14 先生と私の距離

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学校では自然だった。
私は1人の生徒に過ぎないし、煉獄先生はただの歴史の先生。
喧嘩のようなことがあったけど、特にお互いに何も言葉を交わすことがなかった。

先生からのメッセージを見てからもう怒りなんて収まっていたし、何より大好きな先生をそんなに長い時間怒っていることが私には出来ないという事に気がついた。



『今日行っても良い?』

それだけ先生にメッセージを送信する。
前に、彼女に見られたら悪いからあんまり送らないようにすると言ったのに先生が「その心配はない」と強い口調で返してきたので、気にせずにメッセージは送るようにしている。
彼女は先生のスマホを見たりはしないらしい。


『わかった』

ただそのひとこと。
先生からの返事。
でも返信が返ってくること自体、嬉しい。
最初は結構『来るな』が多かったのに、諦めてからはちゃんと私を受け入れてくれているみたいだ。



「おじゃましまーす…」

先生はまだ部活で帰って来ない。
合鍵はポストの裏に、磁石の入ったキーホルダーによってくっつけられている。
彼女がたまに合鍵を忘れてこのアパートを訪れてしまうから、その対策だと言う。

放課後スーパーに寄ってから先生のアパートに向かったから、もちろん部屋には誰もいない。
しかし、前に来た時にはなかった女性物のTシャツが干されていた。
彼女が来ていたらしい。

まあ彼女が来ていたことは別にどうだって良いから特に気にせずキッチンに向かい、買ってきたアイスを冷蔵庫にしまった。
先生が帰ってきたらそれを食べて、私は帰るつもりだ。
まだ泊まったことはない。

こうして放課後にちょっと寄るだけ。
今はそうしている。


ソファーで寝転んでスマホをいじっていると、玄関から「ただいま」という煉獄先生の声。
ゆっくり起き上がって廊下の方へ顔を出すと、やっぱりいたか、みたいな顔をされた。
そりゃいるよ。


「…もう怒ってないのか」
「え?ああ。私そんな根に持つタイプじゃないし」
「そうなのか」
「うん。そして別に次のテストも本気で挑んだりとかしないならね。今のうちに言っておくけど。それが私なので」
「…ああ」

先生は未だに納得していないようだったが、部屋着に着替えるために自室へ入っていった。
そしてすぐに黒のスウェット姿の先生が現れて、ソファーの前に座った。
後ろから先生の不思議なくせっ毛を指に絡める。


「苗字は将来の夢があるのか?」
「…笑わない?」
「?笑ったりなどしない」
「……花屋さんになるのが小さい頃からの夢なの。だから、別に良い大学なんて興味ない」
「は……」

先生は私をパッと振り返ってまじまじ顔を見つめる。
恥ずかしい。

「…ふ、ははは!花屋になりたいのか!」
「ちょ、笑わないでって言ったじゃないですか!」
「すまん、似合わないなと思った」
「失礼すぎません?」
「いや、いつもの君からは想像できないな」

目を細めて、お腹を抱えて笑う先生。
むかつく。
でも、胸がすごくドキドキした。



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