25 先生とはじめての喧嘩B
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一層楽しそうに笑う猗窩座に手を引かれる。
「何を突っ立ってる。さぁ、入れ」
「う、うん…?」
ほぼ引きずられるように家に入れられ、リビングの大きなソファーに座らされた。
猗窩座の自室じゃなくてまだよかった。
ほっと肩を撫で下ろした時、隣に座った猗窩座が私に抱き着いてきて目の前が真っ白になる。
え?これはどう言うこと?
なに…!?
「ちょ、猗窩座、ど、どうし…」
「おまえから杏寿郎の匂いがするぞ。それに、これは杏寿郎の髪じゃないか?」
体を弄られ必死に抵抗していると、突然体を突き離されてソファーから落ちた。
膝が痛いのを堪えて顔を上げると、猗窩座の手には金色の髪の毛が一本。
さぁっと顔色が変わるのが自分でも感じ取れた。
「どういうことだ?おまえ、杏寿郎のなんなんだ?」
「……猗窩座、ごめん!私煉獄先生と、その、会ってるんだ、定期的に…」
「は?」
ここは正直に話しておいた方が面倒なことにならなくて済む。
それに猗窩座は恋雪と狛治の言う事はちゃんと聞く奴だから、後で2人に相談したらきっとなんとかなるだろう。
猗窩座はきょとんとして、でもすぐにまたニヤニヤ笑い出す。
「ははは!杏寿郎の女なのかおまえ!」
「いや、うーん、分からないけど、まあそんなようなものかな…」
「喧嘩でもして出てきたのか?」
「そうだよ」
「はははは!面白いな!さあ、杏寿郎の元へ行こう!」
「嫌だよ!!喧嘩したんだって!だからしばらくここに居させて!」
「嫌だ。俺も混ぜろ」
「恋雪と狛治に電話するよ?」
「………ずるい女だな。わかった。その代わり、杏寿郎の話をしろ」
なんなんだこいつは。
噂によると、煉獄先生と殴り合いの喧嘩をしたいらしい。
サイコパスか。
でも先生は断っているから(当たり前だけど)私のようにストーカー化している。
たぶん先生のアパートも知っている。
前に「猗窩座が待ち伏せしてて着いてくる」と煉獄先生がげんなりと愚痴をこぼしていたし。
私の最大の敵はまさかのこんな近くにいたなんて。
今まで気にしていなかった訳ではないが、面倒だから見て見ぬふりをしていた。
まあいつか誰かに私と先生の関係がバレるとしたら、猗窩座だろうなとは予想していたけど。
「はあ。おまえから杏寿郎のいい匂いがするな」
「やめてよ!変態みたいだよ猗窩座、それでいいの!?」
「おまえ胸がでかいな。ん、ノーブラじゃないか。ははは!」
「やだやだ!きゃーー!!狛治!恋雪!!」