を先生に見られるのが恥ずかしいからだ。
だから何としても阻止したいのに。
「暴れると危ないぞ」と言って先生は私を片手で持ったまま、簡単に自分の服を脱いでいく。
先に裸になった先生が私を裸にするのにそんなに時間はかからなかった。
慣れた手つきでブラもパンツもぽいっと床に落とされる。
湯船は昨日私が寝なければ入るはずだったから、そのままちゃんとお湯がはられていた。
「は、恥ずかしい!無理無理!違う!違うよ先生!」
「はははは」
珍しく楽しそうに笑っている先生にきゅんとしてしまい、少し私がおとなしくなった隙に湯船に落とされた。